TMT建設許可に関するハワイ州最高裁判決について (12月16日更新)
2015年12月2日(現地時間)、ハワイ州最高裁判所は、2013年にハワイ州土地・天然資源委員会が出したTMT計画のための保護地区利用許可(建設許可)の承認手続きに対する異議申立を認め、許可が無効であるとの判決を出しました。
保護地区利用許可は2011年2月に最初に承認されましたが、その際に、係争が発生した場合には土地・天然資源委員会がそれを解決し最終承認するまで建設作業は行わないこと等が決められていました。その後公聴会が開催され、2013年4月に最終的な利用許可が承認されました。最高裁は判決の中で、土地・天然資源委員会が公聴会を開く前に条件付きとはいえ保護地区利用許可を出したのは不適切で、許可は有効とはならないと述べています。そして「我々は土地・天然資源委員会が承認した利用許可と(それを有効とした)巡回裁判所の判断を無効とし、土地・天然資源委員会あるいは新たな審査官の面前で、または本判決に従った別の手続きにより公聴会が開催されるよう差し戻しをおこなう」と述べ、本案件を土地・天然資源委員会に差し戻しました。
TMTはこれまで8年以上の間、ハワイ州で定められたプロセスに従ってきました。また、2008年以降、20以上の一般公聴会が開催されました。提出された環境影響評価報告書は、土地・天然資源委員会による承認を得ています。(注)
判決を受け、TMT国際天文台評議員会Henry Yang議長は以下の声明を出しています。
「私たちはハワイ州最高裁判所の迅速な判決に感謝し、その決定を尊重します。TMTはこれまでと同様、これからもハワイ州が定めたプロセスに従います。私たちは現在、TMTを建設するために必要な次の段階について検討しています。また、ハワイの人々とこれまでの8年間以上を支えてきて下さった方々に感謝申し上げます」
国立天文台の臼田知史TMT推進室長は、次のように話しています。
「ハワイ州最高裁判所の判決を尊重しながら、国立天文台TMT推進室はハワイ大学、TMT国際天文台と協力して現地での建設作業再開のためにとるべき方策を検討しています。また、ハワイの文化と科学が互いに協力し共存できるように、ひきつづき理解を得られる活動をおこないます」
注:TMT建設許可に関する経緯
マウナケア山頂域はハワイ州の保護地区とされ、ハワイ大学が管理を委託されています。TMT建設のための保護地区利用許可申請や環境影響評価報告書は、ハワイ大学からハワイ州土地・天然資源委員会(BLNR)に提出され、承認を受けます。
2008年10月 | 環境影響評価 (Environmental Impact Statement;EIS) についての一般公聴会を7回開催 |
2009年5月 | 環境影響評価の草案を公表 |
2009年6月 | 環境影響評価案についての一般公聴会を7回開催 |
2009年7月 | TMTプロジェクトが建設候補地としてマウナケアを選定 |
2010年5月 | 環境影響評価をハワイ州が承認 |
2010年9月 | ハワイ大学ヒロ校が、TMTへの保護地区利用申請 (Conservation District Use Application: CDUA) をハワイ州に提出 |
2011年2月 | ハワイ州土地・天然資源委員会 (BLNR) は、 係争が発生した場合にはBLNRがそれを解決し最終承認するまでは建設を開始できない等の条件付で保護地区利用許可 (Conservation District Use Permission: CDUP) を承認 |
2011年8-9月 | 合計で7日間にわたるCDUPに関する公聴会が開催 |
2012年11月 | CDUPに関する公聴会の審査官 (Hearing Officer) が、TMT計画は保護地区の目的にかなっていると判断 |
2013年2月 | BLNRはCDUP承認を決定するため最終公聴会を開催 |
2013年4月 | BLNRはTMT計画のCDUPを最終承認 |
2013年5月 | TMT建設反対派は、2011年2月に条件付とはいえ公聴会前にCDUPを承認した手続きの妥当性について巡回裁判所に異議申立 |
2014年5月 | 巡回裁判所はBLNRのCDUP承認の支持を最終決定 |
2014年6月 | 反対派が中間控訴裁判所に異議申立 |
2014年7月 | BLNRは3回の一般公聴会の後、ハワイ大学とTMT国際天文台の間で結ばれる建設地の転貸借を承認 |
2014年9月 | TMT建設工事開始 |
2015年6月 | CDUPへの異議申立が中間控訴裁判所から最高裁判所へ移送される |
2015年12月 | 最高裁判所がCDUPを無効とする判決 |