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短編プラネタリウム番組集「ワン・スカイ・プロジェクト」が世界無料配信へ

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人類は古(いにしえ)より星空を眺め、宇宙とのつながりに思いを馳せてきました。世界中の至る所で、その地域と文化に特有の星の物語が今日に至るまで語り継がれています。

ワン・スカイ・プロジェクト」は、「1つの星空(ワン・スカイ)」がつなぐ世界中の様々な文化をテーマに、伝統的な星にまつわる物語を題材にした短編プラネタリウム番組集です。TMTが出資し、イミロア天文学センターが制作指揮したこの国際協力プロジェクトからこの度、様々な文化圏の星座、天文機器、科学知識に関する、美しいプラネタリウム用短編動画7編のコレクションが発表されました。これらの動画は無料で世界に配信されています。

ワン・スカイ・プロジェクトのイメージ画像。文化によって夜空の模様の形や意味は異なります。(クレジット:One Sky Project/SG360/TMT/’Imiloa/CalAcademy/NSF’s NOIRLab)

時代や文化によって、夜空の捉え方は異なります。それぞれの文化が想像力と伝統的な知識を蓄積し、今日まで続く人々の生活の礎となっているのです。それぞれの物語は異なっていても、私たちは「1つの空」を共有することで結ばれている - そのような驚きと感動を、7編の動画を通じて感じていただければ幸いです。ワン・スカイ・プロジェクトは、また、先住民や伝統文化の知見を誠実に伝えることによって、先住民や伝統文化の視点への認識が深まることを願っています。

「天空のカヌー」の一場面。カナダ北部の先住民は、陸上の季節の移り変わりを映し出すように、空に浮かぶカヌーがゆっくりと回転する様子を観察していました。(クレジット:One Sky Project/SG360/TMT/’Imiloa/CalAcademy/NSF’s NOIRLab)

「サンダーバード」の一場面。空は時間を測るための強力な道具であり、ナバホの人々にとって、サンダーバードは空間と時間を超越し、季節の移り変わりを示し、地上と天空を結びつける存在です。(クレジット:One Sky Project/SG360/TMT/’Imiloa/CalAcademy/NSF’s NOIRLab)

「サムライと星」の一場面。鼓星(つづみぼし、オリオン座)と源平合戦が語られます。この動画では、国立天文台TMTプロジェクトおよびTMT国際天文台の嘉数悠子 教育普及マネージャがナレーションを担当しました。(クレジット:One Sky Project/SG360/TMT/’Imiloa/CalAcademy/NSF’s NOIRLab)

「ジャイ・シンの夢」の一場面。18世紀インドの統治者が建設した巨大な観測機器によって、星や惑星、時間の経過を正確に測定することが可能になり、天空の秩序が地上にもたらされました。(クレジット:One Sky Project/SG360/TMT/’Imiloa/CalAcademy/NSF’s NOIRLab)

動画の制作には、TMTの国際パートナーの天文学者と、プラネタリウム専門家、教育者、文化の専門家からなるチームがアイデアを出しました。また、ハワイ先住民、ナバホ、イヌイットの人たちが、テーマの選択、脚本、音楽、美術、ナレーションなど様々な面で助言を与えてくれました。映像化は、全天周映画制作会社の「セバスチャン・ゴーティエ360」が手がけました。 「ワン・スカイ・プロジェクト」は2022年イミロア天文学センターで開催されたワールドプレミア後、国際的なプラネタリウム映像祭で数々の賞を受賞しています。

2019年の制作開始当初から日本人アドバイザーとして同プロジェクトに関わっている井上拓己さん(山梨県立科学館)は次のように語ります。

「プロジェクト始動にあたり、先住民の文化と最新の天文学が共存するハワイにプロジェクトメンバーが集って、どんなメッセージをどのような手法で伝えようか、というところから、話し合いをしました。 世界各地には、星空にまつわるじつに多様な神話伝説があること、そしてそれらの物語の元となった星空を、わたしたちは共有していること。それらに対する嬉しさや誇りのような気持ちが、One Skyというプロジェクト名にも反映されています。

2019年のプロジェクト始動以降、パンデミックや戦争など、世界が分断されてしまうような話題が、はからずも身近に聞かれるようになってしまいましたが、そんな状況においてこそ、One Skyのメッセージを多くの人と共有していけたら、と改めて願っています」

「サムライと星」のナレーションを担当した嘉数悠子 教育普及マネージャ(国立天文台)は「日本の物語では、平安時代の武将である那須与一に憧れる女の子が、鼓星(つづみぼし、オリオン座)を題材にして過去と現在、そして未来に思いを馳せます。現代では一般的にはギリシャ神話をもとにした星座が使われていますが、文化により星々の捉え方も異なります。この番組がきっかけとなり、より多くの方々に夜空を見上げていただき、また星空によって世界は繋がっていると感じていただければ幸いです」と述べています。

動画(英語版)は、ワン・スカイ・プロジェクトのウェブサイトから、無料でダウンロードできます。また、日本語翻訳版の公開も計画されています。

 

ワン・スカイ・プロジェクトは、イミロア天文学センターが主導し、TMTからの出資と、カリフォルニア科学アカデミー、フランクリン研究所、NSF NOIRLabの支援を受けています。

 


参考:International One Sky Project Highlights Importance and History of Indigenous Astronomy Through Film (TMT国際天文台)

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