WFOSが概念設計審査会に合格
WFOS(Wide Field Optical Spectrometer;広視野可視撮像分光器)は、TMTの運用開始時期から使用される第一期観測装置の一つで、可視光での撮像と分光の機能を持っています。WFOSはアメリカ、日本、中国、インドの国際共同開発で進められています。国立天文台は2010年にWFOS開発に加わって以来、直径40cm程度の非常に大きなカメラレンズシステムの検討やイメージスライサー(注1)と呼ばれる特殊な光学素子を用いた観測モードの検討などを行ってきました。2019年からは多天体分光に用いるスリットマスクを交換する機構やスリットマスク製造設備(注2)、将来計画として考えられている面分光ユニットの検討を行いました。
2022年2月9、10日(日本時間)にWFOSの概念設計審査会が行われ、国立天文台からは、上記の開発や検討事項について報告しました。審査会は新型コロナウイルス感染症のためにオンライン開催となり、参加者が世界各地に散らばっているので、日本では深夜(午前3時)からの開催となってしまいました。審査の結果、大きな問題は見つからずに合格することができました。
思い起こせば、国立天文台がWFOSに参加した2010年には既に概念設計段階に入っていました。装置コンセプトの見直しや中心開発メンバーの交代など色々ありましたが、12年目にしてようやく概念設計段階を終えることができました。WFOSは4月から次の基礎設計段階へ進みます。
(注1) イメージスライサーは、分光の時に天体の光を失うことなく、かつ、高い波長分解能を得るための特殊な光学素子です。イメージスライサーの概念については、2018年のTMTブログをご覧ください。
(注2) スリットマスクは、多天体分光で使用する薄い金属板です。目的の天体の光だけが装置に入るように、スリットマスクには複数の天体の位置に合わせた細長い穴(スリット)が開けられています。