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IRISの第1回最終設計審査会が無事に完了

投稿者:TMTプロジェクト

TMTの第一期観測装置 IRISは、近赤外線でこれまでにない高精細な撮像と分光観測を実現する装置です。2025年12月に初回の最終設計審査会(FDR-1)が開催され、これまで行われてきた設計、試作、解析などが国際的な審査委員会によって評価されました。

審査会に参加したIRIS関係者と審査員。国立天文台からは、鈴木、清水、田中、東谷、大渕、小俣、平田、池之上が開発チームとして参加したほか、ハワイ観測所の田村が審査員として参加しました。審査会はカリフォルニア州パサデナのTMT国際天文台オフィスとオンライン(Zoom)を併用して、2025年12月8日~9日(パサデナ現地時)に開催されました。(クレジット:TMT国際天文台)

IRISの完成予想イメージ。円筒形の容器がIRISのクライオスタット(赤外線観測に必要な超低温環境を保つための真空冷却容器)で、支持機構(黒い棒状の構造)を介して、TMTの補償光学系NFIRAOS(青色の構造)に取り付けられています。補償光学と組み合わせることで、IRISはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の約5倍に相当する高い空間分解能を実現します。(クレジット:TMT国際天文台)

IRISでは、0.84~2.4マイクロメートルの波長域で、撮像観測と面分光観測ができます。太陽系天体や系外惑星の研究から、銀河系中心の超巨大ブラックホールのまわりを回る星々の精密観測、さらには初期宇宙の銀河を細かく分解して調べる分光観測まで、幅広い分野での活躍が期待されています。

IRISクライオスタットの断面図。クライオスタットの上部に撮像システム、下部に面分光システムが組み込まれています。(クレジット:TMT国際天文台)

IRISの面分光システムで遠方の銀河を観測した場合のシミュレーション。銀河を細かく区切り、最大1万か所のスペクトルを同時に取得できます。これにより銀河の運動構造(右パネル)や、場所ごとの星生成率や元素の量などを詳しく調べることができます。(クレジット:UCSD OIRLab)

IRISは国際協力のもとで開発が進められています。国立天文台、TMT国際天文台、カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学、カナダ国立研究機構などから30名以上の研究者・技術者が参加しています。

今回の審査会で、審査委員会は、TMTと補償光学の性能を最大限に引き出す装置を開発してきたIRISチームの取り組みを高く評価しました。限られた予算や計画の遅れといった制約がある中でも、チームが長年にわたり工夫を重ね、装置の実現性を着実に高めてきた点が、特に評価されています。

また審査委員会は、
(1)検出器の供給状況の変化に迅速に対応し、新しい検出器に合わせて装置の設計を見直したこと、
(2)複雑な装置が、必要な機能と性能を確実に提供できるようにシステムズエンジニアリングの手法を強化したこと、
(3)最新の解析手法を使って装置が期待どおりの性能を発揮できることを検証したこと、
の3点で大きな進展があったと評価しました。これらの成果には国立天文台(TMTプロジェクトと先端技術センター)の研究者・技術者が大きく貢献しています。

IRISチームのシステムズエンジニアリングと撮像システムのマネージャを担当する鈴木竜二 准教授(国立天文台TMTプロジェクト)は、「今回、観測装置の主要開発部分である光学系と機械系について最終設計審査を通過できたことは、IRISの実現(製造)に向けた大きな一歩です。先端技術センターとTMTプロジェクトが力を合わせてこれまで積み上げてきた技術の蓄積が評価されたことを嬉しく思います」と述べています。

 


参考:
TMT IRIS FDR-1 Successfully Completed(TMT国際天文台)

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