手話通訳士さんと協力した「ふれあい天文学」
国立天文台は「ふれあい天文学」と題して、小・中学校への出前授業を行っています。2020年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大で、例年のように学校を訪問して授業をすることが難しいケースも多いですが、TMTブログでも報告されているように、オンラインミーティングを活用して、日本国内外の学校への遠隔授業が行われています。
2021年1月15日には、やはりオンラインミーティングで、熊本県立熊本聾学校と宮城県立聴覚支援学校の二校と国立天文台を結んで、TMTプロジェクトの岩田が中学生への遠隔授業を実施しました。
聴覚に障がいのある生徒さんへのふれあい天文学授業は初めてのことですが、日本天文教育普及研究会 天文手話検討ワーキンググループ(※1)で活動されている 手話通訳士の方にご協力頂きました。事前に両学校の先生と打合せをして、どのような機器構成で行うか、どんな話に関心がありそうか、またどんなところに気をつけるべきかなどを教えて頂き、また手話通訳士の和田みささん、本庄谷拓さんには事前に国立天文台にお越し頂いて、セットアップを試して準備を行いました。当日は、東京都には緊急事態宣言が再度発令されている中での開催となりましたが、体温測定や距離の確保、換気の徹底など、できるだけ対策を行った上で実施しました。
先生方から、生徒さんはブラックホールに興味があると伺っていましたので、当日のお話は、銀河系中心やイベント・ホライズン・テレスコープによるブラックホールの観測についてお話しして、太陽系外の惑星探しについても紹介しました。そして、超巨大ブラックホールはどうやってできるのか?、地球のような生命をはぐくむ惑星はあるのだろうか?、など、宇宙にはまだ私たちが答えを知らない謎がたくさんあること、それらを解き明かすために、TMTというこれまでにない大きな鏡を持った望遠鏡を作ろうとしていることをお話しました。
手話通訳士のお二人が的確に手話に訳して下さったおかげで、どちらの学校の生徒さんもとても興味をもってお話をきいてくださったようです。お話の後には、ブラックホールについてのものから、星がどうやって光るのか、なぜハワイに望遠鏡を作るのか、など、たくさんの質問もして頂いて、手話への翻訳を通じてお返事しました。天文学の用語をたくさん含んだ自分の説明が、その場で手話に翻訳されてコミュニケーションができるのは、目の覚めるような経験でした。
両校とも、やはり新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、色々な行事ができない状況であるとのことで、オンラインミーティングによる今回のふれあい天文学は楽しんでもらえたようです。何よりも、宇宙には私たちのまだ知らない謎がたくさんあり、望遠鏡での観測を通じてその謎に迫っていることを感じてもらえてうれしく思いました。手話通訳士のお二人や、両校の先生方、そして生徒の皆さんに感謝いたします。
後日、熊本県立熊本聾学校と宮城県立聴覚支援学校の先生から、授業の写真と、生徒さん達の感想をいただきました。生徒さん達が授業を楽しんでくれた様子が伝わり、天文台チーム一同、とてもうれしく思いました。宮城県立聴覚支援学校のホームページにもこの授業の感想が掲載されていますので、ぜひご覧ください。
※1:国立天文台三鷹キャンパス手話ガイド動画も、日本天文教育普及研究会 天文手話検討ワーキンググループの協力を得て作成されています。