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赤外線分光器 MODHISが概念設計を完了

投稿者:TMTプロジェクト

TMTの第一期観測装置の1つである MODHIS(多目的回折限界近赤外高分散分光器)が、概念設計審査を完了しました。これにより、装置開発は次の段階である基本設計へ進むことになります。

2025年9月24~25日(パサデナ時間)に、MODHISの概念設計を締めくくる3回目のMODHIS概念設計審査会(MODHIS CoDR-3)がZoom会議形式で開催されました。今回の審査では、補償光学系(AO)との機械的インターフェースや、偏光観測機能の導入コンセプトなど、前回審査(CoDR-2)以降の設計更新が報告されました。

第3回概念設計審査に参加したMODHIS開発チームと審査員(クレジット:TMT国際天文台)

国際的な専門家からなる審査パネルは、これまでの設計の進展を高く評価し、MODHISが概念設計を完了したと認定しました。また、装置の設計要求に偏光分光機能を加えることを推奨しました。

MODHISは、TMTのAOシステム「NFIRAOS」の後段に設置される近赤外分光装置で、超高分散分光(分解能 R > 100,000)を実現するよう設計されています。高精度な視線速度測定や偏光分光観測によって、太陽系外惑星の大気成分や生命の兆候の探索、銀河中心のダイナミクス、太陽系天体の詳細観測など、多目的に渡る幅広い分野での活躍が期待されています。

(左)NFIRAOSに搭載されたMODHISトップエンド部の完成予想図。トップエンド部は入射光を光ファイバーに導き、その光は高分散分光器へ送られます。(右)高分散分光観測を行うことで、水(青)、アンモニア(緑)、硫化水素(黄)など分子の分光特徴を効率的に分離し、系外惑星の大気や生命存在の可能性を探ることが可能になります。(クレジット:TMT国際天文台)

MODHISの開発は、カリフォルニア工科大学、カリフォルニア大学を中心に、TMTパートナー国の研究者が協力して進めています。W. M. ケック天文台とも協力しており、同天文台の系外惑星観測装置「HISPEC」の開発を通じて得られた先進技術や洗練された較正手法がMODHISの開発に大きく生かされています。

今回の概念設計審査の完了により、MODHISはTMT第一期観測装置としての実現に向け、さらに一歩前進しました。

前回審査会(CoDR-2)までTMT国際天文台でMODHISプロジェクトマネージャーを務め、本審査会には審査員として参加した国立天文台TMTプロジェクトの寺田宏教授は次のように述べています。

「限られたリソースの中で開発を堅実に推し進め、装置の概念設計を高いレベルで完成させた開発チームに敬意を表します。今回導入が推奨された「偏光分光機能」は他の超大型望遠鏡の系外惑星観測装置にはないユニークな機能であり、この実現により全く新たな切り口で系外惑星の姿に迫ることが可能になるでしょう。基本設計に入る今後のMODHIS開発では、HISPEC開発で核心的な貢献を続けてきた日本の開発チームのさらなる寄与が重要となってきます。国際共同開発の枠組み・体制を堅持/深化させ、装置開発の不断の進展を目指します」

 


参考:MODHIS Achieves a Key Milestone with Successful Conceptual Design Review (TMT国際天文台)
赤外線分光器 MODHISが 概念設計審査の第一段階を通過 (2023年1月 TMTブログ)
赤外線分光器 MODHISの 第二回概念設計中間審査会が開催 (2024年3月 TMTブログ)

 

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