公開講演会 「超大型望遠鏡TMTがぬりかえる宇宙像」FAQ

ここでは公開講演会「超大型望遠鏡TMTがぬりかえる宇宙像」(10/8 @一橋記念講堂) のアンケートの中でお寄せ頂いた質問についての講演者による回答を掲載しています。

(質問) 人工ガイド星は、レーザー光をどのくらいの時間出して、どのくらいの 時間でナトリウム層からの反射が見られるのですか。また、どのくらいの時間 光っているものですか?
(回答) レーザで励起されたナトリウムは時間を置かずにほぼ同時に光りますの で、実際にはレーザー光を連続的に送っています。ナトリウム層の高さは 90km ですので、 少し斜めの場合でもレーザー光が届きナトリウム層からの光が戻るまでの時間は 0.001 秒以下となります。

(質問) TMT を宇宙に打ち上げたら、地上で見るよりももっと遠くまで見られる ものなのですか?
(回答) TMT を宇宙に置くことができれば、補償光学は不要となりより威力を発揮 しますが、技術的な困難は別としてもそのための経費は100倍くらいかかると思います。 実際直径 2.4m のハッブル宇宙望遠鏡の製作、打ち上げ、運用経費はすでに 1兆円を超えていると言われています。

(質問) 何世紀か後、知的生命がいるとしたら先ずどの様なコンタクトのしかた をしますか。あるいはどのようなメッセージを発しますか?
(回答) 今日の話は系外惑星に生命を探す話でした。知的生命とのコンタクトに ついては地球外知的生命探査(SETI)で扱われており、発見時の取り決めが国際 天文学連合などで議論されています。詳しくはこちらをご覧ください。

(質問) 宇宙の直径はどの位ですか?
(回答) 現在の標準的な解釈は、宇宙は無限であり果てもないというものです。 したがって、宇宙の直径は無限大です。ただし、しばしば「宇宙が誕生以来我々 が観測できる領域の大きさ」をさして、「我々が観測できる宇宙の大きさ」と呼ぶ 事があります。この場合は、宇宙が誕生以来137億年の間に光が飛ぶことができる 距離が半径となります(大まかには137億光年なのですが、より正確に計算すると その数倍になります)。

(質問) ダークマターとは、現段階ではどのような物質を想定して研究が進めら れているのですか?
(回答) 基本的には未知の素粒子(素粒子の標準模型として知られている、 実験的に確認されている種類以外のもの)だと考えられています。その代表例は 超対称性粒子とよばれるグループで、標準模型において電磁力を伝える光子(フォトン) に対応するフォティーノ、重力を伝える重力子(グラビトン)に対応するグラビティーノ などが候補とされています。いずれにせよ、天文学で発見されたダークマターの存在が 未知の素粒子模型を開拓するもっとも強い動機を与えています。

(質問) マルチバースによる斥力は考えうるか?
(回答) 例えば我々の宇宙以外に存在するかもしれない別の並行宇宙の存在が この宇宙のダークエネルギーに対応する斥力を与えている原因ではないか、 という意味でしたら、考えにくいと思います。

(質問) ビッグバンの前はどうだったのですか?
(回答) 通常は、ビッグバンあるいは宇宙の誕生が時空間の誕生であると考えら れています。少なくとも、現在の宇宙との因果関係はないという意味において それ以前は存在しません。

(質問) ビッグバン説をとると、宇宙には果てがあるはずですが、果ての向こう には何があるのでしょうか?
(回答) ビッグバン説は、宇宙には果てがあると主張はしていません。時間的な 始まりがあると考えるだけで、現在の観測結果からは空間的には無限に広がっていると 考えるのがもっとも自然です。したがって空間的な果てはありません。もし、時間的な 果てという意味であれば、上の質問に対する答えになります。

(質問) 加速膨張のはてに、宇宙はどうなるのでしょうか?
(回答) 宇宙の銀河同士は互いに離れてしまって観測できなくなると考えられて います。つまり本当に寒々とした暗黒の宇宙が広がっているだけになります。

(質問) 星間ガスは周囲の星の光を反射したり、受けて温まったりして何らかの 形で光りますが、ダークマターはなぜそのようにならないのでしょうか?
(回答) ガスが光を反射したりするのは、光と相互作用をするからです。 ダークマターはそのような相互作用をしない(あるいはするとしても極端に弱い相互作用 しかしない)と考えられているから光らないのです。というよりも、光っていない という観測事実から、そのような性質をもっていると考えられているという方が 適切かもしれません。