インフォメーション

ハワイ・マウナケアにおけるTMT建設に関する報道について

others

2月11日のNHK「ニュースウォッチ9」においてハワイ・マウナケアにおける望遠鏡に関する報道がありました。報道時間の制限の中では致し方ない面もありますが、付加すべき事実や背景説明が省かれてしまったり、さらに国立天文台の認識と異なる説明も見受けられました。視聴者の方の誤解を解くために、特に4つの点について、国立天文台の認識を説明させていただきます。

〇「マウナケアにおける望遠鏡の台数を13までとすると説明していたが、それをないがしろにして新望遠鏡(TMT)の建設を計画した」

現時点で望遠鏡の台数を明確に規定した約束や計画はないものの、マウナケア山頂域(科学保護地区)の管理を行っているハワイ大学が1980年代に示した計画に望遠鏡台数を13台とすると記述されたことがあり、天文学者の間でも地元でも 13台という制限があるという認識があります。TMT完成までには既存の望遠鏡を一部撤去する必要があることは国立天文台をはじめマウナケアの望遠鏡関係者はよく認識しており、実際、1台については2016年に撤去を開始する計画がすでに 2009年に示されていました。昨年には、ハワイ州知事が公表したハワイ大学への要請のなかにさらなる望遠鏡台数の削減が含まれており、あわせて3台の望遠鏡の撤去計画がハワイ大学から示されています。
参考記事:http://tmt.nao.ac.jp/info/515

〇「地元の人々の意見を聞かぬまま建設許可を得て計画を進めた」

TMTプロジェクトは、2009年にマウナケアを建設候補地として選定する以前から、地元での対話を長く続け、景観への影響を小さくする工夫や地元への教育支援など、要望をできるだけ取り入れられるよう努力してきました。2010年にハワイ大学を通じて建設許可の申請(保護地区利用申請)を行った後には、ハワイ州土地天然資源委員会での審査過程において公聴会が複数回開催されています。

地元の方の多様な意見をすべて満たすことができていないことは事実ですが、意見を聞かぬまま計画を進めたという表現は事実に反します。当時も、現時点においても、地元においてTMT建設を支持する意見が多数あることも公聴会や世論調査で明らかになっています。
参考記事:http://tmt.nao.ac.jp/info/525

以上の2点については、すでにTMT推進室のウェブページで公表している内容です。

〇「ハワイ州最高裁判所で建設許可の取り消し」

建設許可(建設のための保護地区利用許可)が無効になったのは事実です。しかしながら、この判決内容はハワイ州土地天然資源委員会による手続きに不備があったため差し戻すというものであり、建設計画そのものを否定する内容でありません。最高裁は判決の中で、土地天然資源委員会が公聴会を開く前に条件付きとはいえ保護地区利用許可を出したのは不適切で、許可は有効とはならないと述べています。これは、本来は公聴会の後で許可を出すべきところを、係争が発生した場合はそれを解決するまで建設作業を行わない、という条件付きの許可を公聴会の前に土地天然資源局が出したことを指しています。これを受けて土地天然資源局は、現在、適正な手順での手続きの準備を進めており、これに基づいてTMTは再度保護地区利用許可を得る予定です。

ただし、この判決の背景に、地元での反対運動が活発になったことがあることは私たちも認識しており、保護地区利用許可の再審査の過程では、地元の方のご意見にこれまで以上に耳を傾けていきたいと考えています。
参考記事:http://tmt.nao.ac.jp/info/525

〇国立天文台ハワイ観測所長のインタビューに関連するコメント

国立天文台ハワイ観測所長のインタビューに関連して、ハワイ文化を学び地元の方の意見に耳を傾ける取り組みを始めているという説明がありました。しかし、もともと国立天文台はすばる望遠鏡建設当時から、マウナケアの他の天文台と協力しながら、地元の方との交流や教育事業への協力に力を入れてきました。またハワイ島ヒロに設置されたイミロア天文学センターには設立当初から、国立天文台は立体視を用いたシアターの導入をはじめとして、積極的に協力しており、ハワイ文化と天文学を合わせて学べる場の構築に尽力しています。

実際に、昨年、TMT建設への反対運動が活発になってからも、すばる望遠鏡への反対の動きはほとんどありません。ハワイ観測所が新たな取り組みを始めているという報道内容は事実ですが、これまでの努力が全くなかったかのような描き方は大きな誤解を招くものと考えます。


(2月19日追記) なお、NHK NEWS WEBの2月17日付のウェブページ( 巨大望遠鏡計画に“待った”)では、以上の内容も踏まえたより正確な内容の記事として掲載されています。

インフォメーショントップに戻る

トップに戻る