TMT主鏡分割鏡の製作の進捗
超大型望遠鏡TMT(Thirty Meter Telescope)の30メートル主鏡を構成する分割鏡の製作が進んでいます。海外で研磨を行う鏡材の最初の29枚の品質審査が完了するとともに、非球面研磨の量産が始まりました。
TMTは直径30メートルの主鏡で光を集める望遠鏡であり、主鏡は492枚の鏡を組み合わせることによって構成します。それぞれの鏡を分割鏡とよんでおり、交換用の82枚と合わせて574枚必要になります。日本は574枚すべての鏡材の製造と、約3割の鏡の非球面研削・研磨、外形加工を担当しています(図1)。
(1)海外パートナーでの研磨用の最初の鏡材が品質審査に合格
分割鏡材の製造は、株式会社オハラで進められており(昨年の記事参照)、2015年度までに164枚製造されました。鏡材は円い平板として製造され、まずはこれの表面・裏面とも球面に加工します。この結果、直径 1.52m、厚さ4.61cmの、わずかに湾曲した鏡材になります。これに続いて行われる表面の非球面研削・研磨加工は、日本のほか、米国、インド、中国でも行われます。
海外で行われる非球面研削・研磨加工にむけた球面加工済みの鏡材29枚が完成し、2016年3月8日にTMT国際天文台による審査会が行われました(図2)。審査では、鏡材の内部品質および加工形状についての測定方法および検査データの確認が行われるとともに、現物のチェックも行われ、すべての鏡材が TMT国際天文台の受入検査に合格しました。これらの鏡材は、当面、国立天文台が国内で管理し、海外パートナーで実際に加工が開始されるのに合わせて輸送されます。
(2)非球面研磨加工も量産開始
国内では、すでに2013年度から非球面研削加工が行われてきており、これに続く非球面研磨加工の量産も2015年度に始まりました。非球面研磨については、すでに試作品の製作により加工精度の実証が行われていましたが、量産工程に必要となる高速の研磨方法が確立され、2015年度には6枚の非球面研磨が行われました(図3、4)。
非球面研削・研磨加工はキヤノン株式会社にて行われています。研磨方法には、製作する非球面形状に対応して力をかけて鏡材を曲げた状態で球面研磨を行う 「曲げ研磨法」を採用しています。研磨終了後にかけていた力をはずすと非球面になります。この方法により、効率よく非球面研磨を行うことができます。