TMTの現地建設開始を決定
次世代超大型望遠鏡TMTの建設にむけ、建設・運用を担うTMT国際天文台が設立され、ハワイでの建設作業の承認を受けて今年から現地での建設を開始することが決定されました。
TMT国際天文台の設立
TMTの建設にむけ、日本、米国、中国、カナダ、インドの5ヵ国の協力で準備が進められてきました。そのなかで、建設・運用の基本方針や各国の役割分担等についての協議において合意が得られ、4月末に各機関の責任者による協定書への署名が行われました。日本は佐藤勝彦自然科学研究機構長が署名を行いました(図1)。これをうけて、「TMT国際天文台」(TIO)が5月6日に米国において法人登記され、設立されました。(注1)
TMT国際天文台は、実際に望遠鏡建設を進める組織で、完成後には望遠鏡の運用も行います。参加機関からの代表で構成される評議員会で方針や重要事項を決定します。初回の評議員会が5月22日に開催され(図2)、評議員会議長にはカリフォルニア大学サンタバーバラ校のヘンリー・ヤン学長が、副議長には国立天文台の家正則教授が選出されました。初代のTMT国際天文台統括責任者には、カリフォルニア工科大学のエドワード・ストーン教授が就任しました。そしてこの会議で、ハワイでの建設許可が出された段階でTMTの本格建設に入ることが正式に決定されました。
ハワイでの建設開始
TMT建設のためのハワイ・マウナケア山頂域の用地使用許可は2013年4月にハワイ州から出されていましたが、新たに設立されたTMT国際天文台が実際に建設を行うことについても7月25日に許可が出されました。(注2)
2013年には建設予定地の地盤調査が実施されました。今年夏以降に予定地までの道路建設などに着手します(図3)。
望遠鏡製作の進捗
TMT建設において、日本は望遠鏡本体構造の製作と主鏡製作の一部という基幹部分を担当します。
主鏡を構成する492枚の分割鏡(交換用を含めると574枚)の鏡材は全て日本が製作します。2013年からすでに量産に入っており(2013年9月のリリース参照)、2014年3月までに60枚の鏡材が出来上がりました(図4)。鏡面の研削・研磨加工も量産に入っています。
望遠鏡本体構造については、2013年までに基本設計が行われ、国際レビューに合格しました(2013年11月のリリース参照、図5)。2014年度からはその詳細設計に入り、製造へと進んでいく予定です。
(注1) TMT国際天文台の発足(2014年5月6日)にあたっての正式メンバーは、自然科学研究機構(日本)、中国国家天文台(中国)、カリフォルニア大学およびカリフォルニア工科大学(米国)です。発足段階では、インド科学技術省(インド)、カナダ国立研究者会議(カナダ)、米国天文学大学連合・国立光学天文台は準メンバーとして参加しており、今後正式メンバーとなる予定です。
(注2) マウナケア山頂域は保護地区にあたり、用地使用・建設にはハワイ州土地天然資源局の許可が必要となります。山頂域の管理はハワイ大学に委託されており、TMT国際天文台はハワイ大学から用地を借り受けて望遠鏡を建設します。