2020年

No.652020年3月31日

  • [1] TMTプロジェクトの現状と今後について
  • [2] すばる+TMT サイエンスブック2020 公開のお知らせ
  • [3] 報告: TIO SAC (1/29-1/30)
  • [4] 報告: TIO 評議員会 (2/6-2/7)
  • [5] 報告: TMT科学諮問委員会 (1/27、2/20)
  • [6] 報告: 2019年度TMT戦略経費報告会 (3/6)
  • [7] 報告: 望遠鏡構造製造前準備審査会Part I (3/11-3/12)
  • [8] 報告: その他
  • [9] 今後の予定 (諸会議、イベント、講演など)

[1] TMTプロジェクトの現状と今後について

ご報告しておりましたように、2019年7月にハワイ・マウナケアにおいてTMT建設のための現地工事を開始する予定でしたが、山頂へのアクセス道路封鎖を含めた望遠鏡建設への反対運動をうけ、工事車両が現地にアクセスできない状態が続きました。道路封鎖は2019年末に解消しましたが、2020年3月現在に至るまで現地工事を進めるに至っておりません。

TMT国際天文台(TIO)として、建設に反対する人々のリーダー格の方を含んだ関係者の話しあいに参加しており、国立天文台としても積極的にこれに関与しています。反対されている方たちの意見に真摯に耳を傾けつつ、対話を通じてTMTへの理解をひろげ、早期にマウナケアでの現地工事を開始することを目指して引き続き努力しています。一方、ハワイにTMTを建設できない場合の代替建設地として、TIOはスペインのラパルマ島(カナリア諸島)を選定し、自治体からの建設許可を既に得ています。国立天文台としてもラパルマについて、国立天文台TMT科学諮問委員会と協力した科学的見地での検討や、天候条件や訴訟リスクなどについて、独立に検討を進めています。

これまで日本は望遠鏡本体構造、主鏡分割鏡、観測装置などで着実にTMT計画への貢献を果たしてきました。すばる望遠鏡やアルマ望遠鏡などで培われた技術の蓄積に根差したこれらの担当部分は、日本の技術力を活かしさらに発展させるものであり、またTMTの中核部分であって、その実現にとって重要な役割を果たしています。

ハワイでの建設が進捗していないことをうけて国立天文台TMTプロジェクトの2020年度予算は大変厳しい状況となっており、活動に制限を受けます。これはTMTに参画する国内企業にとっても影響が大きく、日本に蓄積された先端的な技術が失われる懸念があります。国立天文台は、現地工事再開後すみやかに国内での製造作業を再開できるよう、これらの企業と協議しています。

3月5日に開催された すばる望遠鏡コミュニティミーティングの中で、上記のTMT計画をめぐる現状について報告をさせて頂きましたが、TMT計画の現状と今後は光赤外線天文学分野にとどまらず幅広い研究者コミュニティにご説明すべきことと認識しており、2019年9月の日本天文学会の際に開催した説明会に続いて、現状をご説明し意見を伺う機会を近く設定すべく準備を行っております。

[2] すばる+TMT サイエンスブック2020公開のお知らせ

すばる望遠鏡とTMTを連携させた独自の科学戦略を立てることで、日本が天文学・宇宙物理学の研究で世界最先端の成果を出すことが期待されます。今後の観測的天文学の世界的な潮流を踏まえつつ、すばる独自の機能をいかした科学的戦略や日本のコミュニティがTMTで最先端の成果をあげるために優先する機能、とりわけ、すばるとTMTの効果的な連携のありかたを検討し、サイエンスブックとしてとりまとめました。制作・刊行にあたっては、すばるおよびTMT科学諮問委員会メンバーを中心とする編集委員、80人を超える執筆者をはじめ、多くの方々にご尽力頂きました。深く感謝致します。

TMTプロジェクトウェブサイトにPDF版を公開しましたので、ぜひご覧ください。
https://tmt.nao.ac.jp/researchers/science/

冊子は、研究会の会場や一般向け講演会、イベントなどで配布するほか、研究・教育機関でご活用いただける場合には、こちらから必要数をお送りすることもできます。冊子を希望する場合、以下へご相談ください。
問い合わせメールアドレス : tmtj"at_mark"nao.ac.jp
("at_mark"を@に変えて下さい)

[3] 報告: TIO SAC (1/29-1/30)

1/29-30にパサデナでTIO SAC会議が開催されました。秋山co-chairと臼田が現地で参加、成田・本田・田中委員はZoomで参加しました。

(1) 新たに第一期観測装置として位置づけられた近赤外線高分散分光器 MODHIS (Multi-Object Diffraction-limited High-resolution Infrared Spectrograph) の科学仕様について議論が行われ、多天体機能は大きな開発要素であるため、科学的な必要性と仕様について、SACで確定する必要があることを確認しました。銀河考古学や銀河中心の星のダイナミクス等の分野がサイエンス候補と想定され、日本でも多天体観測の科学仕様への要求を今後議論します。

(2) 次回のSACは、3/25にzoom会議で開催されますが、半日はGMT-SACと合同で行います。それぞれのSACでの議論状況を交換し、次期観測装置の検討やTAC、データアーカイブなどについても議論を始める予定です。

[4] 報告: TIO 評議員会 (2/6-2/7)

2/6-7にパサデナでTIO評議員会が開催されました。

(1) ハワイ州政府・議会の最新状況について州関係者とハワイ大学関係者から説明があり、マウナケアのマスターリース更新やCSO等の観測所のデコミッションの進捗などが報告されました。ハワイ先住民の代表者を含めた幅広い関係者が参加し、特にハワイ先住民に関する過去・現在・未来の課題への対策を議論する「和解委員会」の設置などの取組みが報告されました。

(2) 米国が参加する二つの超大型望遠鏡TMTとGMTを建設するUS ELTプログラムの今後の見通し等について、NSF関係者からの報告がありました。

(3) 建設地がマウナケアであることは変えず、ラパルマを代替建設地とする姿勢に変わりはありませんが、今後の評議員会での議論を受けて、建設地を変更することも含めてメンバー会議に推奨する方針を決議しました。

(4) TMTのスケジュールやコストに関するビジネスプランの作成について、常田国立天文台長を委員長とするワーキンググループを結成し、各機関の今後の貢献見通しや制約についての情報を集め、それらを踏まえた計画を作成する方針になりました。既に、ワーキンググループの会合が2月から始まり、精力的に検討を進めています。

[5] 報告: TMT科学諮問委員会 (1/27、2/20)

1月27日に臨時のTMT科学諮問委員会がZoomで開かれました。まず、TMTプロジェクトから、ハワイでの状況、米国のUS decadal surveyの状況、代替建設地であるラパルマの状況、および日本国内の状況と、TIO評議員会で表明している国立天文台・自然科学研究機構の見解について報告しました。また、ラパルマのサイト情報で不十分である点について、国立天文台でもデータの取得に努めることを説明しました。委員からは、光赤外以外のコミュニティにも説明する必要があるとの指摘がありました。またラパルマでの建設となった場合にすばる望遠鏡と共同での運用という当初のモデルが崩れることについて懸念する声も上がりました。国立天文台長からの諮問を受け、今後、マウナケア建設が不可能になる可能性を踏まえ、ラパルマでのTMT建設推進をサイエンスの観点から支持するか、また、支持する場合にどのように競争力をもって推進するかについての答申を、TMT科学諮問委員会でまとめることとなりました。

2月20日には2019年度第4回TMT科学諮問委員会が開かれました。1月27日の臨時委員会を受け、科学的観点でのラパルマの評価について、「TMTのサイエンス」、「すばるとの連携」の2点から議論されました。「TMTのサイエンス」については、2030年代初頭の初期運用におけるラパルマTMTの科学的重要性、2030年代の本格運用におけるラパルマTMTの科学的重要性、および競争力を持って実現するのに必要な技術開発の観点から議論されました。前提としたラパルマのシーイング条件について、実際の観測での印象と異なる点が懸念として挙げられました。また 「すばるとの連携」については、すばる科学諮問委員会と合同で議論されました。TMT時代に予算をすばる望遠鏡に投じて運用する科学的必要性について、違うサイトにあっても2つの望遠鏡による連携が必要であるサイエンスケースが確認されました。以上の議論をまとめ、3月初めにラパルマでのTMT建設について、台長への答申が提出されました。

科学諮問委員会の議事録は以下より参照していただけます。
https://tmt.nao.ac.jp/researchers/subcom/minutes.html

[6] 報告: 2019年度TMT戦略経費報告会 (3/6)

2019年度TMT戦略経費報告会が3月6日に開催されました。今年度の経費を受けられた村上尚史さん(北海道大学)と入部正継さん(大阪電気通信大学)に極限補償光学系とコロナグラフであるSEITについて、尾崎忍夫さん(国立天文台)にWFOSに搭載する面分光ユニットの開発について、本田充彦さん(岡山理科大学)と小林尚人さん(東京大学)に中間赤外線装置MICHIについて、それぞれのグループでの開発状況をお話いただきました。その後の全体討論では、来年度はこの経費が継続できないことが説明されました。継続的な基礎開発フェーズでの予算が重要であり再来年度以降の復活を望む声が多く聞かれました。また、今後もこの報告会のような基礎開発の情報共有の場を望む声が聞かれました。

[7] 報告: 望遠鏡構造製造前準備審査会Part I (3/11-3/12)

望遠鏡本体の製造前準備審査会(その1)が3月11日-3月12日に開催されました。製造前準備審査とは、対象となる部位の製造図面、インターフェース、検証項目などを審査し、合格すると対象部の製造開始が始まるものです。今回の対象は、高度軸ジャーナル、ピントルと呼ばれる構造、下部チューブの3部位で、製造図面に問題ないか、他サブシステムとのインターフェースは適合しているか、品質や安全で問題はないかなどが審査されました。

今回は対象部位が絞られていたこともあり、大きな問題となる項目はなく、コンフィグレーション管理とインターフェースの課題を製造前に解決するという条件で合格をいただくことできました。望遠鏡構造担当としては、詳細設計完了からいよいよ材料調達、加工へ進むお墨付きをもらうという大きな一歩が踏み出せたということで非常に感慨深いものがあります。もちろん、これはあくまでも最初の一歩で今後も何回かの製造前準備審査待ち構えていますが、来るべき製造へ向けてチーム一同またがんばろうという気持ちがわいています。

[9] 今後の予定 (諸会議、イベント、講演など)

4/14-4/16 TIO評議員会

※4月22日~4月24日に予定されていた宇宙・天文光学EXPO 2020は、新型コロナウイルス感染防止のため中止となりました。