主鏡クリーニング装置の基本設計審査が開催される
TMT主鏡は夜間観測中外気にさらされますから、しだいに砂埃などが積もっていきます。カバーが無いため、昼間は主鏡を水平に向けて保持することにより、できるだけ埃などがたまらないようにしますが、それでも徐々に汚れていきます。このため、望遠鏡に取り付けたままで掃除する方法が考えられています。既存の望遠鏡では、液化炭酸 (以下 LCO2) を噴き出し、そこで生じる固体(ふわふわの雪のようなもの)を鏡面に噴きつけて埃を除く方法がとられています。TMTではすばる望遠鏡と共通の考え方で、主鏡のほぼ全面を掃くワイパー機構を作り、LCO2を噴き出します。さらに、TMTでは広い面積をカバーできる独自のノズルなどを開発しました。ワイパー動作の骨組み部分は、日本が担当する望遠鏡構造の⼀部として設計が進んでいます。このたび、その骨組みに取り付ける配管やLCO2を噴き出すノズルなどを含む主鏡クリーニング装置部分(CLN) の基本設計審査(PDR)が開催されました。
CLN PDRは、2020年8月19、20日にオンライン会議システムを使って開催されました。国立天文台からは、CLN設計チームメンバーとして中本が、望遠鏡構造部とのインターフェースに関する重要な技術検討の担当として寺田が、そして、審査員として林が参加しました。
審査員は事前に設計提案書やサポートの技術文書を読み、コメントや質問を予め提出しています。機能としてはシンプルながら、このように大がかりな自動清掃機構はたいへん複雑なものになります。そもそもこのような大型の部品が、他の部品にひっかかったり、じゃましたりしてはいけない。特に根もとの部分は他の構造との関係が複雑で、これから詳細設計をする上でよく気をつけていかなければなりません。また、大量のLCO2を使う上、そのLCO2を配管で約15メートル先まで届けなければならない。そのための送り出し機構も含め、重さが気になる。なおかつ全体の作業を、夜間観測に支障のないよう、制限時間内に終えなければならない。そのような点を審査員は次々と指摘し、質問します。
TMTに関わる構造は何でも大きくて重い。それらが精密に動くようにするだけでもなかなかの 挑戦です。それに加えて、CLNは主鏡に近づきます。ノズルの先端と主鏡面の距離はわずか30センチ、そして主鏡の前で動くのですから、審査中の議論では確実な動作と安全面に関する内容が多くありました。技術的にまだ詳細が明らかになっていない部分もあります。物についても人についても安全が確保されることも含め、これから詳細設計が行なわれていきます。
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