父島でふれあい天文学(小笠原報告その2)
湿度が高く、温かい母島では樹木がよく生い茂り、ついこの間まで住んでいたハワイ島とよく似ている感じがしました。再び「ゆり丸」に乗って父島に戻ると、わずかの距離なのにこちらは降水量が少なく、高い樹木が少ない、険しい山肌が露出しているところが多くある、など風景が異なりました。
父島での学校巡りは、まず1月17日午後に小笠原高校の1年生を訪問。 事前に調べたり考えたりしてきてもらいたいこととして、「生命の誕生と存続にとって肝心なものは何か?」 。これに対して、地球型生命をとりあえず考えるなら、岩石惑星、水が液体でいられる温度、空気、など出てきました。元素として大事なのは水素、酸素、炭素、窒素。食べ物に含まれるタンパク質やデンプンなども、元素という点では同じようなものですね。質問では「TMTがいつできるか」「天体にある水に関して」などが出てきました。進路について考える年齢ということもあり、天文に関わる職業の紹介や、大きな望遠鏡の職場に実はいろいろな専門家が関わっていることをお伝えしました。
1月18日は小笠原中学校の3年生に理科室でお話しました。とても元気の良いクラスです。質問では、「ブラックホールって本当にある?」「太陽はどうやって燃えている?」。星のエネルギー源は、今はまだ生活と結びついていませんが、そのうち。また太陽からの熱や光は、太陽光発電に使われていますね。
1月19日、中学校の隣の小笠原小学校に4年生の教室をお訪ねしました。ずっと4年生を担任している先生はご自身で天文に強い関心をお持ちということもあり、4年生のカリキュラムにある星空のことを熱心に教えて下さっています。他の学年に比べ格段に人数の多いこのクラスは、毎月の天体観測にも通っている星好きさんが多く、質問がどんどん出てくるとてもにぎやかな授業になりました。星や惑星の材料がガス(気体)とチリ(固体)であることはもちろん、星の色の違いも知っているし、サソリ座など代表的な星座は得意とするところ。流れ星もよく見ていて、それが隕石であることも知っている。最近話題になった恒星間物体はおがさわら丸ぐらいか、それより大きいのだから、そんなものが地球に落ちてきたら困るなあ。では宇宙は何型?星や銀河は温度や形で分類できる。この宇宙全体はどう分類するのか。1つしか知らないと分類のしようも無いのでは?どこのクラスでも授業の最後に、ビーズキットを使って目に見えない光について考える実験をしました。不思議なことにその時間まで曇っていた日でも、実験をしようとしたら日差しが戻ってきて、まるで皆さんの実験を助けてくれているかのようでした。蓄光ビーズについては、夜に実験を続けてみようということで、それぞれにキットを持ち帰ってもらいました。
さて小笠原村でこんなに宇宙好きの児童生徒が多いのはなぜでしょう。父島には国立天文台の観測施設があります。母島でも「父島との学校交流の際に、星の勉強もしました」という声が寄せられています。そもそも夜空の星がきれいという小笠原の恵まれた事情もありますが、レオニドという会社が天文に関する活動を長らく続けています。小学生向けのプログラムから始まり、現在ではそこを卒業した生徒さん達向けのプログラムもあるそう。そうした「先輩」たちは、地元のイベントで力になってくれるほどに。また天文倶楽部もあります。ビジターセンター隣の広場が、街中で便利が良く、木立が街灯を遮ってくれる格好の観望会会場でした(第3回へ続く)。