望遠鏡と装置開発の国際学会に参加(主鏡編)
アメリカ テキサス州のオースティンで6月に6日間にわたって開催されたSPIE Astronomical telescopes + instrumentationは、世界各国からの天文光学関係者が集まる研究大会です(※)。望遠鏡や観測装置などについて、それらの要素技術や応用を議論したり、各種望遠鏡の建設予定や建設の進行状況を知らせたり、初期成果を宣伝したりもします。運用、管理、はたまた大規模な改造や修理の話題も。実際に現場でこうした作業に携わる人々が、知恵や悩みを寄せ合い、より良いものにしていこうと切磋琢磨する場となっています。
今回、私(林)は、分割鏡を含む望遠鏡の鏡面製作、望遠鏡に取り付けたままでの鏡の清掃・洗浄方法、再メッキの手法などを扱う分科会に参加しました。軽量鏡の開発が進んでいること、補償光学の進歩につれ、鏡の反射率ばかりでなく散乱の性質が気になってきたことなどの変化を感じました。研究発表の部屋でも、ポスター会場でも、技術情報や実用上の問題点など情報や意見交換が盛ん。8メートル級の望遠鏡建設が進んでいた当時に主鏡清掃方法などで議論した人々や、マウナケアで一緒に実験などした人々との再会もうれしいものでした。(※林は、すばる望遠鏡の望遠鏡光学系のコーティングや、主鏡の清掃方法について、基礎実験から携わっていました。)
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休憩時間にも熱心に情報交換
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大きな会議場内のあちこちにこの研究大会の表示が
5日目の夜には、光学コーティングのワークショップに参加。これは望遠鏡光学系に特化したもので、次世代望遠鏡の開発者と既存の望遠鏡で実際に運用に携わっている人々が会し、熱心な議論のために2時間の予定が3時間以上に。TMTでは、主鏡反射膜として、広い波長帯で反射性能を上げた銀を想定しています。そうした反射膜がジェミニ望遠鏡(マウナケアとチリ)とVISTA望遠鏡(チリ)に使われて経験が積み上がってきていること、現在建設中のLSST望遠鏡(チリ)でも使われるとのことです。望遠鏡にとりつけたままでの主鏡清掃方法についても、水洗が十分に役立つ、かつ鏡面を損なわないという実例が積み上がってきていました。
参加者が日欧米を超えて様々な国から来ていること、発表者が企業技術者や大学の開発関係者に広がっている様子、またアカデミアと企業の間の人材往来の様子も印象深いものです。望遠鏡本体や主鏡のように大きく重い物の分野ではやや少ないとはいえ、女性の専門家の活躍ぶりも目の当たりにできました。
次回は日本で開催されるということで、日本発の発表がいっそう多くなることが期待されます。
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街の風景~ ガラスを多用した建物が目立つ(左) 会議場の隣に路面電車終点 (右)
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街の風景 ~夜回りさんは馬で(おまわりさんです)
※Astronomical Telescopes + Instrumentationは、国際光工学会(SPIE)が主催する様々な研究大会の一つですが、天文関係者の間では、単にSPIEと呼称されることが多いです。