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赤外線分光器 MODHISの 第二回概念設計中間審査会が開催

投稿者:TMTプロジェクト

TMTの第一期観測装置の1つである MODHIS(多目的回折限界近赤外高分散分光器)は、生命の兆候を示す地球型系外惑星の発見などを目的として開発が進められています。2024年1月に2回目の概念設計中間審査会(CoDR-2)が開催され、MODHISの設計と期待性能についての進展が示されました。

2024年1月30日にTMT国際天文台(TIO)のパサデナオフィスに集まったMODHIS開発チームと審査会参加者。国立天文台TMTプロジェクトの寺田宏准教授(後列左から5人目)は、MODHISのプロジェクトマネージャーとして、装置開発全体の管理や調整役を担っています。また、東北大学の秋山正幸教授は、当日の参加こそできませんでしたが、TIO科学諮問委員会委員長の立場からオブザーバーとしてMODHISの進捗を審査しました。(クレジット:TMT国際天文台)

MODHISでは、太陽系外惑星の質量を惑星の軌道運動から精密測定するために、高い速度測定精度が要求されます。具体的には、人の一般的な歩行速度よりも遅い 秒速0.5メートルという精度で、惑星の動きを測ることを可能にします。CoDR-2では、このような驚異的な精度の観測を実現するために必要な装置の性能が示されたほか、補償光学系(NFIRAOS)とのインターフェース設計の進捗、分光器や較正器などのサブシステムの配置についての検討などが示されました。また、惑星大気のより詳細な分析を可能にするために、MODHISに偏光観測の機能を追加することについても議論されました。

TMTのナスミス台に設置された、補償光学系(NFIRAOS)と、MODHISのフロントエンド装置(FEI)の想像図。NFIRAOSを覆う青いボックスの上にある六角形の構造がFEIの筐体。FEIは、NFIRAOSによってシャープに補正された天体の光を効率的にMODHISのファイバー伝送系へ中継し、高精度な観測を実現します。(クレジット:TMT国際天文台)

MODHISの分光器と較正システム。前回の概念設計中間審査会(CoDR-1)では、望遠鏡架台の設置階への配置が検討されていました。その後 装置性能に影響する複数の要因を比較検討した結果、ファイバー伝送による信号損失を最小化することを優先し本審査会では最善解としてナスミス階への設置が提案されました。分光器は「赤側分光器」と「青側分光器」の2台からなり、ファイバーを通して送られてきた天体の光を0.98~2.46ミクロンにわたる近赤外線の波長域で分光します。(クレジット:TMT国際天文台)

TIOの観測装置グループリーダーのデイブ・アンダーセン氏は、CoDR-2が示したMODHISの進展を「TMTの性能を高め、宇宙について革新的な理解が進むことを約束するもの」と評し、多くの有用なコメントを提出した審査員全員に深く感謝しました。アンダーセン氏は、また、MODHISチーム全体に感謝する中で、プロジェクトマネージャーとして優れた力を発揮したとして、寺田准教授とカリフォルニア工科大学のラリー・リングヴェイ氏に特別な感謝を表しました。

寺田准教授は「今回開催した第2回中間審査会では、MODHISが目指す「高精度な系外惑星観測」の実現に向けて技術的な妥当性を確認することができました。また、望遠鏡本体構造や補償光学系の設計・製作準備が大きく進捗する中で、基本となるインターフェースを精査できたことは大きな達成であったと感じています。審査会で得られた幾つかの技術課題について検討を行い、MODHIS概念設計の最終審査(CoDR-3)にむけて装置開発を進めます」と、本審査会の意義と展望について述べています。

 


(参考)
Insights from the MODHIS Midterm Conceptual Design Review(TMT国際天文台)
MODHIS (TMT国際天文台)

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