TMT関連用語集

あ〜か

【 宇宙の加速膨張 】うちゅうのかそくぼうちょう
宇宙はビッグバン以来膨張を続けていることがわかっているが、宇宙を構成する物質の重力によってその膨張速度は小さくなりつつあるというのが以前の定説であった。しかし、ある種の超新星爆発の観測などによって、膨張速度はむしろ最近の宇宙では増していることがわかってきた。これを説明するためには、膨張を加速させるエネルギーが大量に存在するといった仮定が必要となる。これが暗黒エネルギーとよばれるが、その正体はもちろん、性質もほとんどわかっていない。
【 回折限界 】かいせつげんかい
望遠鏡の鏡が原理的に達成できる最大の解像度。望遠鏡が結像する天体の像は光の回折効果によって広がる。しかし、鏡の口径が大きいほどこの効果は小さく、従って高い解像度を達成できる。また、波長が長くなると回折の効果が大きく、同じ口径で得られる解像度は低くなる。可視光(波長0.5ミクロン)の場合、口径1メートルの鏡なら回折限界は0.12秒角、口径30メートルなら0.004秒角となる。1秒角は1度角の3600分の1。
【 解像度 】かいぞうど
天体の像をどれだけ細かく見分けられるかの指標。天体観測の場合、普通の恒星はもともとは広がりのない点状の光とみなせるので、本来無限小の点像に見えるはずの恒星の像がどの程度広がって観測できるかによって解像度を定義することができる。解像度は、望遠鏡の口径によって決まる回折限界や、望遠鏡・観測装置の光学性能、検出器の素子サイズのほか、地球大気を通した観測の場合は、大気による像の乱れ(シーイング)に代表される観測条件に左右される。
【 鏡の研削・研磨 】かがみのけんさく・けんま
鏡の材料である鏡材の形状を整え、なめらかにする作業。鏡のおおまかな表面形状を形成するのが研削で、回転する砥石によって鏡材を削り取る。研削後の鏡材の表面をなめらかにし、表面形状を最終的な鏡の形状にするのが研磨である。鏡材と回転・往復運動する研磨パッドの間に研磨材を含んだ液(研磨液)を流して磨く。
【 観測装置 】かんそくそうち
望遠鏡で集められた光を分析し、検出器によって記録する装置。天体のイメージをとるための撮像装置(カメラ)や、天体の光を波長に分け、天体の速度や組成などを調べる分光装置などがあり、1台で両方の機能をそなえるものもある。TMTの建設当初に搭載されるもの(第一期観測装置)としては、可視光と赤外線それぞれの撮像分光装置が予定されている。
【 基本物理定数 】きほんぶつりていすう
現在の物理学の理論においては定数として扱われているものが、宇宙の歴史のなかでは本当に不変であったのか、確かめられていないものがある。重力を含む統一理論の研究のなかでは、その時間変化の可能性が示唆されているものがある。重力定数や微細構造定数(電磁相互作用に関係する定数で、原子が吸収・放射する光の波長に影響する)の時間変化の検出(あるいは精度の範囲内で不変でることの検証)が次世代望遠鏡の課題としてあげられている。
【 鏡面支持機構 】きょうめんしじきこう
鏡を理想的な形状に保つために支える機構。すばる望遠鏡などの大型望遠鏡の鏡は、単体では重力のために形状が歪んでしまう。これを背面から複数の点で適切力を制御して支えることによって、望遠鏡がどの角度に傾いても理想的な形状になるように調整している。この調整はコンピュータ制御によって行われるが、これを高い精度で行うためには、鏡の重心面に力を加える支持方法が望ましい。
【 鏡面測定装置 】きょうめんそくていそうち

製作された鏡については、形状および表面誤差を高精度で測定する必要がある。

干渉計測法は、実際に鏡によって光を反射させ、その結像の様子を測定する方法で、波としての光が干渉する性質を用いることにより高精度で鏡面を測定することができる。測定のためには測定装置を鏡の曲率中心位置(TMTセグメント鏡では鏡から約60メートルの位置)に置かなければならず、装置全体に大きな空間を要する。一方で、測定の所要時間は短い。

3次元測定装置は、前後・左右・上下に動くプローブによって鏡面を直接測定する方式をとる。鏡面全体を細かく測定するためには、一般に長時間を要する。この方式でTMTの鏡を測定するには、装置の大型化と、精度を確認するための基準面を確立すること、装置の高速化が不可欠である。

【 ケック望遠鏡 】けっく(Keck)ぼうえんきょう
カリフォルニア天文学研究協会が運営する光学赤外線望遠鏡。セグメント鏡方式による口径約10メートルの主鏡を有する2台の望遠鏡からなる。ハワイ島マウナケア山頂において、1号機は1993年に、2号機は1996年に完成した。TMT計画にはケック望遠鏡の技術と運用経験が生かされている。
【 光学赤外線天文連絡会 】こうがくせきがいせんてんもんれんらくかい
光学赤外線天文学の研究者からなる連絡会。会員240名(2010年4月現在)。1980年の結成以来、すばる望遠鏡の建設やその運用をはじめ、光学赤外線天文学分野の関係者が自主的に議論し、意見を集約する連絡会として活動を行っている。略称「光赤天連」、または「GOPIRA」。

さ〜た

【 シーイング 】
地球大気による天体像の乱れ。上層部での大気の流れや地表近くの乱流、あるいは望遠鏡ドーム内の温度勾配など、複数の要因で天体像に乱れが生じる。

→補償光学(AO)

【 次世代超大型望遠鏡 】じせだいちょうおおがたぼうえんきょう

2020年代に建設が計画されている、口径20-40メートル級の地上・光学赤外線望遠鏡計画。Extremely Large Telescope、ELTとも。

1990年代末以来、可視光および赤外線の一部を地上から観測する手段として、口径8メートル級の望遠鏡が建設された。日本のすばる望遠鏡もそのひとつであり、ヨーロッパ南天天文台のVLTや米国のケック望遠鏡、国際協力で建設されたジェミニ望遠鏡とともに世界の天文学をリードしている。

これらの望遠鏡を口径において凌駕する望遠鏡が次世代の地上望遠鏡として計画されており、TMT計画(口径30メートル)のほか、ヨーロッパ南天天文台が進めているE-ELT計画(同39メートル)、アリゾナ大学などが進めているGMT計画(同22メートル)がある。

【 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST) 】じぇいむず・うぇっぶ うちゅうぼうえんきょう
NASAとESOの協力で2018年以降の打ち上げを目指して開発が進められているハッブル宇宙望遠鏡の後継機。地球周回軌道を回るハッブル望遠鏡と違って、150万キロメートルかなたのL2軌道に打ち上げる。L2軌道からは太陽と地球が同じ方向に見えるので、太陽電池パネルと日除けを展開して逆方向を見ることにより赤外線の背景雑音を低くすることができる。2ミクロンより波長の長い中間赤外線の観測では地上望遠鏡より高感度になることが期待されるが、視野や空間解像力ではTMTが勝る。すばる望遠鏡とハッブル望遠鏡が役割分担したのと同じような関係が、TMTとJWSTの組み合わせで期待されている。
【 蒸着(コーティング、メッキ) 】じょうちゃく
研磨済みの鏡基盤の表面に、高い反射率を得るために薄い金属膜を付着させること。アルミニウムや銀などがあり、厚さは100ナノメートル程度。
【 すばる望遠鏡 】すばるぼうえんきょう

国立天文台が米国ハワイ島に建設、1999年より運用している直径 8.2メートルの主鏡を持つ世界最大級の光学赤外線望遠鏡。

【 スペース望遠鏡 】すぺーすぼうえんきょう

地球の大気圏外に打ち上げられた人工衛星に搭載された天体望遠鏡。

大気に吸収され、地上には届かない電磁波であるエックス線や遠赤外線の観測を行うには、スペース望遠鏡が不可欠である。大気を比較的よく透過する可視光線や赤外線についても、スペース望遠鏡による観測は大気の影響を受けないため、解像度や安定性において地上望遠鏡を上回る。一方、望遠鏡の口径では地上望遠鏡におよばない。スペース望遠鏡では高解像度・高感度の撮像観測、地上望遠鏡では高精度の分光観測や補償光学を用いた高解像度観測といった役割分担が行われている。

【 セグメント鏡(分割鏡) 】せぐめんときょう(ぶんかつきょう)

TMTなどの次世代超大型望遠鏡の主鏡は、小型の鏡を複数並べ合わせることによって構成されるが、その構成要素となるそれぞれの鏡のこと。または、そのように鏡を製作する手法のこと。

すばる望遠鏡の主鏡は直径8.3メートル(実際に観測に用いることができる有効な口径は8.2メートル)の一枚鏡であるが、これを上回る大きな一枚鏡を製作することは極めて困難である。次世代超大型望遠鏡では、いずれも複数の鏡を並べ合わせて主鏡を構成するセグメント鏡方式が採用される。TMT計画とE-ELT計画では、対角線が1.44メートルの六角形のセグメント鏡をごくわずかな隙間で並べる方式で主鏡を製作する。

【 ゼロ膨張ガラス材 】ぜろぼうちょうがらすざい
温度変化による膨張・収縮が極めて小さいガラス材。極(ごく)低膨張ガラス材とも。熱による膨張特性の異なる物質を混入しその量を調整することなどにより、使用したい温度において熱膨張が極めて小さくなるようにガラス材を製作することが可能になる。オハラ社クリアセラム-Z HSやショット社ゼロデュアが代表例。
【 太陽系外惑星 】たいようけいがいわくせい
太陽以外の恒星を周回する惑星。1995年に発見が報告されて以来、急速に研究が進み、これまでに4000を超える惑星系候補がみつかっている。惑星は木星のような巨大ガス惑星と、地球のような岩石惑星に大別される。地球型の系外惑星は生命の存在可能性を探るうえで重要なターゲットであるが、比較的小さいため観測が困難であり、その調査は次世代望遠鏡の課題となっている。
【 ダークエネルギー 】

→宇宙の加速膨張

【 ダークマター 】
暗黒物質とも呼ばれ、光学的に直接観測することができない謎の物質。現在観測的に確認できる物質の5倍以上の暗黒物質が宇宙に存在していると考えられている。
【 追尾・指向精度 】ついび・しこうせいど
天体観測を行うためにはまず望遠鏡を目的の天体に向け(指向)、天体の動きに合わせて望遠鏡を動かす(追尾)必要がある。これらの望遠鏡動作に関する精度を追尾・指向精度と呼ぶ。

な〜は

【 非球面鏡 】ひきゅうめんきょう
形状が球面とは異なる鏡の総称。球面鏡は製作・測定とも比較的容易であるが、収差のため焦点面で理想的な像を結ぶ望遠鏡を少ない枚数の鏡で構成することができない。非球面鏡では、収差の影響を大幅に軽減できるが、製作と測定の難しさが増す。

→鏡の研削・研磨

→鏡面測定装置

【 望遠鏡本体構造 】ぼうえんきょうほんたいこうぞう
主鏡をはじめとする望遠鏡の光学系を支え、天体の方向に向けて追尾するための構造。望遠鏡架台ともいう。TMTは水平方向と高度角方向に駆動する、経緯台式とよばれる方式の望遠鏡である。望遠鏡を覆うドーム構造とは独立の基礎のうえに置かれる。

→ 追尾・指向精度

【 補償光学(AO) 】ほしょうこうがく(えーおー)
地球大気によって乱されて広がった天体像を瞬時に補正し、あたかも大気をとおっていないかのようなシャープな天体像を得る技術。天体からの光が望遠鏡に入るまでに大気によって乱され、そのパターンは時々刻々と変化する。この乱れの様子を、目的天体の近くにある明るい星(参照星)を観測することによってとらえ、瞬時に装置内の可変形鏡(形状を制御することができる鏡)にその情報を送り、天体像の乱れを打ち消すように鏡の形状を制御する。この操作を1秒間に1000回ほど行うことにより、目的天体のシャープな画像を得ることが可能になる。明るい参照星が目的天体の近くにない場合には、望遠鏡からレーザー照射を行って大気中のナトリウム層を発光させ、人工的に参照点をつくりだすことも可能である。英語でAdaptive Optics。AO。

ま〜わ

A〜G

【 ELT 】いー・える・てぃー(= Extremely Large Telescope)

Extremely Large Telescope(次世代超大型望遠鏡)の略。およそ口径30メートル以上の望遠鏡全般を指す一般名詞として用いられる。

→次世代超大型望遠鏡

H〜N

【 JWST 】 じぇー・だぶりゅ・えす・てぃー(= James Webb Space Telescope)
→ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡
【 NSF 】 えぬ・えす・えふ(= National Science Foundation)

米国国立科学財団。米国の科学・技術を振興する目的で 1950年に設立された連邦機関のこと。日本の文部科学省に近い役割を持っている。

O〜U

【 SAC 】さっく (= Science Advisory Committee)
→TMT SAC(TMT科学諮問委員会)
【 TIO 】てぃー・あい・おー (= TMT International Observatory)
→TMT国際天文台
【 TMT計画 】てぃー・えむ・てぃー けいかく

口径30メートルの次世代超大型望遠鏡計画で、30メートル望遠鏡(Thirty Meter Telescope)の略称。

492枚のセグメント鏡によって30メートルの主鏡を構成し、光を集める能力で従来の地上望遠鏡を10倍以上凌駕するとともに、補償光学を利用することができる赤外線観測ではハッブル望遠鏡を10倍以上上回る解像度を実現する。建設予定地は米国ハワイ州ハワイ島のマウナケア(すばる望遠鏡の設置場所)。日本のほか、米国、カナダ、中国、インドの国際協力で建設を進めている。

【 TMT国際天文台 】てぃー・えむ・てぃー こくさいてんもんだい (= TMT International Observatory)

TMTの建設・運用を担う組織。

2014年5月に米国内で設立、法人登記された。5ヵ国7機関がメンバーとなる(2016年7月現在の正式メンバーは自然科学研究機構、中国国家天文台、カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学、インド科学技術省、カナダ国立研究会議の6者で、米国天文学大学連合は準メンバーとして参加している)。メンバーの代表によって構成される評議員会が建設・運用に関する意思決定を行い、メンバーは寄与に応じた投票権をもつ。メンバーの負担する分担金で運営し、望遠鏡構造や主鏡などの製造はTMT国際天文台とメンバーの間で結ぶ契約の形で実施する。

【 TMT SAC(TMT科学諮問委員会)】てぃー・えむ・てぃー さっく (= TMT Science Advisory Committee)
TMTによる科学研究に必要な望遠鏡や観測装置の機能、運用方法などを検討する委員会。TMT計画についての意思決定を行う評議員会の諮問で設置され、各国の委員が参加する年4回の定例委員会のほか、科学研究や観測装置などを広く検討するための会議を開催している。

V〜Z

その他

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