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二つの超大型望遠鏡計画が合同して、科学諮問委員会を開催

投稿者:TMTプロジェクト

TMT国際天文台(TIO)科学諮問委員会では、TMTによる科学成果を最大限に引き出すために必要な望遠鏡や観測装置の機能や運用方法などを検討しています。前回、3月25日に行なわれたTIO科学諮問委員会は、TMTとGMTに参加する科学者たちが集まり、この二つの超大型望遠鏡計画を共に進めていくために意見を交換する機会となりました。

GMT(巨大マゼラン望遠鏡) は、チリに口径24.5mの望遠鏡を作る計画です(※1)。米国では複数の大学と研究機関がTMTまたはGMTに個別に参加しています。しかし、それでは、次世代の天文学に必須といえる望遠鏡が使えない米国の研究者もでてしまいます。そこで、全米の研究者がこの二大望遠鏡を使用できるようにすることを目指す計画(US-ELTプログラム)が、米国科学財団、TMT、GMTの3者の協力で進められてきました。3月の会議は、その歩みとして、それぞれのメンバー国・機関の研究者からなる科学諮問委員も協力して戦略を練る最初の機会となりました。

会議では、まず両科学諮問委員会の参加者が紹介された後、TMT、GMTそれぞれで予定されている観測装置計画が詳しく紹介されました。北半球に建設されるTMTに対して、GMTは南半球に建設されるので、両望遠鏡を組み合わせることによって、全天の天体を、これまでにない感度と分解能で観測することが可能になります。TMTとGMTが提供する幅広い天域と様々な観測装置の組み合わせから、これまでの常識を一新するような観測成果をどのようにして生み出すか、熱気に満ちた意見が交わされました。

さらに、これからもこのような議論を科学諮問委員会で定期的に続けていくこと、TMTとGMTがそれぞれのメンバーの研究者を中心として開催しているサイエンスフォーラムでも、互いに参加し研究者同士の交流を深めていくことの重要性が話し合われました。

US-ELTプログラムのプログラムサイエンティストで、TIO科学諮問委員会共同議長を務めるマーク・ディッキンソン氏は、「この二つの巨大望遠鏡計画の間に協力関係を築くことの重要性を話し合うため、これだけの科学者達が結集したのは素晴らしいことです」と、今回の会合の意義を話しています。また、同じく共同議長を務める秋山正幸教授(東北大学)は、「TMTとGMTは、北天と南天という天域以外にも望遠鏡や補償光学の設計思想、装置の機能でも異なります。このような議論を通して、GMTとの研究協力を進めることは、日本の研究者にとっても科学研究の幅を広げる良い機会につながると期待しています」 と話しています。

初めてのTMT-GMT合同科学諮問委員会には、約45人の科学者たちが参加しました。新型コロナウィルス感染拡大防止策として、ビデオ会議システムを用いての開催でした。(写真提供:TMT国際天文台)

合同委員会の後は、TMTのみの議題が扱われました。TMT計画の進捗と、マウナケアとラパルマに建設した場合の比較などを研究者コミュニティに報告するためのオンラインセミナーの準備や、2022年(※2)にカナダのブリティッシュコロンビア大学で開催予定のTMTサイエンスフォーラムについて話し合われました。

 

参考:Scientists Attend First TMT-GMT Joint Science Advisory Committee Meeting (TMT国際天文台 ウェブサイト)


※1:GMTには、米国、韓国、オーストラリア、ブラジルの大学・研究機関が参加しています。主鏡として直径8.4mの鏡を6枚並べ、有効口径24.5mの望遠鏡を作ります。詳しくはGMTのウェブサイトをご覧ください。

※2:次回のTMTサイエンスフォーラムは新型コロナウィルスの影響により2022年に延期予定となっています。

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