米国Astro2020 (Decadal Survey) をうけてUS-ELTプログラムが声明
11月4日(現地時)に公表された米国国立科学アカデミーによるAstro2020報告書 “Pathways to Discovery in Astronomy and Astrophysics for the 2020s” に関して、TMTとGMTの建設を提案している 米国超大型望遠鏡プログラム(US-ELT Program)が声明を発表し、TMT国際天文台からも公表されました。
US Extremely Large Telescope Program Supports Vision of Decadal Survey (TMT国際天文台)
Astro2020は、米国国立科学アカデミーが実施する 「天文学および宇宙物理学に関する10ケ年調査」(Decadal Survey on Astronomy and Astrophysics )です。この調査は、米国研究者コミュニティによる次の10年の計画の評価プロセスであり、米国国立科学財団(NSF)やNASAなどがスポンサーとなって、米国内外の研究者によって多大な時間をかけて実施されるものです。Astro2020の場合、2019年の募集に対して提出された科学研究に関する提案572件、プロジェクト提案294件、およびその後に実施されたヒアリングや情報収集にもとづき審査が行われました。Astro2020の報告書は、革新的な科学を可能にするビジョンを示し、科学者、政策立案者、連邦機関にガイドライン・勧告を示すことを目的としており、審査のために設けられた13のパネル(研究分野、スペース・地上等のプログラム等に対応して設置)の報告を含め600ページを超える包括的な文書となっています。
報告書では、優先度の高い科学的課題として、(1)生命存在可能な環境の探査を含む星と惑星系の形成と進化、(2)宇宙線・ニュートリノ・重力波と電磁波観測による高エネルギー現象やダークマター・ダークエネルギーに関する新しい宇宙物理学、(3)星・惑星系から銀河・大規模構造までの階層の関連の包括的理解をあげています。
この報告書において、TMTとGMTの建設を提案している US-ELTプログラムが地上望遠鏡の最優先計画として位置づけられました。「提起された天文学・宇宙物理学の幅広い分野における科学研究のほぼ全てにおいて、他に比肩するもののない革新的な能力を有し、今後数十年にわたって科学研究の進歩に巨大な機会をもたらすであろう」と報告書には記されています。また、挑戦的な計画でありながら、これまでの開発によって、技術的に成熟していることも非常に高く評価されています。これには日本での望遠鏡本体構造の設計、主鏡分割鏡の鏡材製造・研磨、観測装置の開発・設計等が大いに貢献しています。
US-ELTプログラムは、声明においてこの審査と報告書作成にあたった関係者に謝意を表し、報告書で示された科学ビジョンを支持するとともに、報告書がNSFに勧告している両望遠鏡の計画に関する外部評価の実施を含め、今後の計画の決定ルールに従うとしています。 また、報告書が天文学界の課題として指摘している『地域・先住民コミュニティに資する「コミュニティ天文学」モデルの構築』にむけて地域社会の方々と協力していくとともに、科学分野へのより広範な人々の参加と多様性の拡大という方針への支持も表明しています。
大規模な調査にもとづいてとりまとめられたAstro2020においてUS-ELTプログラムが高く評価されたことはTMTの必要性・緊急性を改めて示したものといえます。国立天文台としては、関係機関と緊密に連携しつつ、TMTの実現に引き続き全力をあげます。