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ニューヨーク日本語補習校とふれあい天文学

投稿者:TMTプロジェクト

米国では3連休の初日の土曜日にあたる2022年2月19日、ニューヨーク日本語補習校にTMTプロジェクトカリフォルニア事務所の林が「ふれあい天文学」授業を行いました。この補習校はニューヨーク州の人口が多い地域にあるウェストチェスター校とロングアイランド校の2つの学校を含みます。まだ感染状況が広く改善しているわけではなかったため、ロングアイランド校は学校ではなく家庭などからの参加でした。しかもこの週は大雪が降り、休校になったところもあったそうです。

実はニューヨーク州は、すばる望遠鏡にとって特別な場所です。すばる望遠鏡の大きな鏡のもとが、この州の北部カントンにある工場で作られたので、鏡が生まれたところと紹介できるからです。授業では、すばる望遠鏡でわかってきたさまざまな天体の様子を見てもらいました。

ニューヨーク州カントンから、ペンシルバニア州の研磨工場に向けて輸送される、すばる望遠鏡の主鏡(クレジット:NAOJ)

この春には月に有人基地を作るアルテミス計画のうち、アルテミス1号機の打ち上げが予定されています。月面着陸はしませんが、その一つ手前の段階でさまざまな実証実験が行われることになっています。この計画のためのロケットや宇宙船、さらに月面で使うハードウエア部品の製造が進んでいますが、ニューヨーク州でもさまざまな部品が作られている。もしかして授業に参加していた生徒さんの家族が関わっているかもしれません。月や、ローバーの活躍で見慣れるようになった火星など、いまどきの小中学生にとっては旅行先どころか、職場として考えられるようになります。

一方、この授業の直前に太陽面で起きた大爆発。これは幸い地球に向かう方向ではなかったため、通信などへの悪影響を心配しないですみました。が、太陽がその活動周期の中で活発な時期に入りつつあることから、これから太陽面での爆発にいっそう注意が必要です。また昨年12月に公開された映画では、小惑星衝突が題材になっています。そこで取り上げられたような大規模な被害を生ずるものは滅多に起きないとはいえ、太陽系の中でのさまざまな天体のあり方を考えさせられるものでした。

2月19日の太陽。左端にガスの噴出(プロミネンス)が見える。(クレジット:GOES (NOAA))

授業の終わりの方でたくさんの質問が出てきました。宇宙でもっとも早いもの、天体が丸い理由、宇宙服なしで活動できる惑星の存在、TMTの主鏡分割鏡はなぜ六角形か。さらに高校生からの質問で、JWSTが打ち上げられL2ポイントに到達した、安定した軌道の位置としてL2を始めL1、L3はわかりやすいが、L4、L5がなぜ安定なのか。3体問題の特別なケースとして、物理の授業で習うはずですね。

およそ10年後に火星に行き、現在ローバーが集めている岩石を持ち帰る計画や、太陽系以外の惑星系に大気や海洋を探す大型望遠鏡の建設など、天文宇宙に関連する産業が広がってきています。天体衝突に際しての減災や対策も、理工系ばかりでなく人文社会系の専門家が必要、というように、職業としても広がっていきます。授業に参加してくれた生徒さんたち、これからどのように自分の可能性を切り開いていくでしょうか、しかも地球ではないところで。たいへん楽しみなことです。

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