なぜTMTの反射鏡はすばる望遠鏡のような1枚の鏡じゃない?
- KEY WORDS
- 主鏡、分割鏡
TMTはなぜハワイ・マウナケアに建設されるの?
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- 天気、光の吸収、北半球
なぜTMTはこれまでの望遠鏡よりも遠くの宇宙を観測できるの?
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- 赤外線、赤方偏移、背景光
TMTで行われる分光観測とは?
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- 虹、プリズム、ドップラー効果
地上にTMTを作るよりも宇宙望遠鏡をあげたほうがよいのでは?
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- 分光観測、地球大気
TMTが観測できるのは可視光と赤外線だけなの?
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- 波長、透過率
補償光学装置が使われるのはTMTが初めて?
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- すばる望遠鏡、可変型鏡
TMTはどのようにして地球外生命を探すの?
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- 大気の成分、水、酸素
TMTが観測を目指す宇宙で最初の星とはどのようなもの?
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- ビッグバン、超巨大星、超新星爆発
TMTが観測を目指す宇宙で最初の銀河とはどのようなもの?
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- 大質量星、ガス
TMTは宇宙が膨張する様子を測定できるのですか?
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- 遠方の銀河、クェーサー、赤方偏移
TMTが観測を目指すガンマ線バーストの残光とは何ですか?
- KEY WORDS
- 超新星爆発、電磁波
TMTは巨大ブラックホールを観測できるのですか?
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- 銀河の中心、重力
TMTが解き明かそうとする私たちの天の川銀河の謎とは何ですか?
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- 星の運動、ハロー構造、暗黒物質
TMTで太陽系の天体を観測すると何がわかりますか?
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- 衛星、小惑星、時間変化
TMTが解明を目指している宇宙の再電離とは何ですか?
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- 水素、紫外線
TMTは暗黒物質や暗黒エネルギーの正体に迫れますか?
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- 銀河の構造、銀河の分布、宇宙膨張
TMTができればすばる望遠鏡はもういらない?
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- 視野、Hyper Suprime-Cam
なぜTMTは国際協力プロジェクトで進められているのですか?
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- 建設コスト、研究協力
TMTの建設で日本が果たす役割は何ですか?
- KEY WORDS
- 望遠鏡本体、分割鏡、観測装置
TMTが捉えた天体の光を直接人の眼で覗いて観測できますか?
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- 焦点部、観測装置
TMTの492枚の鏡は位置や向きがズレないのですか?
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- リアルタイム制御、センサー
反射鏡が492枚に分かれていても像はボケないの?
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- 間隔2.5mm
492枚の鏡はどのように掃除するのですか?
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- ドライアイス、ガス、交換用の鏡
TMTを使って地球外生命の存在を証明できますか?
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- 惑星の大気、宇宙生物学
TMTの分割鏡はどうして六角形なの?
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- 対称性、3点支持、制御
TMTの492枚の鏡は普通の鏡と何か違いがありますか?
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- 放物面、非球面、熱膨張
TMTより大きな望遠鏡をつくることは可能ですか?
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- 分割鏡方式、ヨーロッパ南天天文台
将来、TMTで宇宙を研究したいのですが、どうすればよいですか?
- KEY WORDS
- 観測テーマ、提案
TMTの建設風景(建設予定地)を見学することは可能ですか?
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- マウナケア山頂域、高山
すばる望遠鏡の主鏡の直径は8.3mあります(注)。これよりも大きな鏡を作るのは技術的にたいへんですし、仮に作れても運んだり望遠鏡に組み込んだりするのがたいへんです。一方、比較的小さな鏡を何枚も敷き詰めて用いる分割鏡方式の望遠鏡が建設されるようになり、この方式でも高い性能が達成できることが確かめられました。すばる望遠鏡の隣にあるケック望遠鏡はその例です。これまでにくらべてずっと大きな望遠鏡を実現するために、TMTは分割鏡方式で建設することになりました。
(注)実際に観測に用いることが出来る直径(有効口径)は8.2mです。
ハワイ・マウナケアは、世界のなかでも最も天文観測に適した場所のひとつとして知られています。天気のよい日が多く、風の流れも安定していて星像がきれいな場所です。標高が高いため水蒸気による光の吸収が少なく、可視光だけでなく赤外線での観測にも適した場所です。街明かりが少ない一方、ふもとの街からは自動車で2時間程度で行くことができるので望遠鏡の建設・運用のうえで好都合です。
天文観測に適した場所としては、南米のアンデス山脈も知られており、そこにも大型望遠鏡を建設する計画があります。TMTは北半球から見える空の天体の観測を行うのに対し、南の空の観測は南米の望遠鏡が担うことになります。
一言でいうと望遠鏡のサイズが大きくなるからです。
反射鏡がこれまでよりもずっと大きくなるので、まずは集められる光の量がずっと多くなります。また、遠くの天体は、赤方偏移が大きく、可視光よりも赤外線で観測することが重要になります。赤外線の観測の場合、夜空そのものの放射(背景光)が天体の観測を邪魔します。その影響を小さくするには、天体の像をシャープにし、背景光との重なりを小さくすることが重要です。補償光学という技術を使うと、TMTの大きな反射鏡による高い解像度を十分に生かすことができ、高い感度の赤外線観測が可能になります。
これにより、いままで見られなかった遠方の天体を検出することができると期待できます。
虹は七色といわれるように、自然界の光にはたいてい、さまざまな色の光が混じっています。これをプリズムのような道具を使って分けて観測することを分光観測といいます。光の色とは、波としての光の波長に対応するものですので、分光観測とは、天体からの光を波長ごとに細かく分けてカメラで記録することといえます。
光を波長にわけると、天体がどのような物質でできているのか、どういう仕組みで光を放射しているのか、などの重要な情報を得ることができます。また、光のドップラー効果により、天体が私たちにどのくらいの速さで向かって近づいてきているのか、あるいは遠ざかっているのか、という天体の運動も知ることができます。
分光観測は、ただでさえ暗い天体からの光を、細かく波長に分けて記録しようとするわけですから、できるだけ大きな鏡で光をかき集めておく必要があります。このため、大口径を持つTMTは将来の分光観測で活躍することが期待されます。
大気の外に飛び出す宇宙望遠鏡は、地上に建設される望遠鏡に比べるとずっとサイズの小さな物になります。大きな鏡でたくさん光を集める必要のある分光観測などでは、TMTは宇宙望遠鏡をはるかに凌ぐ力をもっています。
地球大気の影響を受けない宇宙望遠鏡は、解像度の高い観測では地上望遠鏡よりも当然有利です。しかし、赤外線観測で補償光学を用いることができれば、鏡のサイズが大きい方が高い解像度を得ることができるため、TMTは宇宙望遠鏡を凌ぐ解像度を達成できます。
宇宙望遠鏡は、天候の変化や大気中の光の放射・散乱の影響をうけないため、高感度で安定した観測が可能です。地上望遠鏡と宇宙望遠鏡はそれぞれの利点をいかせるよう、役割分担をしています。
TMTは、可視光全般と、可視光よりも少し波長の短い紫外線の一部、可視光よりも波長の長い赤外線の一部を観測できます。光の波長でいうと、0.3〜20マイクロメートルを観測可能です。これ以外の波長の光は、地球の大気に遮られて観測することができません(もっと波長の長い電波になるとまた地上から観測可能になりますが、まったく別の装置が必要になります。また、20マイクロメートルより短い波長でも、赤外線の一部は地球大気に遮られ、観測することができません。)
波長の短い方では、人間の目で見えるのは波長0.4マイクロメートルくらいまでで、それより波長の短い光は紫外線とよばれます。標高の高いマウナケア山頂域では、0.3〜0.4マイクロメートルの紫外線の透過率も比較的高く、観測可能になります。(それだけに、日中には日焼けしやすくなります。)
すばる望遠鏡をはじめ、これまでの望遠鏡でも補償光学装置は搭載され、観測で用いられています。
TMTで補償光学を用いることができると、口径が大きいため、これまでの望遠鏡に比べて高い解像度を得ることができます。しかしそのためには、より細かく可変形鏡を制御することなど、従来以上に高い技術が必要とされます。
TMTは太陽系以外の惑星系に生命が存在するのかどうか、その手がかりをつかむことを目標にしています。
生命に満ちあふれている地球の大きな特徴は、その表面に液体の水が存在していることです。いま、水が液体で存在しうる温度をもった地球サイズの惑星を探す観測がさかんに行われています。こうしてみつかってきた惑星が実際にどのような大気をもっているのか、TMTは詳しい観測によって大気の成分を測定し、生命に関係する物質を探します。たとえば、大気に酸素(酸素分子やオゾン)が存在することがわかれば、生命が存在することを示す有力な情報となります。
ビッグバン後の宇宙では、ガスは高温でまだ天体と呼べるような構造をなしていませんでした。時間がたつにつれ、ガスの温度が下がるとともに、物質のもつ重力によってガスの濃いところにますますガスが集まってきます。そしてビッグバンから数億年たったころに、宇宙で最初の星が誕生してきたと考えられています。その星は、太陽の数百倍も重い超巨大星だったという説もありますが、最近ではそこまでは巨大ではなく、太陽の数十倍程度の星が多かったという予測もあります。いずれにせよこれらの大質量星は、明るく輝いてまわりのガスに影響を与える(電離させる)とともに、超新星爆発によって新たな元素を周囲にまき散らし、その後の宇宙に多大な影響を与えたと考えられています。
しかし、これらの星を理解するための観測データはまだ乏しく、TMTでその正体に迫る観測が期待されます。
宇宙で最初の星は、単独で誕生するのではなく、ある程度まとまって生まれてくる可能性があります。また、最初の大質量星が超新星爆発を起こしたあと、その周囲のガスからも多くの星が誕生したと考えられています。こういった星の集団が、最初の銀河とよべるかもしれません。
しかし、その誕生のプロセスは観測で突き止められたわけではありません。より遠くの、より宇宙初期の銀河の姿を、TMTを用いた観測によって調べていく必要があります。
遠方の銀河やクェーサーを観測すると、遠くの天体ほど波長が延びて観測されることが知られています。この現象は「赤方偏移」とよばれます。宇宙が膨張していると考えると、ある天体の赤方偏移は時々刻々と大きくなると考えられます。その変化量は、宇宙の膨張が速まっているのか、遅くなっているのかによって異なります。さまざまな距離にある天体について、この赤方偏移の変化を調べると、宇宙の膨張がどの時代に減速したのか、加速したのかを調べることができます。
しかし、宇宙の膨張は百億年以上にわたって起こっている現象です。その変化を、人類が測ることができる期間(例えば10年)でとらえるのは難しく、非常な高精度での赤方偏移の測定が必要になります。その観測は従来の望遠鏡では不可能で、TMTのような大望遠鏡ではじめて実現可能性が出てきます。
ガンマ線とは、もっとも波長の短い光(電磁波)のことで、宇宙で突然強いガンマ線が放たれる現象をガンマ線バーストとよんでいます。その正体は長年の謎でしたが、その一部は、質量の大きな星が最後に起こす超新星爆発に関係していることがわかってきました。
ガンマ線バーストの正体は、まだ完全に解き明かされたわけではありませんが、多くのバーストのあとにはその天体が可視光や赤外線でも明るく輝くことが知られています。これを残光とよんでおり、ガンマ線バーストから数時間あるいは数日に渡って観測可能になる場合があります。すばる望遠鏡などの観測で、約130億光年も彼方のガンマ線バーストの残光がとらえられた例があり、遠方の(すなわち初期の)宇宙の様子を探るのに重要な「灯台」となると期待されています。
銀河の中心には、太陽の数百万倍から数億倍もの質量をもつ巨大ブラックホールが存在している場合があります。ブラックホールそのものは光を放ちませんが、そこに物質が落ち込むときに強い光(電磁波)を放ちます。これは活動銀河中心核と呼ばれます。
巨大ブラックホールの重力は周囲の星やガスの運動を支配します。また、巨大ブラックホール周辺には、高速で回転するガスや塵の円盤や、それを取り囲むドーナツ状の構造が存在すると考えられています。高い解像度を誇るTMTは、ブラックホールの重力にとらえられた星の運動を詳細に観測し、ブラックホールの質量や大きさを精密に決めることができます。また、もっと遠くのブラックホールや、成長過程と考えられるもっと軽いブラックホールを探すのにも威力を発揮します。
天の川銀河(銀河系)は、太陽系が含まれる「円盤構造」、中心付近の星の集団である「バルジ構造」、それらをとりまいてまばらに星が存在している「ハロー構造」のように、複雑な構造をもっています。そして中心部には太陽の400万倍もの重さの巨大ブラックホールが存在しています。この天の川銀河がどのように形作られてきたのか理解することは、宇宙における銀河の形成という重要な問題を解明するうえで大きな一歩になります。
TMTでは、天の川銀河を構成する一個一個の星の運動や、星を構成する物質を測定することにより、天の川銀河の成り立ちを解明します。例えば、「ハロー構造」には筋状に星が連なって分布する構造が見出されてきていますが、これは小さな銀河が天の川銀河に取り込まれる途上でできたものかもしれません。天の川銀河の誕生期にはこういう小さな銀河の衝突・合体が頻繁に起きたと推測されています。これを確かめるには、筋状の構造を形作る星と、天の川銀河をとりまいて存在している小さな銀河(矮小銀河)の星の性質を比較する必要がありあります。TMTはこれまでより100倍暗い星まで詳細に調べることができるので、このような研究で力を発揮します。
天の川銀河やその周囲の矮小銀河は、実は暗黒物質にとりかこまれており、その構造は暗黒物質の分布とも深く関係しています。天の川銀河について理解することは、暗黒物質の性質を解き明かす上でもたいへん重要です。
TMTは、補償光学を用いれば非常に高い解像度をえることができるため、惑星の衛星や小惑星の形や表面の現象をとらえることができる場合があります。特に、時間をおいて繰り返し観測を行うことにより、たとえば木星の衛星イオの火山活動が変化する様子を調べるというような、天体でのいろいろな現象を追いかけることが可能になります。
太陽系の天体の場合、探査機で実際に近くまで飛んでいって詳しい調査を行うことができます。しかし、あらゆる天体に探査機を送りこむことはできませんし、探査機で調べられる期間も限られます。TMTでは探査機ではできない、長期間にわたる時間変化の研究や、多数の小惑星の形状や組成の調査などで成果が期待されます。
ビッグバンから40万年ほどたつと、宇宙の温度が下がり、それまで電離状態(注)にあった水素が、中性の水素ガスとなります。
ところがそれから数億年すると、宇宙空間の水素は再び電離状態になり、現在にいたっています。これを宇宙の再電離とよんでいます。水素を電離させたのは天体からの紫外線の放射だと考えられていますが、どのような天体がその紫外線を出したのか、いまだによくわかっていません。それとも関係して、いつ、どのように再電離が進んだのかも、十分わかっていません。
これまでの観測で、再電離が始まった時期や完了した時期については推定が可能になってきていますが、TMTによる観測でその間の出来事を解明することが重要です。
(注)原子核(水素の場合は陽子1個)と電子がバラバラの状態。
暗黒物質や暗黒エネルギーは、宇宙を満たす正体不明の物質やエネルギーです。天文観測でその正体(どのような粒子が関係しているのか)を直接解き明かすことはできませんが、それらの性質を明らかにすることはできます。
天の川銀河やその周囲の銀河の構造は、暗黒物質の性質に強く影響されます。逆にいうと、こういう銀河の構造を詳しく調べると、暗黒物質がもっている性質を理解することにつながります。
より広い範囲の多くの銀河の分布も、暗黒物質の存在を反映しますが、非常に広い範囲になると、それに加えて暗黒エネルギーも影響を与えてきます。宇宙のいろいな時代の銀河の分布を調べることで暗黒エネルギーの性質を解き明かそうというのは、実はTMTよりもすばる望遠鏡で取り組まれているテーマです。
TMTでは、遠方の天体を時間をおいて観測することにより、宇宙の膨張の速さの変化を直接とらえようという観測が検討されています。宇宙膨張の速さの変化は暗黒エネルギーの性質によるので、こういう観測を通じて暗黒エネルギーの解明に取り組むことができるのです。
TMTはすばる望遠鏡を大きく上回る解像度と感度をもちますが、一度に観測できる範囲(視野)は狭くなります。すばる望遠鏡は、同規模の望遠鏡のなかではずば抜けて広い視野をもっており、特に2013年に観測を開始した主焦点カメラHyper Suprime-Cam の視野は1.4度角もあり、TMTの視野の20倍以上になります。
このため、すばる望遠鏡で広い範囲を探査し、そこで見つかってくる興味深い天体をTMTで詳しく観測するという連携が威力を発揮します。
すばる望遠鏡が稼働している現在でも小さな望遠鏡はすばると連携しながら活躍しています。将来、すばる望遠鏡はTMTとお互いの長所を活かしあいながら活躍していきます。
非常に大きな望遠鏡で、建設コストも大きくなるためです。TMTの建設経費はすばる望遠鏡の約4倍にのぼる見込みで、日本に限らず、一国での単独建設は困難な規模です。
一方、ハワイ島マウナケアでは、すばる望遠鏡のほか、ケック望遠鏡やジェミニ望遠鏡、CFHT望遠鏡といった望遠鏡が立ち並び、そのあいだでの研究協力も活発になっています。研究においては国際協力が当たり前になっているなか、望遠鏡建設も国際協力で行うのは自然な流れと言えます。2020年代には、TMTを中心にマウナケアの望遠鏡の間での国際協力はより緊密になると予想されます。
TMTの建設においては、日本は望遠鏡本体構造の製作と、光を集める主鏡分割鏡の製作という重要な部分を担っています。
望遠鏡本体構造は、光を集めて焦点を結ぶための光学系(主鏡、副鏡、第3鏡)と観測装置を搭載し、目的の天体に向け、追尾するという、望遠鏡のなかでも要の役割を果たします。駆動部分が2000トンを超える構造を精密制御するため、高い技術を要する部分です。主鏡については、日本は鏡材をすべて供給するほか、表面加工も一部を担います。
また、観測装置の一部の製作も担当しており、多くの国内産業の協力を得ながら日本の独自技術を活用しています。
TMTでは、人が直接覗ける仕組みを用意する予定はありません。光が集まる焦点部には大型の観測装置が設置されます。
望遠鏡を天体にむけ、追尾している間に、分割鏡の向きや位置はそのままではずれてきます。これを反射望遠鏡全体が理想的な形になるよう、リアルタイムで制御します。そのために、鏡どうしの間にセンサーが設置され、それぞれの鏡の後ろには角度や位置を調整する仕組みが組み込まれます。
設計どおりに分割鏡の向きが制御されれば、像がボケることはありません。分割鏡どうしの間隔は2.5mmほどありますが、ここから邪魔な光が出ないように処置されます。
鏡の表面につくホコリはドライアイスの小さな粒を含んだガスで吹き払う仕組みを検討しています。これはすばる望遠鏡などで用いられている方法です。
表面のコート(メッキ、薄くはった金属膜)は年月がたつと劣化し、鏡の反射率が下がってしまいます。そのために、1枚1枚の分割鏡をはずしてコートし直します。交換用の分割鏡を1セット用意しておき、それをコートしてから使っていた鏡と交換するため、夜間観測を止めることなく順に鏡を入れ替えていくことができます。TMTの主鏡分割鏡は82種類の形状があるため、交換用の鏡も82枚用意されます。
正直なところ、証明は困難です。
しかし、惑星の大気を調べると、生命の存在可能性があるのか、手がかりを得ることは可能です。
どうやったら生命が存在するといえるのか、そもそも生命とは何なのか、天文学の枠に閉じずに研究を進めていく必要があります。これは宇宙生物学ともよべる新しい学問分野です。
六角形は、隙間なく敷き詰めて全体が円形に近くなるようにするのに都合のよい形です。対称性もよく、裏側から3点支持によって向きや位置を制御するにも適しています。実際、すばる望遠鏡の隣にあるケック望遠鏡は、36枚の鏡で口径10mの主鏡を構成し、成功をおさめています。TMTはこの方式を踏襲しています。
難点としては、面形状が少しずつ異なる鏡を多数用意しなければならないことです。TMTでは、82種類の面形状の鏡を6枚ずつ使って主鏡を構成します。これに対し、たとえば扇形の分割鏡であれば、同一円上の分割鏡の面形状が同じなので鏡の種類を少なくすることが可能です。実際、この方式で主鏡をつくることを検討している望遠鏡もあります。
492枚の分割鏡で構成される主鏡全体は放物面に近い形状になりますので、その一部となる一枚一枚の分割鏡も平面鏡ではなく、凹面(非球面)になっています。
また、望遠鏡は観測中に外気にさらされるため、鏡も温度変化を避けられません。温度変化で鏡の形が変わると星の像が歪んでしまいますので、熱膨張の非常に小さい材質が用いられています。
原理的には可能ですし、反射鏡については、分割鏡方式であれば現実性も十分あります。
ただし、望遠鏡の本体構造やドームも大きくなり、これを現実的に作るには、技術面、コスト面に困難があります。現在計画されている最大の望遠鏡は、ヨーロッパ南天天文台による口径39メートルの望遠鏡です。
TMTは、よい観測テーマの提案をしてもらえれば誰でも使うことができる望遠鏡になります。
TMTを用いた研究としては、狭い意味の天文学だけでなく、物理学や生命科学にも関係してくる観測テーマが考えられます。大学などで自然科学を専門的に研究するようになったら、あなたの宇宙に関する謎をTMTを使って解き明かしてください。
マウナケア山頂域は高山のため年齢などの制限がありますが、条件が満たされれば山頂域を訪問いただくことは可能です。