日本地球惑星科学連合 2023年大会

5月21日(日)~5月26日(金)にかけて、幕張メッセで日本地球惑星科学連合(JpGU)2023年大会が開催されました。

JpGUは地球惑星科学関連の学協議会51が参加し、会員数約1万人の大規模な組織です。年に1度の学術大会は、昨年に引き続き、今回もオンラインと現地会場のハイブリッド形式の開催となりました。国立天文台のブースでは、TMTプロジェクトとアルマ望遠鏡の紹介を行いました。

TMTでは観測装置の説明や、可視光と赤外線でどのような宇宙が見られるか、口径30メートルで得られる圧倒的な解像度を活用してどのように宇宙の謎に迫るか、など今後のTMTの活用について解説しました。

アルマ望遠鏡は今年が運用開始10年ということで、これまでのアルマ望遠鏡での観測成果や、アルマ望遠鏡の電波観測とTMTなどの他波長のデータと組み合わせることで分かることなどを解説していました。

今年は大ホール全体が、一般展示、ポスター、セッション会場に使用され、昨年を大きく上回る来場者数になったそうです。ポスター発表も賑やかで、多くの学生がブースを訪れてくださいました。また、今年は海外からの方も多く、興味を持って声をかけていただきました。

ブースを訪れた多くの方々から、それぞれの望遠鏡について直接に質問をいただくことができて嬉しかったです。来年の展示会でもお会いできることを楽しみにしております。

今年の8月には、国際天文学連合が主催する国際会議(APRIM2023)が、ビッグパレットふくしまで開催予定となっており、国立天文台からも展示ブースを出展します。一般向けのイベントとしては、講演会が郡山市ふれあい科学館 スペースパークにて開催されるそうです。

宇宙・天文光学EXPO 2023

4/19(水)~4/21(金)に、パシフィコ横浜で OPIE 宇宙・天文光学EXPOが開催されました。来場者は昨年を大きく上回り、3日間で13000人以上の方にご来場いただきました。今年は海外出展ブースも増えており、海外からの来場者も見受けられました。

国立天文台のブースでは、TMTに加えて、水沢VLBI観測所と重力波プロジェクト推進室のブラックホール研究の紹介、そして、宇宙と社会をつなぐ産業連携室の取り組みについて展示を行いました。

4/21(金)には、「国立天文台を活用する研究者が語る天文コース」の講演が行われ、TMTに関連した話題としては、「TMTが切り拓く超巨大ブラックホール研究の最前線」というテーマで、国立天文台 アルマプロジェクトの泉拓磨助教がお話しました。

先の時間に講演した、東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社 田崎文得さん「 EHTで撮影したブラックホール・シャドウ」、国立天文台 重力波プロジェクト 麻生洋一准教授「先端光学計測技術で探る光では見えない宇宙の姿: 重力波天文学」のお二方のテーマに関連し、ブラックホールと銀河の「共進化」について解説し、広域探査能力に優れた「すばる望遠鏡」と、遠方宇宙の銀河観測に威力を発揮する「アルマ望遠鏡」の連携により観測された、初期宇宙での銀河合体や銀河風などの観測成果を紹介していました。さらに、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」(JWST)の観測も組み合わせることで、史上初の初期宇宙ブラックホールの母銀河の直接検出に成功した観測成果を紹介し、銀河構造やブラックホール質量の測定など、今後の研究について語りました。

現状のJWSTの解像度では、初期宇宙にある銀河の構造までを調べることはできず、こうした研究成果を深堀りするために、「高感度・高解像度」が特徴であるTMTが必要とされています。今後、JWSTの約5倍という圧倒的な解像度を持つTMTが他の望遠鏡とも連携しながら観測を行うことで、私たちの宇宙への理解を深める、革新的な成果が得られると期待されています。

昨年と同様、講演は対面形式で行われ、皆さん関心が強く、質問もあがっていました。

昨年と同様、講演は対面形式で行われました。皆さん関心が強く、質問もあがっていました。

ご来場くださった皆様、ありがとうございました。イベントを通じ、多くの方々と交流できたことを幸せに思います。

5/21(日)からは 日本地球惑星科学連合2023年大会 (幕張メッセ)に出展しますので、こちらのブースにも立ち寄っていただければありがたいです。

ブースでは、TMT展示模型(左)に足を止めてくださったり、重力波望遠鏡を説明するためのマイケルソン干渉計の展示(右)で質問してくださる方もいました。

ブースでは、TMT模型(左)に足を止めてくださったり、重力波望遠鏡を説明するためのマイケルソン干渉計の展示(右)で質問してくださる方もいました。

東北大学の公開サイエンス講座ですばる望遠鏡とTMTを紹介

TMTの科学諮問委員長としても活躍されている、東北大学の秋山正幸教授から、公開講座の報告をいただきましたので、以下にご紹介いたします。

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3月5日に仙台市天文台と東北大学大学院理学研究科で行っている公開サイエンス講座にて「ハワイの山から宇宙を観れば」というタイトルで講演を行いました。久しぶりに対面での講演会となり、小学生から大学生、子連れの方から年配の方まで56名の方々に参加してもらうことができました。大変感謝しています。

ハワイ島・ヒロの町から見たマウナケアの様子を説明しているところ。(クレジット:東北大学)

マウナケアでの観測を体感してもらおうと、昨年11月にすばる望遠鏡での実験作業の道すがら撮った山の上にいたる道中の動画など交えながら、山の上から観測や測定をおこなう意義について説明しました。すばる望遠鏡やマウナケアの望遠鏡を用いた成果として、系外惑星の直接撮像や銀河系中心超巨大ブラックホールの観測、私の専門分野であるすばる望遠鏡による宇宙初期のクェーサー探査や補償光学系の開発について紹介しました。最後に将来にTMTを用いるとさらに何が見えてくるのか、という展望を説明しました。

大学の広報担当者とVRツアーの準備中です。このあと、みなさんに楽しんでいただきました。(クレジット:東北大学)

大学の広報担当者とVRツアーの準備中です。このあと、みなさんに楽しんでいただきました。(クレジット:東北大学)

講演での質疑やそのあとの時間では、とても多くの質問と感想をいただきました。地面のある地球のような惑星を探すとか、宇宙で最初に生まれたブラックホールを探すとか、TMTへの大きな期待が感じられました。すばる望遠鏡が立ち上がるころに海部先生の講演を聞いて興味を持っていたので、今回の案内を見て聞きにきました、という方もおられて驚きました。TMT実現にあたっては現地の方々の伝統や精神を尊重して進めてほしい、という真剣なご意見もいただき、対面で多くの方と話をするとても良い機会となりました。

講演会のあとにはすばる望遠鏡の大きさを実感してもらおうと、VRゴーグルを用いて国立天文台から公開されているバーチャルツアーを体験する時間を設けました。仙台市天文台にも1.3mひとみ望遠鏡がありますが、それと比べてすばる望遠鏡の大きさをみなさん実感されて驚かれていました。すばる望遠鏡とTMTの間にも同じくらいの大きさの違いがあります。TMTの大きさにどのくらい驚かされることになるのか、楽しみです。

仙台市天文台の先代の望遠鏡です。(クレジット:東北大学)

 

赤外線分光器 MODHISが 概念設計審査の第一段階を通過

TMTの第一期観測装置の1つである MODHIS(多目的回折限界近赤外高分散分光器)は、生命の兆候を示す地球型系外惑星の発見などを目的として開発が進められています。2022年8月に最初の概念設計中間審査会が開催され、約30名の技術者や科学者がオンライン上に集まり、進捗を評価しました。

8月12日にオンラインで行われた審査会の画面。カリフォルニア大学(ロサンゼルス校、サンディエゴ校)、カリフォルニア工科大学、NASAジェット推進研究所、TMT国際天文台から30名近い技術者や科学者が参加しました。国立天文台からは、MODHISのプロジェクトマネージャーを務める寺田が参加しました。(クレジット:TMT国際天文台)

今後数十年間の科学的な最優先事項の1つは、太陽系以外の惑星系を探査し、生命の存在可能性を判断することです。MODHIS は、系外惑星の組成や物理的特性を調べながら、そのスペクトルの中に生命の存在を示す微妙なバイオシグナチャーを探すことができる強力な装置となる予定です。MODHISが実現する科学目的の検討には、東大、アストロバイオロジーセンター、東工大、宮城教育大、国立天文台など、日本の研究者も大きく貢献しています。装置開発においても、すばる望遠鏡の赤外線分光器(IRD)の技術を取り入れることが検討されるなど、アストロバイオロジーセンターを中心とする日本の研究者チームの寄与が期待されています。

MODHISは近赤外線波長域 0.98~2.46ミクロンで、高波長分解能(100,000以上)の分光観測を実現します。補償光学を使用して、回折限界に達したシャープな天体の光を無駄なくファイバーに導入し、望遠鏡下部に設置された分光器へ送ることによって、熱や振動の影響を受けずに安定して高精度の観測を行う事ができます。

MODHISサブシステムの配置図。サポート構造/ローテータ/装置波面センサ (SRO) とフロントエンド装置 (FEI) は、補償光学系(NFIRAOS)の上部に配置されます。ファイバー伝送系(FIB)は、天体の光を分光器(SPEC)へ導きます。SPECと較正装置(CAL)は、望遠鏡架台の設置階への配置が検討されています。 (クレジット:TMT国際天文台)

SROとFEIの概念図。SROは補償光学系との接合部、FEIはファイバー伝送系への中継部になります。MODHISは、すばる望遠鏡やパロマー望遠鏡、ケック望遠鏡の観測装置で実証済みの技術を多く採用して開発要素を抑えている一方、補償光学系とのインターフェース設計はTMT固有に行う必要があり、まだ初期検討の段階にあります。初回の審査会では、主にこの部分に焦点をあてて、装置性能実現性や開発リスクの他、安定性、信頼性、使いやすさなどの運用面が評価されました。(クレジット:TMT国際天文台)

分光器(SPEC)の概念図。SPECは、青 (波長 0.98-1.33 ミクロン) と赤 (波長 1.49-2.46 ミクロン) の2つの分光器から構成されています。SPECと較正器(CAL)は、望遠鏡から離れた場所に設置して、振動や熱の影響を回避します。SPECでは可動部を最小限にし、さらに、システム全体で起こりうるあらゆる変化をCALで較正することで、測定の高い安定性と再現性を保証します。(クレジット:TMT国際天文台)

TMTの観測装置グループリーダーであるデイビッド・アンダースン氏は、「多くの作業をこなし、MODHISの最初の詳細な外観を提供した装置チームと、MODHISをより良い装置にするために時間を割いてくださった審査員の方々に感謝します。MODHISは、特にハビタブルゾーンにある太陽系外惑星の特性評価に、これまでにない能力を発揮することになるでしょう」と述べています。

プロジェクトマネージャーの寺田は、「MODHIS概念設計を始動し、初回の中間審査を終えたことは装置開発にとって大きな第一歩となりました。この審査で得られた多数の貴重な示唆を生かして、今後も間断なくMODHIS開発を進めていきます。MODHISが目標に掲げる系外惑星探求の分野は、科学の進展が目覚ましく、また、技術も急速に発展しています。その中で日本の天文コミュニティが果たしてきた役割は極めて重要であり、MODHIS開発においても大きな貢献を期待しております」と述べています。


参考:MODHIS Completes First Phase of Conceptual Design Review (TMT国際天文台)