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WFOSが第1回基本設計審査に合格

投稿者:TMTプロジェクト

2025年8月7~8日(現地時)に可視広視野多天体分光装置 WFOSの第1回基本設計審査が米国カリフォルニア州パサデナのTMT国際天文台(TIO)オフィスおよびZoomを通じて開催されました。基本設計段階が始まってからの進捗が国際的な専門家チームによって審査された結果、大きな問題は指摘されず、開発を進めてよいとの判断が下されました。

審査会に参加したWFOS開発チームと審査員たち。国立天文台ハワイ観測所の早野裕教授も審査員として参加しました。WFOSの開発は、カリフォルニア工科大学やインド、日本などの国際チームによって進められています。(クレジット:TMT国際天文台)

WFOSは、TMTの第1期観測装置の1つで、一度におよそ100天体を分光観測できるのが特長です。恒星や銀河、さらには銀河間ガスの性質を詳しく調べることができ、天文学のほぼあらゆる分野で新発見をもたらすことが期待されています。

左:TMTのナスミス台に搭載されたWFOSの完成予想図。右:背景銀河の光を用いて銀河間ガスをマッピングする想像図。WFOSは、銀河間ガスの3次元分布を再構成するのに十分な感度と視野を備えています。(クレジット: C. Stark and K. G. Lee)

今回の審査会では、日本が長らく検討を進めてきた面分光ユニット(IFU: Integral Field Unit)をWFOSの必須機能として組み込むかどうかが大きな議題の1つとなりました。IFUは、視野全面を一気に分光できる光学ユニットで、広がった天体を詳細に調べることができます。

これまでIFUは、予算の制約から「将来の追加機能」として計画されていました。しかし、最近の設計見直しによってWFOS本体の開発コストが削減され、IFUを必須機能として組み込む余地が生まれました。今回の審査では、このIFUの重要性が改めて認められ、WFOSの必須機能として導入すべきとの結論が示されました。TIOで承認されれば、IFUの必須機能化が正式に決定します。

国立天文台でWFOSの開発に携わる尾崎忍夫講師は「2010年に国立天文台先端技術センターに着任して以来検討してきた面分光ユニットが必須機能に含まれるかもしれない可能性が高まり、感慨深く思います。WFOSの面分光ユニットは広い視野を特徴としていて、銀河の形成進化に新たな知見をもたらすと期待しています」と語ります。

 


参考
WFOS Preliminary Design Review 1 Successfully Completed (TMT国際天文台)

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