TMTリーダー育成のための国際研修会

TMTの将来を担う若手研究者・技術者向けの国際研修会がハワイ島ヒロで開催され、TMTパートナー各国から約40名の大学院生と若手研究者が参加しました。この研修会では、TMT計画での研究や開発に参加するために有用な情報や専門知識を得るだけでなく、多様な文化的背景を持つ人々が協力して一つの巨大望遠鏡計画を成功させるためには何が必要なのかということについて、参加者それぞれが考え実践する機会になるように、さまざまなプログラムが準備されました。

第一回となったこの国際研修会は、2016年12月5日-7日に行われました。(TMT国際天文台提供)

参加者は、3日間のプログラムを通して、国際協力による大型計画に必要な管理・運営手法、観測装置・ソフトウェア開発などをTMTスタッフから学ぶと共に、すばる、Keck、Gemini、CFHTといったマウナケアの天文台を訪問して、現地の科学者やエンジニアと交流しました。また、ハワイの天文学の歴史とマウナケアの文化について学ぶ機会も設けられました。

研修会に参加した、内山瑞穂 国立天文台・特任研究員からは次の感想がよせられました:「研修会ではプロジェクト管理や、システムエンジニアリングなど国際大型望遠鏡計画を進める上で重要な内容を多く学びました。特に、TMTパートナー各国のモノ作り環境などのバックグラウンドの違いや、TMT望遠鏡設計におけるシステムエンジニアリングの具体例についての話がとても興味深かったです。また、参加者同士でグループを作って共同作業を行なう機会が多く設けられ、多様なパートナー国の参加者からなるグループで一つの作業を進めていく体験を実際に持つことができました。このような大学院生や若手研究者向けのワークショップが今後も継続的に開催されればと期待しております。」

参加者同士の議論の様子。TMTの将来装置についての講義を受けた後に、自分たちで将来装置のアイデアを出し合います。(TMT国際天文台提供)

この研修会は、TMTにおける教育・人材育成・広報普及を検討している国際チームによって立案されました(2016年の記事などを参照)。このチームでは、今後も研修会を継続していくとともに、TMTのパートナー国の間でのインターンシップなどで若手研究者・技術者の交流をはかっていくことを検討しています。

四天王寺学園中学校で「ふれあい天文学」

12月15日、大阪府の四天王寺学園中学校にて、TMT推進室の家がふれあい天文学授業を行い、全校生徒156名を前に、TMT計画とそのサイエンスについてお話ししました。

同校は近鉄バッファローズの元のホームグラウンドである藤井寺球場跡地に3年前に新キャンパスを開設し、来春開設する高校を含めると小学生から大学生まで1500名規模での教育を目指し、整備中です。新たに開設される高等学校では「宇宙教育」を掲げたユニークな教育プログラムを展開する予定で、屋上には51cmの望遠鏡MIROKUがあり、生徒が自主的な活動をされているとのことでした。

Particle Physics 2016

12月9日、テキサス州ダラスのホテルで開催されたParticle Physics 2016という宇宙線、素粒子関係の研究会に基調講演者としてTMT推進室の家が招待を受け、「TMTによる観測的宇宙論」と題して、宇宙再電離の研究の現状と展望などを講演してきました。

主催者から打診を受けたときには、馴染みのない研究会で少し迷ったのですが、組織委員に存じ上げる方もいらっしゃるのでお引き受けしました。日本からの参加者は、理化学研究所の戎崎さんが超大質量ブラックホールの降着円盤からの相対論的ジェットによる超高エネルギー宇宙線の加速について講演されました。

前日8日夜のダラス空港は氷点下で、夏のイメージが強いテキサス州にも冬があるのだと驚きました。picture

TMT第一期観測装置 IRISの基本設計審査会

TMTの第一期観測装置の一つであるIRIS(InfraRed Imaging Spectrograph、近赤外線撮像分光装置)の基本設計審査会 第一弾(Preliminary Design Review 1, PDR-1)が11月17日、18日に、パサデナのTMT国際天文台(TIO)オフィスで開催され、無事に審査を通過しました。TIOのシステムエンジニアに加え、ヨーロッパの超巨大望遠鏡計画の装置開発担当者を外部審査員として迎え、まさに装置の専門家の目による審査が実施されました。パサデナのTIOオフィスの一番大きな会議室は参加者でほぼ埋まりました。iris_member_photo_w

TIOが定める審査会の執り行い方は、すばる望遠鏡などで経験してきた審査とはずいぶん違いました。まず、審査会当日から遡ること1ヶ月ほど前に、審査に必要な膨大な量の文書を完成させて、審査員に送ります。(IRISリーダーのJames Larkinは1000ページを超えると言っており、確かに細かい技術的レポートを含めるとそのくらいになったかもしれません。) そのため、定時勤務が普通であるアメリカ・カナダの皆さんも、この時ばかりは、昼夜を問わず、審査会の準備に追われることになります。審査員も送られた大量の書類を読み、200を超える事前質問を出してきました。その爆発的な集中力は目を見張るものがありました。

審査会の進め方も新鮮でした。審査・評価というと、失敗、失点ばかりが追及されるというイメージがあるかもしれません。もちろん、審査はそれをはっきりさせることがもっとも重要なことというのは確かです。ところが、審査会の最初にあった審査員長の言葉には感銘を受けました。審査会が開催されたことを評価し、それをアレンジした担当者に感謝し、審査内容を用意した開発メンバーに一定の評価とねぎらいをしました。もちろん完璧な内容は用意できませんでしたので、あいまいであったり、検討が足りない部分には鋭いコメントや質問が集中しました。ただ、批判的な責任追及ではなく、客観的な厳しい指摘でした。

IRISの撮像系を担当する国立天文台からは総勢6名が審査会に参加しました。いつもはネット会議越しでしか会話をしない人たちと、面と向かって会えることの重要性を参加者全員が感じたはずです。審査会の合間のコーヒーブレークでは、日本からの参加者も加わり、たくさんの雑談的情報交換や議論が交わされました。

審査会終了直後はサンクスギビングで一時小休止。12月8日に正式に提出される審査員からのコメントを受け止めて、基本設計審査会 第二弾(PDR-2)の通過にむけてIRISチームは動き始めます。

国立天文台IRIS開発チームはIRISチームと連携をとりながら、PDR-2と、それに続く詳細設計フェーズや製造を見据えたプロトタイプ開発、技術検討を進めていくことになります。

PDR-1を無事に通過したことを報告する Niranjan Thatte 審査員長(オックスフォード大学教授で、E-ELTの第一期観測装置 HARMONIの開発責任者でもある)。今回 審査員から指摘された課題・問題点を解決してPDR-2を合格すると、次の詳細設計期に入ります。 国立天文台IRIS開発チームについては、<a href="http://www.nao.ac.jp/contents/naoj-news/data/nao_news_0265.pdf">国立天文台ニュース2015年8月号</a>でも紹介されていますのでぜひご覧ください。

PDR-1を無事に通過したことを報告する Niranjan Thatte 審査員長(オックスフォード大学教授で、E-ELTの第一期観測装置 HARMONIの開発責任者でもある)。今回 審査員から指摘された課題・問題点を解決してPDR-2を合格すると、次の詳細設計期に入ります。 国立天文台IRIS開発チームについては、国立天文台ニュース2015年8月号でも紹介されていますのでぜひご覧ください。