ハワイ島での星空観望会
ハワイ島は世界有数の天体観測地で、一般の人も気軽に参加できる星空観望会が定期的に開催されます。そのうちの一つがハワイ先住民団体のʻOhana Kilo Hōkūの観望会「ʻOhana Stargazing」です。TMT国際天文台(TIO)や国立天文台ハワイ観測所などの各観測所と協力して、ハワイ州の各地で開催されています。ハワイ島で開催されるときは、国立天文台TMTプロジェクト長の臼田も参加しています。
2023年7月22日の観望会は、ハワイ島北西部に位置するコハラのMo‘okini Heiau(モオキニ・ヘイアウ)という遺跡のそばで開催されました。ここは、先住民が軍神を奉り儀式を執り行っていた場所で、今でも石積みの壁が残されており、アメリカの国定歴史建造物に指定されています。
観望会では、星の動きや風の変化などを高度な航海術に発達させて数千キロもの大海を渡ってきた先住民の歴史や文化を学び、天文学者と共に天体を観測します。今回は、残念ながら途中小雨も降り、良い条件とは言えませんでしたが、月やスターリンク衛星を観て楽しみました。
こういったイベントは、私たち天文学者にとっては先住民文化を学ぶ場となり、地元の住民、特に子どもたちにとってはハワイ島の空のすばらしさを体感する機会となっています。
この観望会は、マウナケアでの天文学を支持する先住民団体ʻOhana Kilo Hōkūが主催し、天文学に興味を持った人たちが集まります。天文学に興味を持っていても、TMTのことをよく知らずにいる人もいるので、TMTで実現可能な科学や技術、国立天文台と共にTIOが現在行っている地域での教育活動などを伝えています。TMT建設を望んでいても、その理由や背景はさまざまです。TMT建設に反対する人にも同じようにいろいろな理由があり、簡単に賛成、反対と二分できるものでもありません。しかし、いろいろな方と直接話をすることで共通して分かることは、ハワイの、特に子どもたちの将来を大事にしたいという思いです。
今後も地域の一員として、自分たちができる役割を果たせるよう、より広く、より多くの人々と関係を築く活動をしていきたいと思います。
国立天文台TMTプロジェクト長 臼田知史
(写真提供:TMT国際天文台)