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川越高校で、「川高サイエンス探求 特別講座」

投稿者:TMT推進室

7月20日にTMT推進室の家が行った高校生対象の講演について、川越高校の物理の先生から報告をいただくことができましたので、以下に紹介いたします。

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埼玉県立川越高等学校「川高サイエンス探求 特別講座」として国立天文台名誉教授 家正則先生に「最新宇宙論と観測最前線」という演題でご講演をいただきました。「最新宇宙論―近代天文学から最先端宇宙論まで-」、「すばる望遠鏡と次世代超大型望遠鏡TMT計画」の2部構成で、その後質疑応答が行われました。参加者は川越高校、川越女子高校、松山高校、所沢北高校、浦和高校生徒70名、および教員10名の80名です。

第一部はチコ・ブラーエの火星軌道の観測とケプラーの軌道解析から始まりました。チコ・ブラーエが1分角の精度で観測した火星のデータとケプラーの理論が合わないことで楕円軌道の発見にいたるお話は、実験精度が如何に重要か、また実験と理論の違いを無視しないという科学精神の大切さを教えてくださいました。その後、ガリレオ、ニュートンを経て、観測的宇宙論を確立したハッブルの法則とガモフによるビッグバン理論により、宇宙論の標準理論に至ります。次に「すばる望遠鏡」の開発と家先生を中心としたチームが発見した最遠方銀河の発見と一気に現代に入ります。最遠方銀河の発見競争の中で宇宙の暗黒時代が実証され、星の誕生による宇宙の再電離、すばる望遠鏡の観測による重力レンズ効果でダークマターが実証されたことなど、すばる望遠鏡により宇宙論が精密科学として発展していったことを実感しました。その後能動光学・補償光学の発展により、「ハッブル宇宙望遠鏡」を超える性能が地上のすばる望遠鏡にもたらされ、話は第二部 次世代30m超大型望遠鏡TMTへ移ります。

第二部では、TMTの開発や科学目標のお話しに加えて、すばる望遠鏡の他の望遠鏡にない広い視野が、TMT完成後もすばる望遠鏡を宇宙探索の中心的存在にすることなど、開発の中心におられる方ならではのお話をいただきました。また、TMTの建設にあたり、技術の開発とともに、現地の人の理解を得るための努力や、経済、政治的手続き等、研究者には多くの資質が求められることを、計画の主担当者から聞けたことはとても貴重な体験でした。

以下に生徒の主な感想を記します。

・宇宙研究の今を基礎的な内容からとても分かりやすく進めてくださり、TMTが建設されることで解き明かされるであろう謎をより理解できた。

・日本が天文学の重要な立場にあり、他ではできないことを可能にする技術があると知り、誇らしく思った。自分もこのようなことができるようになりたい。

・TMT開発・建設にかかわる関係者ならではの貴重なお話しを聞く機会を得てよかった。

・科学的なすばるやTMTの価値も素晴らしいが、建設までの経済、文化的な問題も絡まり、予算獲得のプレゼン能力や語学力、現地の人とのコミュニケーション能力など、研究者には人間としての様々な能力を身につけることが大切だと知った。

・暗黒物質等未知のものの正体を突き止めたいと思った。

・宇宙が膨張しているとしたら、月と地球の距離も広がっているのか疑問に思った。

参加生徒は8割が理系、2割が文系。講演後の質疑応答では多くの質問があり、30分の予定の質疑時間後も生徒達が並ぶことを認めてくださり、質問に丁寧に答えてくださり感謝いたします。

国を超えたレベルで基礎科学に取り組む意味は何なのか、宇宙文明との遭遇など、生徒にじっくり考えて欲しいと思わせる内容満載のご講演でした。

世界中をTMT建設のために奔走される大変お忙しい中、本校・他校生徒のために貴重なご講演をしてくださり感謝いたします。今後TMT建設が順調に進み、先生をはじめとする研究者の方々が宇宙の最前線を切り開かれることを切にお祈りいたします。

なお「川高サイエンス探求」事業は、昨年まで11年間研究指定を受けた文部科学省の科学振興事業「スーパーサイエンスハイスクール事業」の本校独自の後継事業です。

文責 埼玉県立川越高等学校 教諭 阿部宏(物理)

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