[1] 報告: TIO評議員会
2025年度はこれまで3回(4月23~24日、7月22~24日、10月14~16日:米国時間)パサデナのTMT国際天文台(TIO)オフィスで評議員会を開催しました。併せて、オンラインで臨時評議員会を4回(6月20日、7月4日、8月18日、8月21日:日本時間)開催しました。
また、5月30日(米国時間)に発表された2026年度米国国立科学財団(NSF)予算教書において、TMTは最終設計段階に進めないと記載されたこと、7月23日(現地時間)に、スペイン科学・イノベーション・大学省のDiana Morant大臣が、カナリア諸島ラパルマ島にTMTを誘致するために、建設資金の一部としてスペイン技術イノベーション開発センター(CDTI:Centro para el Desarrollo Tecnológico y la Innovación)を通じて最大4億ユーロを出資する提案が発表されたことを受け、6月以降、評議員会メンバーによるオンラインでの準備会合を毎週開催しています。主な議論および報告内容は下の通りです。
(1) 今後の方針
TMT計画が置かれている状況が非常に厳しいことを認識しつつ、全パートナーで、TMTを実現する意志を確認し、協力して計画を進めています。一方、財政的に厳しい状況になっているため、TIO職員の削減や一部の契約(米国での主鏡研磨加工)を中止し、持続的に事業を維持できるよう、評議員会はTIO執行部と協力して取り組みを進めています。
(2) NSF
TIOや国立天文台等が進めている、NSF、OSTP(科学技術政策局)、OMB(行政管理予算局)、連邦議会関係者との会合など、TMTをNSFの最終設計段階に進めるための諸活動について、情報共有と方針の議論が行われています。日本は常田NINS特任教授を中心に進めている日本政府の諸活動等について報告しています。
(3) ハワイ
TIOや国立天文台等が進めているハワイでの活動など、TMTをマウナケアに建設するための諸活動について、情報共有と方針が議論されています。日本は常田NINS特任教授を中心に進めている日本政府の諸活動や、川合NINS機構長、土居台長のハワイ訪問、アラメダハワイ郡長の日本訪問等の活動内容について報告しています。
(4) ラパルマ
TIO評議員会は、スペイン政府からの提案について、詳細内容を検討し、課題や代替提案等についてTIO執行部と協議しています。また、CDTIおよびIAC(Instituto de Astrofísica de Canarias)とTIOとの協議内容や進捗を確認し、今後の方針等についてTIO執行部と議論しています。
(5) 資金計画
追加分担金支払いに関する各メンバーの状況を確認し、今後の対応について議論しています。日本は土居台長から、スケジュール通りに追加分担金の支払いを行なっていることや、日本の2026年度予算の確保に向けた国立天文台の活動等を説明しています。
(6) TIOにおける設計・開発
主に次の内容について、評議員会で進捗が適宜報告されています。
- NSFの設計開発費を受け、副鏡および第三鏡の支持・位置制御機構、副鏡(凸面)の鏡面測定方法、主鏡制御システム等の設計が進められ、それぞれの段階でのTIOによる設計審査が進められています。
- カナダとTIOの協力で、補償光学装置(NFIRAOS)の可変形鏡の製作が進められています。
- 国立天文台やNINSアストロバイオロジーセンターと協力し、第一期観測装置IRIS、WFOS、MODHISの設計・開発が進められています。WFOSは8月に基本設計審査(第1回)を実施し、国立天文台先端技術センターで開発してきた面分光機能が基本機能として追加されることが推奨されました。9月にはMODHISの概念設計審査が無事に完了し、基本設計段階に進みました。IRISは12月の最終設計審査に向けて資料作成等の準備が進められています。
(7) 国内における設計・開発
主に次の内容について、国立天文台から評議員会で進捗を適宜報告しています。
- 主鏡分割鏡材の製造再開にむけた準備活動として、鏡材(オハラ社クリアセラム)の製造に用いられている熔解炉を用いた試作・品質の検証、球面研削加工の再開に向けた準備が進められています。
- 外形加工(非球面研磨加工後、六角形にカットされ、裏面にセンサーポケット等の加工)の量産に向け、国内メーカーによる試作を含めた開発が進められています。
- 望遠鏡本体構造の静圧軸受について、国内メーカーは、新たに担当する海外メーカーと設計変更・製造準備に向けた協議が進められています。
