日本地球惑星科学連合 2026年大会

2026年5月、千葉市・幕張メッセで開催された「日本地球惑星科学連合(JpGU)2026年大会」に出展しました。

今年の大会は、日本地球惑星科学連合(JpGU)とアメリカ地球物理学連合(AGU)のジョイント大会として開催され、地球や惑星、宇宙に関わるさまざまな分野の研究者や技術者、教育関係者、科学コミュニケータ、学生などが世界中から集まりました。研究成果の発表だけでなく、分野や国境を越えた交流の場としても大変活気にあふれていました。

国立天文台は、今年もTMTプロジェクトとアルマプロジェクトによる合同ブースを出展しました。どちらも国際協力によって進められている世界最先端の天文観測プロジェクトですが、観測する波長帯が異なります。例えば、アルマ望遠鏡は電波を用いて、惑星が生まれる現場である原始惑星系円盤を詳細に捉えることができます。一方、TMTでは可視光や赤外線を用いて、その中で形成された惑星そのものの姿を観測できるようになります。

ブースでは、それぞれの望遠鏡がどのような役割を担い、どのように互いを補いながら宇宙の謎に迫っているのかを紹介しました。来場者の皆さんからは多くの質問が寄せられ、巨大望遠鏡によって広がる天文学のフロンティアに興味を持っていただくことができました。

また、ブースには多くの高校生や大学学部生が訪れました。国立天文台が総合研究大学院大学の教育研究機関の一つであることを紹介すると、「大学院で天文学を学ぶ」という進路に関心を示してくださる方も多く見られました。

こうした学会での出会いは、研究成果を伝えるだけでなく、未来の研究者たちとつながる貴重な機会でもあります。今回ブースを訪れてくれた学生の中から、いつの日か、すばる望遠鏡やTMTを使って宇宙を観測する研究者が生まれるかもしれません。そんな未来を想像しながら、多くの方々との交流を楽しんだ6日間となりました。

OPIE 宇宙・天文光学EXPO 2026

2026年4月22日から24日にかけて、パシフィコ横浜で開催されたOPIE 2026(OPTICS & PHOTONICS International Exhibition)に、国立天文台のブースを出展しました。OPIEは、光学・フォトニクス分野の最先端技術が集まる展示会で、会場には研究者や技術者、企業関係者など、多くの来場者が訪れました。

今回の国立天文台ブースでは、TMTプロジェクトの展示に加え、先端技術センター、産業連携室、スペースイノベーションセンター、自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターの取り組みを紹介しました。

TMTプロジェクトのコーナーでは、パネルや分割鏡加工の試作品などを展示して、計画の最新状況や、TMTで期待される科学成果について紹介しました。来場者からは、「TMTのような超大型望遠鏡によって、どのようなことが明らかになるのか」、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のような宇宙望遠鏡とはどのように役割が異なるのか」といった質問も寄せられ、次世代望遠鏡への関心の高さが感じられました。

先端技術センター、産業連携室、スペースイノベーションセンターの展示(手前)とアストロバイオロジーセンターの展示(左奥)

アストロバイオロジーセンターの展示では、太陽系外惑星や宇宙における生命の兆候に関する研究、観測装置の開発についてポスターで紹介しました。また、産業連携室では、補償光学技術を応用した顕微鏡のデモンストレーションを実施し、タマネギの皮を使って生きたままの細胞を観察する様子を紹介しました。天文学のために培われた技術が、顕微鏡観察など異なる分野にも応用できることに、多くの方が興味を示してくださいました。

さらに、観測装置や機器開発についても質問が多く寄せられ、「国立天文台ではどのような装置を開発しているのか」、「電波望遠鏡など他の波長の望遠鏡にも関わっているのか」といった技術面への関心も印象的でした。研究成果だけでなく、それを支える技術開発にも注目していただけたことは、私たちにとっても大きな励みとなりました。

展示会3日目の4月24日午前には、特別セミナー「国立天文台を活用する研究者が語る天文コース」が開催されました。今年は太陽系外惑星をテーマに、国立天文台とアストロバイオロジーセンターの研究者が、太陽系外惑星の最新研究成果と将来の宇宙生命探査の可能性などについて講演しました。TMTプロジェクトからは、寺田が「超大型望遠鏡TMTで迫る太陽系外惑星の姿」と題した講演を行いました。TMTの登場によって、系外惑星研究が「発見」の段階から、「大気の精密な化学分析」を行う時代へ進もうとしているという話は、未来の天文学を感じさせる内容でした。

特別セミナー「国立天文台を活用する研究者が語る天文コース」の様子

毎年国立天文台ブースを訪れてくださる方もいらっしゃり、「今年も楽しみに来ました」、「TMTを応援しています」といった温かい言葉もいただきました。継続して展示を行っていることで、少しずつ活動を知っていただき、応援してくださる方々とのつながりが広がっていることを実感しました。

国立天文台ブースにお立ち寄りいただいた皆さま、ありがとうございました。今回の展示を通して、宇宙を探る研究の面白さだけでなく、その背景を支える技術や人々の取り組みにも興味を持っていただけていれば嬉しく思います。

 

にじいろ宇宙探検! ― 多摩市関戸公民館で講演とワークショップ

2026年3月7日、多摩市関戸公民館で講演会とワークショップ「にじいろ宇宙探検!~光で探る 星と宇宙のひみつ~」が開催され、国立天文台ハワイ観測所の松元理沙が講師を務めました。小学生から大人まで約30名が参加し、満席となる盛況ぶりでした。

CD分光器をつくるワークショップ。会場内の照明やスタンドライトを観察し、スペクトルの違いを確かめました。(クレジット:多摩市関戸公民館)

講演では、すばる望遠鏡の観測から、天文学者がどのように宇宙の謎に迫っているのかを紹介。天体画像や宇宙ビューワー「Mitaka」を用いた体験を通して、宇宙のスケールを実感してもらいました。また、すばる望遠鏡の観測装置「オーノヒウラ PFS」にも触れ、「光を分けて調べる」分光観測によって、星や銀河の性質、宇宙の進化が解き明かされていることを解説しました。こうした研究の発展は、次世代の超大型望遠鏡TMTへとつながっていきます。

続くワークショップでは、CDを使った分光器を制作し、身近な光を観察。講演内容と結びつけながら、分光の仕組みを体験的に学んでもらいました。

スペクトルランプ(水素、ナトリウム)を観察している様子。光源に含まれる元素によって見える虹の色が変わります。(クレジット:多摩市関戸公民館)

会場には、親子連れや天文学に興味のあるご夫婦など、幅広い年代の方々が集まりました。参加者の半数以上が、月や星を望遠鏡で見たことや、天文台・プラネタリウムを訪れたことがあり、宇宙への関心の高さが印象的でした。

参加者からは「簡単に作れて、子どもでもスムーズに観察できて良かった」、「このようなことがわかる研究を知ることができてよかった」などの感想が寄せられました。

講師の松元は「身近な分光観察を通して、すばる望遠鏡がどんな宇宙の謎を解き明かしているのか?そして、TMTのような超大型望遠鏡により、どのようなことがわかるようになるのか?少しでも、興味を持ってもらえたら嬉しい」と語ります。

また、講演後にも、すばる望遠鏡や国立天文台三鷹キャンパスの見学についてなど、さまざまな質問をいただきました。国立天文台三鷹キャンパスは、年末年始を除き、毎日午前10時から午後5時まで、どなたでも自由に見学できます(入場無料)。展示室では、TMTの模型や主鏡の実物展示もご覧いただけますので、ぜひお気軽にお越しください。

国立天文台三鷹キャンパス 展示室でのTMT主鏡・模型展示の様子(クレジット:国立天文台)

 

IRISの第1回最終設計審査会が無事に完了

TMTの第一期観測装置 IRISは、近赤外線でこれまでにない高精細な撮像と分光観測を実現する装置です。2025年12月に初回の最終設計審査会(FDR-1)が開催され、これまで行われてきた設計、試作、解析などが国際的な審査委員会によって評価されました。

審査会に参加したIRIS関係者と審査員。国立天文台からは、鈴木、清水、田中、東谷、大渕、小俣、平田、池之上が開発チームとして参加したほか、ハワイ観測所の田村が審査員として参加しました。審査会はカリフォルニア州パサデナのTMT国際天文台オフィスとオンライン(Zoom)を併用して、2025年12月8日~9日(パサデナ現地時)に開催されました。(クレジット:TMT国際天文台)

IRISの完成予想イメージ。円筒形の容器がIRISのクライオスタット(赤外線観測に必要な超低温環境を保つための真空冷却容器)で、支持機構(黒い棒状の構造)を介して、TMTの補償光学系NFIRAOS(青色の構造)に取り付けられています。補償光学と組み合わせることで、IRISはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の約5倍に相当する高い空間分解能を実現します。(クレジット:TMT国際天文台)

IRISでは、0.84~2.4マイクロメートルの波長域で、撮像観測と面分光観測ができます。太陽系天体や系外惑星の研究から、銀河系中心の超巨大ブラックホールのまわりを回る星々の精密観測、さらには初期宇宙の銀河を細かく分解して調べる分光観測まで、幅広い分野での活躍が期待されています。

IRISクライオスタットの断面図。クライオスタットの上部に撮像システム、下部に面分光システムが組み込まれています。(クレジット:TMT国際天文台)

IRISの面分光システムで遠方の銀河を観測した場合のシミュレーション。銀河を細かく区切り、最大1万か所のスペクトルを同時に取得できます。これにより銀河の運動構造(右パネル)や、場所ごとの星生成率や元素の量などを詳しく調べることができます。(クレジット:UCSD OIRLab)

IRISは国際協力のもとで開発が進められています。国立天文台、TMT国際天文台、カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学、カナダ国立研究機構などから30名以上の研究者・技術者が参加しています。

今回の審査会で、審査委員会は、TMTと補償光学の性能を最大限に引き出す装置を開発してきたIRISチームの取り組みを高く評価しました。限られた予算や計画の遅れといった制約がある中でも、チームが長年にわたり工夫を重ね、装置の実現性を着実に高めてきた点が、特に評価されています。

また審査委員会は、
(1)検出器の供給状況の変化に迅速に対応し、新しい検出器に合わせて装置の設計を見直したこと、
(2)複雑な装置が、必要な機能と性能を確実に提供できるようにシステムズエンジニアリングの手法を強化したこと、
(3)最新の解析手法を使って装置が期待どおりの性能を発揮できることを検証したこと、
の3点で大きな進展があったと評価しました。これらの成果には国立天文台(TMTプロジェクトと先端技術センター)の研究者・技術者が大きく貢献しています。

IRISチームのシステムズエンジニアリングと撮像システムのマネージャを担当する鈴木竜二 准教授(国立天文台TMTプロジェクト)は、「今回、観測装置の主要開発部分である光学系と機械系について最終設計審査を通過できたことは、IRISの実現(製造)に向けた大きな一歩です。先端技術センターとTMTプロジェクトが力を合わせてこれまで積み上げてきた技術の蓄積が評価されたことを嬉しく思います」と述べています。

IRIS FDR-1 における国立天文台の貢献については、先端技術センターの記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。


参考:
TMT IRIS FDR-1 Successfully Completed(TMT国際天文台)