米国天文学大学連合のマウンテン総裁が来日
6月19日に米国天文学大学連合(Association of Universities for Research in Astronomy, AURA)のマット・マウンテン総裁(Dr. Matt Mountain, President)が自然科学研究機構の川合眞紀機構長を表敬訪問されました。マウンテン氏はこの週に横浜で開催された国際光工学会(SPIE)会合出席のため来日されていました。
47の米国機関と3の米国以外の機関で構成されるAURAは天文学の発展を目指して、政府機関と共に望遠鏡建設計画を推進する役割を担い、またジェミニ天文台(ハワイ島マウナケアとチリ)やダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(マウイ島)等の国立科学財団(NSF)の望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡やジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)等の航空宇宙局(NASA)の望遠鏡を運用しています。
川合機構長との面会に続き、TMTプロジェクトメンバーとの懇談の時間をいただきました。マウンテン氏と国立天文台との関係は長く、ポスドク時代には野辺山宇宙電波観測所に何度もいらしたことがあります。その後、数々の大型望遠鏡計画に携わり、ジェミニ天文台の所長などの要職を歴任しました。前職では2005年からAURAが運営している宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)の所長を務め、JWST計画をリードし、その成功に多大な貢献をしてきました。現在もJWSTの望遠鏡サイエンティストとサイエンスワーキンググループメンバーを務めています。
現在大活躍しているJWSTですが、相次ぐ予算超過とスケジュール遅延に伴い計画中止が提案されたことが複数回あり、そのたびに米国議会議員や米国天文学会などの強い後押しで存続、そして現在の成功に至った経緯があり、その貴重なご経験を伺うことができました。TMTプロジェクトメンバーからはTMTと2040年代の打ち上げに向けて検討が進んでいるHabitable World Observatory (HWO)との科学的シナジー等について質問し、地球型惑星の検出に向けて互いに協力していくことが重要との認識を共有しました。また、日本でのTMT建設に関する活動として、これまで数年間、主鏡や望遠鏡の製造は止めてきたがその間も試作や開発を行ってきたこと、今後は工程の再立ち上げを含めて製造開始が大きな仕事になることを紹介しました。マウンテン氏からは、TMTをはじめ次世代超大型望遠鏡の重要性が力強く語られるとともに、多くの人が共感できるよう説明していくことが大事とのアドバイスをいただきました。
世界最高水準の研究施設の設計、建設、運用には今や国際協力が欠かせず、AURAは極めて重要なパートナーであり、次世代の天文学を築くTMT計画の実現に向け、連携をさらに強化して活動していくことを確認しました。