「天体望遠鏡と観測装置」に関する国際光工学会が 日本で初開催
国際光工学会(SPIE)の天体望遠鏡と観測装置に関する学術会議(SPIE ASTRO)は、天文学に関するプロジェクト、望遠鏡、観測機器、基盤技術等の情報を共有するために、世界各地の天文学者とエンジニアが集結する、2年に一度の一大イベントです。従来は、北米と欧州で交互に開催されてきましたが、2024年6月、アジア初のSPIE ASTROが横浜で開催されました。TMTプロジェクトでは、全体集会でのTMTに関する講演や、ブース展示を通して、日本の貢献を紹介したほか、TMTの装置開発に関するワークショップを開催して世界各地の関係者との交流と連携を深めました。
SPIE ASTRO 2日目(6/17)の朝に開催された全体集会(Plenary Session)では、TMTプロジェクトの臼田知史と嘉数悠子が「Moving TMT Forward」という題目で発表を行ないました。
まず、臼田からTMTの優れた性能、TMTによって太陽系外惑星に生命に関連した酸素等が検出できること等を紹介しました。また、TMT計画に対する日本の貢献内容についても、国内メーカーでの活動を含めて紹介しました。TMT計画は文部科学省のロードマップ2023に選ばれたことから、日本が推進すべき最優先の大型プロジェクトの一つであることも強調しました。
つづいて、嘉数からTMTの新しいチームによる、ハワイのコミュニティとの真摯な対話の様子、コミュニティと共同で作成し実行している教育・普及等の活動について現状や今後の計画を紹介しました。ハワイではこれまで対話やサービスが行き届いていなかったコミュニティや地域にまで活動を拡げていること、こうした活動によってハワイの状況は著しく改善されていることが説明されました。
質疑応答では、TMT国際天文台(TIO)によるハワイでの活動についてたくさんの質問があり、皆さんの関心が非常に高いことを再認識すると共に、多くの関係者にTMT計画や建設地ハワイにおける状況が改善されている現状を紹介できたことは非常に良かったと思います。
6月18日~20日にかけては、大ホールでの展示が行われ、天文観測に関連する企業やプロジェクトのブースが並びました。国立天文台のブースでは、すばる望遠鏡、TMT、アルマ望遠鏡、太陽観測ロケット実験CLASPなどの観測装置のための試作品や部品を展示し、天文学の共同利用観測を装置開発の面からも支える国立天文台の技術、経験、アイデアを紹介しました。
SPIE ASTRO開催前日の6月15日には、TMTの観測装置をはじめ装置開発に関わっている研究者・技術者の会合を国立天文台TMTプロジェクトが開催し、開発の状況や今後の計画を共有しました。SPIE参加者を中心に、国内外から50人近くの参加があり、19の講演と12のポスター発表(講演と重複あり)がありました。 大規模な会合となるSPIEでは必ずしもTMT関係者の間で時間をとって交流できない場合もあるため、半日の会合ながら貴重な交流の機会となりました。
講演では、TMTの観測装置・補償光学の開発に関する発表のほか、インドでの主鏡製作などTMT関連の活動が報告されました。また、すばる望遠鏡やせいめい望遠鏡の補償光学や装置の開発、TMT-ACCESSも紹介され、日本における装置開発や科学検討の活動を知ってもらう機会にもなりました。
国立天文台の家正則名誉教授による長年の尽力により、初の日本開催となったSPIE ASTROには、約2800人が参加しました。国立天文台からも臼田や本原教授が地上望遠鏡や観測装置のセッションの座長を務めた他、国内の大学や研究所関係者が世話人として運営にかかわり、SPIE ASTROの開催成功に貢献しました。SPIEでの様々な発表や会合が、TMTの観測装置開発における国際協力につながることを期待します。