[1] はじめに
このメールは国立天文台ELTプロジェクト室からお送りしております。
国立天文台ELTプロジェクト室では、日本の天文学コミュニティがELT(次世代超大型望遠鏡)計画の一つ、TMT計画へ参画することを目指し、様々な取り組みを行っております。この度、取り組み状況の進展について、「JELT News Letter」として、関心をお持ちの皆様にご報告することと致しました。
なお、以前からのELT計画推進ワーキンググループのメーリングリストに準拠し、さらに、TMT計画への参画に関心をお持ちと思われる方々を当プロジェクト室の判断で加えさせていただいた上で、新しいメーリングリスト jeltwg
jelt.mtk.nao.ac.jp を立ち上げました。
本 News Letter は、このメーリングリストに配信しております。
登録メールアドレスの変更、削除、新しいメンバーの追加などのご要望がありましたら管理者(連絡先は文末)までご連絡ください。
[2] TMT Science Advisory Committee (SAC) (4/22開催)報告
【SAC報告】
TMTのScience Advisory Committee (SAC)は、3ヶ月毎に開催されています。日本からはオブザーバーとして家さんと臼田が参加し、ユーザーの立場からTMTの望遠鏡や装置、サイエンスについて議論をしています。
4月25日にパサデナのTMTオフィスにてSAC会議が開催され、日本からは臼田が参加しました。以下、概要について報告します。
- 1) 望遠鏡本体
- 主鏡についての技術検討がメーカーで始まりました。主鏡については、日本でも並行して検討中です。
- 副鏡・第三鏡の設計について2社の入札がありました。こちらも日本で並行して検討する予定です。
- 望遠鏡のスパイダー構造について新しい設計案が出てきています。これにより、光遮断を2/3まで減少し、風による力もファクターで4倍減少しつつ、堅さを維持しています。
- 2) 観測装置
- IRISについて開発チームが具体的になっています。PIはUCLAのJames Larkinで、UCLAはレンズアレイによる三次元分光モードを担当します。CoIは、CaltechのAnna Mooreでイメージスライサーモードを担当します。日本は撮像モードについて担当し、鈴木竜二・小西真広氏と臼田が検討に 参加しています。 プロジェクト・サイエンティスト (PS)はUCIのBetsy Bartonです。
- WFOSについても組織が具体的になってきています。PIはUCO/LickのRebecca Bernstein、PM (Project Manager)はUCSCのBruce Bigelow (PM)、PSはCaltechのChuck Steidelです。日本からも開発チームおよびサイエンスチームへの参加を期待されています。
- IRMSについては、MOSFIRE (2009年Keckに取付予定)の進行状況待ちで、組織化は進んでいません。
- 3) サイト
- 5カ所のサイト調査は完了し、どのサイトも合格という結果がでました。サイト調査の結果はSPIEで報告され、その後一般に公開されます。
- マウナケア (MK13N) については、晴天率は約75.8%、観測不可能時間は3~9%で高湿度が主な理由です。
- チリで最有力候補地のアルマソネスは、晴天率約89.2%、観測不可能時間は3~9%で風速が主な理由です。
- VLTのパラナルサイトは、南北の尾根構造に近いため尾根を超える風の影響が年々増えているためシーイングが悪くなっているという考察がありました。アルマソネスは尾根から離れているため、この影響は小さい見通しです。
- 4) その他
- TMTのObservatory Scientistとして、望遠鏡の運用プラン等を担当していたDavid Silva氏が、7月からNOAOの所長に就任することになりました。
- "Science With Giant Telescopes: Public Participation in TMT and GMT"という研究会が以下の日程で開催され、TMTとGMTとの関係について議論される予定です。
June 15-18 @Chicago (InterContinental Hotel)
http://www.gsmt.noao.edu/files/swgt-agenda.pdf
[3] TMT Board会議(4/28開催)報告
4/28に PasadenaのTMTオフィスで開催された TM Board会議に、ELT室から家・高見の2名が参加致しました。以下に報告致します。
【TMTボード会議報告】
日時場所: 2008年4月28日 9:00-16:00 TMTオフィスパサデナ
参加者
TMTボードメンバー:
S.Kulkarn, E.Stone, R.Ellis, T.Tombrello (Caltech),
M.Bolte (UCSC), S.Olsen (UCLA, Vice Chancellor),
H.Yang(UCSB, Chancellor), R.Carlberg (Canada, U. Tronto),
G.Fahlman
(Canada, HIA D.G.), R.Racine (Canada)
プロジェクト側:
J.Nelson (Project Scientist), G.Sanders (Project Manager),
C.Steidel (SAC), D.Silva (NOAO所長に転出)
オブザーバー:
J.Omura (Moore財団顧問)、家、高見、
1、会議の前(Yang、Stone、Ellis、家、高見)
観山台長のLOIのドラフトを検討
2、ボード会議
2-1、プロジェクト報告(Sanders)
- 1)予算状況
DDP (Design Development Phase) の予算状況
- 2)サイトテストレポート
- 4/25のサイトテスト報告で一連の事業は終了。アルマゾネスのみ測定継続。
- マウナケアのテストタワーは2008年6月に撤去。
- アルマゾネスとマウナケアのバランスをとったデザインを進める
- 3)望遠鏡、装置
- 主鏡:
- 第二鏡、第三鏡:
- AO: RTC(リアルタイムコントローラー)
- その他
- 4)装置
IRIS 日本の装置サイエンティストが撮像系の設計に参加との報告
- 5)建設計画
チリでの用地確保についての方針報告
- 6)ESOとの協力
技術的な問題についての協力を進める。MOU作成中。セグメント鏡仕様の共有、AO、レーザー調達など
- 7)初期建設までのスケジュール
2008年6月 サイトテスト、TMT設計進捗外部レビュー
2009年2月 PDR
2009年6月 サイト決定
2010年6月 Final Design Construction Readiness Review
2-2 Strategy Group レポート
- 1) 全般(Richard Ellis)
- ハワイにおけるTMTのEIS(環境アセスメント)とハワイ大学によるCMP(マウナケアの使用方針)
- 日本の参加と、他のパートナーの可能性(大きな動きがあるわけではない)
- マウナケアサイトに関する動き
- 2)UHへの望遠鏡時間について(Bolte)
- 3)チリの用地取得
アルマゾネスについては現在使用権(2011年3月まで)を持っているUCN(北Catolica大)と交渉中。
2-3.NAOJ-ELT報告(家)
1月以降の進展について、そして観山台長署名のEd Stone宛手紙と、Letter of Intent(LOI)草案について報告。
2-4 SAC報告(Steidel)
このサイトテスト結果は、SPIEなどで公表することになった。
2-5.最新のサイトテスト解析報告(Nelson)
3、Executive Session(サイト関係の議題については家、高見出席)
- 1)望遠鏡デコミッション
TMTを設置するためには、マウナケアから望遠鏡をデコミッションすることが求められる。その候補について議論があった。
- 2)サイト選択
これまでの議論を踏まえて、北天の候補地はマウナケア、南天の候補地はアルマゾネスと決定した。これについて早急に新聞発表をおこなうことになった。
[4] 今後の予定
5/31,6/1 第2回学術会議シンポジウム (@ 東京大学小柴ホール) 「天文学・宇宙物理学の展望 長期計画の策定へ向けて」 ELT室員(高見) ELT計画の現状に関して講演予定
7/10 TMT Board会議 (@ Pasadena)
8/21,22 光赤天連シンポジウム (@ 国立天文台三鷹) 「地上大型望遠鏡計画:2020年のための決心」(仮題) 開催予定(光赤天連主催)