[1] TMTの状況
(1) 米国国立科学財団(NSF)関連の動き
2025年5月に発表された2026年度NSF予算教書において、GMT(巨大マゼラン望遠鏡)を最終設計段階に進める一方で、TMTは同段階に進めないと記載されたのに対し、TMT国際天文台(TIO)等は、予算作成権限をもつ米国連邦議会関係者等への働きかけに取り組んできました。2026年1月23日、連邦議会は「NSFは、両望遠鏡プロジェクトを直ちに最終設計段階へと進めなければならない。Astro2020で推奨された施設の開発のために3000万ドル以上を措置する」という強い文言の入った合同説明書を伴った歳出法案を可決、大統領が署名し歳出法が成立しました。予算教書の記述は上書きされたことになり、現在有効な法である2026年度歳出法にもとづいてGMTに続きTMTも最終設計段階に進める命令がNSFに出されました。
一方、2026年4月3日に発表された2027年度NSF予算教書において、NSF全体の要求額は2026年度予算(88億ドル)から約55%減となる39億ドルという厳しい内容となっています。米国の超大型望遠鏡(ELT)プログラムについては、NSFが主要施設としての最終設計段階に進めるプロジェクトとしてGMTを選定したとの記述にとどまっています。
https://www.nsf.gov/about/budget/fy2027
予算教書は、連邦議会が歳出法案を作成する際の参考資料との位置づけであり、議会は自ら作成した歳出法案を可決し、大統領の署名を得ることで歳出法を成立させます。昨年度予算と同様に、今後の連邦議会の動向を注視しながら、TIOは引きつづき米国関係者への働きかけを行なっています。TMTという世界最高水準の望遠鏡建設が我が国の科学技術の進展に極めて多くの貢献をもたらす重要な計画であることも踏まえ、皆様からもご支援いただきますようお願い申し上げます。
(2) ハワイの動き
ハワイ島郡長をはじめ州知事、ハワイ州選出の連邦議会上院・下院議員等から、TMTは引き続き強い支持を受けています。前号でご報告したように、TMTのマウナケアでの建設地を開発済用地(望遠鏡撤去跡地)に変更する可能性を検討しており、それに必要な手続きがハワイ関係者の間で検討されています。 TIO・国立天文台はハワイ関係者と引きつづき協議しています。
マウナケア管理組織(MKSOA)は2026年1月から2月にかけ、ハワイ州の5島10か所でコミュニティワークショップを開催し、マウナケア管理に関する住民の意見を聴く機会をもちました(https://kuaowakea.org)。ハワイ島ヒロで開催されたワークショップには国立天文台関係者も参加しました。ワークショップには合わせて約1,500人の参加があり、マウナケアでの天文学に賛成の方、反対の方が一緒に話し合う場でも平和的に議論が行なわれました。
(3) スペインからの提案の検討
2025年7月にスペイン科学・イノベーション・大学省大臣が発表した、カナリア諸島ラパルマ島へのTMT誘致に向けた提案の検討が続けられています。スペインからの提案では、スペイン産業技術開発センター(CDTI)からの最大4億ユーロの出資に加え、ヨーロッパ投資銀行(EIB)から融資を受けるという内容となっています。
TIOはカナリア天体物理研究所(IAC)と毎週、CDTI、EIBとは2週間毎に会合をもっています。EIBの融資は将来、望遠鏡観測時間の販売により返済する計画(CDTIも資金回収を行う計画)であり、TMTの観測時間の需要調査を含めた全体資金計画の検討が進められています。TIO評議員会下に設置されたワーキンググループでは、隔週の会合において、最新の情報について把握し、議論を行なっています。3月16日にはスペイン科学省、CDTI、IACの関係者からなる代表団が自然科学研究機構本部等を訪問し、川合機構長や土居国立天文台長と情報共有と意見交換が行われました。
