TMTとマウナケア

マウナケアの環境保護、ハワイ文化の尊重と地域社会への貢献、次世代への教育支援のためにTMTが行っている様々な取り組みについて紹介します。

環境保護

TMTは、マウナケアの貴重な自然を守りながら、マウナケアで継続的に観測を行うことができるような天文台となることを目指しています。

マウナケアの環境保護

TMTは、山頂に廃棄物を残さない新設計と、環境への影響の可能性を最小限に抑える工夫をこらし、マウナケアに建設された望遠鏡の中でも最も環境に配慮した望遠鏡となる予定です。TMT建設用地は、景観への影響が比較的小さく、希少で絶滅の危機に瀕した植物や昆虫、動物へのリスクがないように選ばれました。また、マウナケアの望遠鏡では初めて、リース料として年間100万ドルを払い、そのうちの80万ドルは、マウナケアの保護と管理に直接使用される予定です。
TMTは建設期および運用期間中の有害な影響を防ぐため、マウナケアの文化的資源や天然資源の保全のために策定された『包括的管理計画』(ハワイ州により承認された計画)に従います。また建設地で文化的、考古学的な悪影響がないよう常に注意を続けます。

TMTの取り組み

ハワイ島固有の種を保護する

『外来種管理プログラム』により、Wekiu bug(ハワイ島固有の昆虫)を含むマウナケアの天然資源の状況、多様性、保護に関して職員を教育します。

エネルギー使用を最小限に抑える

TMTの施設は、太陽光温水システム、太陽光パネル、省エネルギー電力・輸送網装置を備え、エネルギー使用を減らすための定期検査が実施されます。

水の供給を守る

第三者的な水文学の専門家による包括的調査により、TMTはマウナケアの水資源に悪影響を及ぼさないことが確認されています。マウナケア山頂は降雨量が非常に少ない『高山砂漠』で山麓の水資源に影響しにくい場所であり、しかもTMTからの廃水はまとめて山から下ろされるように設計されています。

廃棄物を除去する

TMTから出る廃棄物はマウナケアには残しません。また、可能な限り再利用を行い、廃棄物そのものの削減に努めます。

安全運用を確実にする

有害物質が事故により流出する可能性を減らすために、漏れ検知システムや有害物質を扱う装置の毎日の点検、詳細な流出防止・対応計画などの多様な安全対策をとっています。

景観に配慮する

TMTは、景観への影響を最小限にとどめるために特に選定された、山頂より下の溶岩台地に建設されます。アルミニウムのような特殊な表面塗装が空の風景を映して天文台の建物を見えにくくします。ハワイ島内の土地の14%、あるいはハワイ島の人口の15%の居住地からぼんやり見えるだけとなる見込みです。更に、TMTへ向かうアクセス道路を、周辺の景観に溶け込むように設計しようとする取り組みが進められています。また、自然の生息環境への影響を減らすため、部分的に車線を一車線に削減しました。

交通量を削減する

TMTは、ハレポハクから望遠鏡までの自動車の交通量を減らす相乗りプログラムを実施する予定です。それにより山頂地域の粉塵や騒音が抑えられ、マウナケア特有の精神性や神聖さに対する影響を最小限に抑えます。

科学と文化のバランス

マウナケアは天文観測に最適な地です。私たちは、ここでのTMT建設とそれを用いた科学研究を、ハワイの文化や信仰などの精神的な営みと共存しながら進めていきたいと考えています。

なぜマウナケアは科学者にとってそれほど特別な場所なのでしょう

マウナケアは望遠鏡建設地として他に類を見ない最適な場所です。4000メートルの標高のある山頂域では、気候は安定し、乾燥しているため観測を妨げる水蒸気の量が低いのが特徴です。他の望遠鏡設置地で「最も観測に適した日」とされる夜は、マウナケアでは日常的にみられます。そして、マウナケアで「最も観測に適した日」の観測条件は、世界の他のどこの場所でも得られません。実際、TMTの建設にむけて行われた5年間にわたる世界各地での建設用地調査活動で、最良の環境は常にマウナケアに見出されたのです。

30メートル望遠鏡(TMT)はなぜ特別なのでしょう

TMTは、既存の世界最大の可視光望遠鏡よりも光を集める鏡が直径で3倍、面積では9倍も大きくなり、従来の望遠鏡では得られない遠くの天体の画像を鮮明に写し出すことができます。その結果、天文学者は、より遠くの、より暗い天体を観察してそれらを詳細に研究することができるようになります。これにより、宇宙の歴史を130億年以上さかのぼり、宇宙の始まりに関する基本的な疑問に答えることができるようになります。

ハワイ文化の尊重と保護

私たちはマウナケアを大切な場所と考えるハワイ文化に敬意を抱いています。またマウナケアの天然資源を保護する必要があると考えています。そのため、TMT計画は細心の注意を払って絶滅の危機に瀕する動植物や考古学上の神殿や埋葬地が発見されていない場所を建設用地として選定しました。TMT建設地はマウナケア山頂より下の溶岩面にあり、クカハウウラ山頂やワイアウ湖、プウ・リリノエといった文化的に特に配慮を必要とする場所からは見えない位置になります。TMTはハワイ島内の土地のうちの14%からぼんやり見えるだけとなる見込みです。
TMT計画ではこのほか、以下のプログラムや支援事業を予定しています。

プログラムや支援事業

文化研修

すべてのTMT職員や関連業者の職員が毎年、文化・天然資源研修プログラムを受講し、ハワイの文化的、宗教的な活動に関する理解を深める取り組みを行います。研修のなかでは、望遠鏡建設・運用が文化的資源へ悪影響を与える可能性について常に配慮することを教育します。

文化的および考古学的発見への対応

建設期間中、文化および考古学の監視員や専門家を配置します。もし文化的な発見がなされた場合には、彼らが建設作業を中止させる権限を有します。

ネイティブ・ハワイアンの文化的活動に関わる行事

TMT天文台の運用では、ネイティブ・ハワイアンの文化的活動に関わる行事のため、年間で最大4日間は昼間の活動を最小限に抑えます。そのような行事の日を決定するため、TMTはマウナケア管理事務所(OMKM)やKahu Ku Mauna(OMKM等に対してハワイの文化に関して助言を行うコミュニティベースの組織)と協力します。

ハワイの音楽と芸術の支援

TMTは、ハワイ島の学校においてハワイの科学と系譜学を教える際の歌や詩の翻訳版の使用を支援します。また、ビジター・インフォメーション・センターやイミロア天文学センターなどで文化、天然資源、歴史を紹介する展示会の開催を支援します。そのような展示会には、ハワイの文化と天文学との関係を探るような資料等も紹介する予定です。また、TMT天文台やその本部には、マウナケアの文化および精神性の高さを表す装飾や展示品を備える予定です。

ハワイ語による天文学授業とコミュニティ・ツアー

TMTによるネイティブ・ハワイアンのコミュニティへの貢献の一部として、ハワイアンのためのチャーター・スクール(特別認可学校)で現代天文学の授業を行うためのハワイ語への翻訳を支援します。TMTはまた、ネイティブ・ハワイアンのコミュニティの方々のTMTツアーも行う予定です。

紹介動画

精神的な営みと科学はマウナケアで平和に共存できると私たちは考えています。ハワイにおける科学、文化、そしてそれを支える精神について、またハワイにおける教育の支援について紹介したビデオをご覧ください。

リーフレット

私たちはマウナケアの自然と文化的な営みを損なうことなく TMT計画を進めていきたいと考えています。より多くの方に理解を深めていただくために、マウナケアの自然と文化についてのリーフレットの日本語版を制作しました。

ハワイ大学のマウナケア管理事務局(Office of Maunakea Management, OMKM)が、マウナケアを訪れる人のよりよい理解のために制作した“Maunakea Heritage and Natural Resources Guide”の日本語版制作を、OMKMの許可を得て行いました。日本語版は、OMKMのウェブサイトからダウンロードできます。

ハワイの地元の方々との対話

マウナケアでのTMT建設に対して、ハワイでは幅広い支援がある一方で、反対意見があることを私たちは認識しています。地元において様々な意見をお持ちの方との対話の努力を重ねてきています。

2016年から2017年にかけて、保全地区利用許可の公聴会が5ヶ月にわたって開催されました。国立天文台からもこの公聴会に足を運び、表明されたTMTへの疑問や批判に耳を傾けてきました。また、ネイティブハワイアンの教育関係者やフラの指導的立場の方と対話の機会をもうけていただき、意見を伺ってきました。

国立天文台ハワイ観測所(すばる望遠鏡)では、TMT建設に批判的な方を含めて講師をお招きし、ハワイの歴史や文化を学ぶセミナーを開催してきました。

これらの対話を通じて、TMT計画だけでなくマウナケアでの天文学やハワイの歴史について多様な意見があることを学んできています。今後も地元の方との対話を大切にし、相互理解の努力を続けていきます。

建設準備に関する経緯

ハワイ州の保全地区であるマウナケア山頂域での建設にむけ、TMTプロジェクトは過去10年にわたり、環境影響評価と保全地区利用許可をはじめとする承認プロセスを経てきました。また、この間にハワイ州やマウナケア山頂域を管理するハワイ大学の関係者のみならず、ネイティブ・ハワイアンの指導的立場の方を含め、地元の方々と多くの対話を重ねてきました。

2009年7月   TMTプロジェクトが建設候補地としてマウナケアを選定

2010年5月   環境影響評価 (Environmental Impact Statement) をハワイ州が承認

2013年4月   TMT建設のためのハワイ・マウナケア山頂域保全地区利用許可(CDUP)をハワイ州が承認

2013年5月   CDUP承認に対する訴訟が起こされる

2015年12月 CDUPの承認手続き差し戻しをハワイ州最高裁判所が決定

2016年2月   ハワイ州によるCDUP再承認手続き開始

2016年10月-2017年3月   CDUPに関する公聴会(44回開催)

2017年9月   TMT建設のためのCDUPをハワイ州が再承認

2017年10月 CDUP再承認に対する訴訟が起こされる

2018年10月 ハワイ州最高裁判所がTMT建設のためのCDUPを有効と判断。
これにより建設にむけた法的手続きが完了

2019年6月   建設工事に必要な許可等の行政手続きが完了し、ハワイ州によりTMT現地着工を認める通知が出された

より詳細な情報は、TMT国際天文台のページ(英語)をご覧ください。

http://maunakeaandtmt.org

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