TMTの副鏡と第三鏡のコーティング設備が概念設計審査を合格
TMTの副鏡(M2)と第三鏡(M3)の鏡面にコーティングを行うための設備(以下 M2 M3 COAT)が、概念設計審査を合格しました。M2M3 COATの製作はインドが担当しています。2021年8月3日~4日にかけて行われた概念設計審査会には、国立天文台TMTプロジェクトの中本と林が、それぞれ審査員とTIO側の設計担当者として参加しました。
TMTの副鏡と第三鏡は、30メートルの主鏡で集めた天体からの微弱な光を、観測装置まで届ける役割をします。その鏡面を作るため、M2M3 COATでは、反射率の高い銀の薄膜をM2とM3の表面にコーティングします。コーティングを行う真空釜(チャンバー)は内径が4.2mの大きさで、直径3.1mの凸面鏡であるM2と長径3.5m×短径2.5m(楕円)平面鏡のM3の両方に対応します。
M2M3 COAT概念設計を請け負ったHind High Vacuum(HHV)社が、インド宇宙物理学研究所のヒマラヤ・チャンドラ望遠鏡(口径2m)のために製造したチャンバーの試験の様子。鏡の出し入れのために、チャンバーの下部はレール上を水平移動できるようになっています。チャンバーの下部に鏡を配置した後、チャンバーを密閉して真空引きをし、鏡を回転させながらコーティングが行われます。(クレジット:Hind High Vacuum Company)
鏡面の高い反射率を維持するため、定期的にM2とM3の再コーティングを行うことになっています。M2M3 COATは、望遠鏡のメンテナンスエリアに設置され、古いコーティングの剥離を行う区域と、チャンバーでコーティングを施す区域から構成されます。
概念設計審査会では、M2とM3のコーティングに必要な性能と、望遠鏡の他の設備とのインターフェースが審査された上で、M2M3 COATの設計の大枠が承認されました。審査委員長を務めたジョシュ・チャーチ氏は「概念設計は十分に確立されており、M2M3 COATの設計チームはチャンバーを次の開発段階に進める準備ができています」と語っています。
M2M3 COATの概念設計はコロナ禍の最中である2020年に開始しました。TMTプロジェクトマネージャーのフェンチャン・リウ氏は「M2M3 COATの設計チームが、概念設計の段階で、非常に成熟したデザインを提示したことを喜ばしく思います。これは、TIOの光学部門、TMTインド、HHVからなる設計チームが、すべてオンラインで行われたミーティングでも、緊密な連携をとったおかげです」と語っています。
今後は、チャンバーの重要部分の性能検証モデルを試作し、概念設計の検証や、コーティングの厚さと反射率に関する試験などが行われる予定です。
参考:TMT’s Secondary and Tertiary Mirrors Coating Facility Passes Conceptual Design Review (TMT国際天文台ウェブサイト)