インフォメーション

TMTの望遠鏡本体が第2回と第3回の製造前準備審査を合格

news

TMTの望遠鏡本体が、全6回に渡って予定されている製造前準備審査(Production Readiness Review、PRR)のうち、2回目および3回目の審査(PRR2、PRR3)を合格しました。PRRはTMT国際天文台(TIO)が実施するもので、対象となる部位の製造図面、インターフェース、品質や安全面などの検証項目を審査し、合格すると対象部の製造開始が認められるものです。今回のPRRでは、方位軸・高度軸で回転する主要な可動部機械構造と、観測装置が設置されるナスミス台が審査対象となりました。

TMTの望遠鏡本体の完成予想図。(クレジット:TMT国際天文台)

日本はすばる望遠鏡を製作した実績が評価され、TMT でも望遠鏡本体とそれに付帯する設備の設計と製作を担当しています。TMT をすばる望遠鏡と比べると、口径は約4倍で,そのまま拡大すると体積・重量は50倍にもなりますが、軽量化の工夫により、望遠鏡本体の重さは5倍程度(約3000トン)に抑えられています。大きな主鏡によって解像度が高くなる分,望遠鏡の追尾と指向にはすばる望遠鏡よりも高い精度が要求されます。また、観測時間が無駄にならないよう、素早く目的の天体に向けられることも要求されます。高さ約50メートル、幅約55メートルの望遠鏡本体は、技術の粋を極めた「精密駆動の巨大構造物」といえるでしょう。

望遠鏡本体は方位軸(水平方向の回転)と高度軸(垂直方向の回転)の2つの回転系を含みます。PRR2では、方位軸・高度軸で回転する主要な可動部構造(重量約2000トン)が審査されました。PRR3では、観測装置を設置するための構造(ナスミス台の3階と4階)が審査されました。望遠鏡本体設計チームを率いる、国立天文台の杉本准教授は「今回のPRRは、主要な構造要素の大部分を網羅したものです」と話します。

PRR2とPRR3の審査会は、2023年2月16日と2月17日に開催されました。コロナ禍により長らくオンライン会議が続いておりましたが、久しぶりの現地開催(オンライン併用)です。多くの審査員とTIO職員が来日し、製造図面や製造工程の審査、要求仕様・インターフェイス仕様の検証などが対面で集中して行われました。(クレジット:TMT国際天文台/国立天文台)

望遠鏡本体は、TMTの骨格として機能し、望遠鏡に搭載されるすべての観測装置、光学系、制御系を繋ぐ役割も持ちます。望遠鏡本体とつながる全てのシステムのインターフェース、製造図面や文書の検証は、TIOのシステムエンジニアリング(SE)チームと品質保証・安全チームによって行われました。今回の審査に合格したことは、望遠鏡本体の製造準備の検証だけでなく、TMT計画全体にとっても重要な一歩といえます。

TMTプロジェクトマネージャーのフェンチャン・リウ氏は、「望遠鏡本体の設計チーム、SEチーム、審査員、オブザーバーの皆さんが、本審査会の準備と成功に向けた多大な努力に感謝します。また、すべての審査資料を徹底的かつ客観的に評価し、設計チームとTIOに有益な勧告を行った審査委員会に、深く感謝いたします」と述べています。

今後、審査会で指摘を受けた事項の確認を行った後、いよいよ材料調達、加工・製造へと進む準備が整うことになります。また、望遠鏡本体に付帯する設備や制御機器などを対象とした残りのPRRが数年のうちに予定されています。

望遠鏡本体設計チームの杉本准教授は、「今回のPRRは望遠本体のみならずTMT計画全体にとっても最大規模かつ最も重要なマイルストーンの一つでした。この成功は、設計や製造準備に従事した技術者達の長期にわたる多大な尽力の賜物です。これからも続く彼らの努力は、今後の制御PRR等も成功させ、建設地における望遠鏡の完成に結実すると信じています」と述べています。


参考:TMT’s Telescope Structure Readies for Production (TMT国際天文台)

インフォメーショントップに戻る

トップに戻る