日本語補習校と天文のお話会

晴れたら三日月が見えるはずの2022年2月5日土曜日夕方。米国インディアナ州にあるブルーミ ントン日本語補習校を中心として同じ州やミネソタ州にいる小中学生と、カリフォルニア州にいる林がお話をする機会がありました。この日、ブルーミントンはあいにくの曇り空、しかも その週は雪のため学校が何日か休校になったとのことでした。

始めに、国際宇宙ステーションや月、火星などの天体までの距離を地球の大きさと比べてみま した。月までは地球30個分、火星までは4000-8000個分にもなる。一方、遠いかなと思ってい た国際宇宙ステーションまでは、距離だけでいえばブルーミントンからちょいと車で日帰り旅行ができる範囲になります。

日本と米国インディアナ州付近の比較。ブルーミントンは丸印で示された場所に位置します。

お話会で用いたスライド。

米国を中心に、月滞在をするアルテミス計画が今年始まろうとしています。事前のアンケートで、地球以外に行ってみたいところとして月や火星に人気があったのですが、これが本当に実現するかもしれない。自分が本当に行けるかもしれない。月の岩石に水分が含まれているのであれば、そこから酸素を作ることも可能なのでは?日本語補習校の授業で、月の勉強とともに、月に関する昔話や和歌、月にちなむ食べ物や宇宙食の工夫についても調べていると いうことでした。

次にハワイ島マウナロアで⾏われた火星滞在訓練などを参考に、自分たちが宇宙探検する場合のことを色々考えてみました。探査計画を練ることに加え、チームワークや生活も工夫しなければならない。さらに遠く、系外惑星の環境はどうだろう?そこに人間が行って住むことができるだろうか。ハビタブルゾーンにある惑星がけっこう⾒つかってきているから、そういうところにはすでに生き物がいたりするかもしれない。岩石型で大きさや温度が地球と似ているらしい惑星 ケプラー452bに⾏ってみたい生徒さんもいました。

宇宙探検に持っていく大事なものとして宇宙服、水、空気、食べ物とともに、救急箱と工具。 確かにヒトも機械も、そのときその場でできるだけ修理しなければならないです。アルテミス計画、今ローバーが集めている岩石サンプルを10年ぐらい後に回収に行く計画、TMTで地球に似た惑星を探すことなど、どんどん会話が弾みました。次に月を見上げるときには、自分がそこから探検隊を率いてさらに遠くに行くことを想像してもらえるのではないでしょうか。

青梅市立吹上中学校で「ふれあい天文学」

国立天文台の職員が学校で出前授業を行う「ふれあい天文学」で、東京都青梅市の吹上中学校をプロジェクトの青木が訪問しました。授業を行ったのは特別支援学級の生徒さん12人で、宇宙をかたちづくる物質についてお話しし、私たち自身と宇宙のつながりを考えてもらいました。また、事前にアンケートをお願いし、関心をもっている宇宙の話題や知っている望遠鏡について全員から回答をもらいました。その際に出してもらった質問に授業で答える準備をしていたところ、授業中にもいくつも質問が出て、時間内に答えきれないくらいになりました。担当いただいた先生が事前準備に気をつかってくださったおかげか、生徒さんも硬くならずに授業の前後に自分に話しかけてくれたのが印象的でした。

授業では短時間ながら望遠鏡についてお話しし、TMTも紹介しました。理解を助けるために、ペーパークラフトを事前に送って組み立ててもらうことにしました。組み立てはかなり手間がかかるので難しいかな、と思っていましたが、送った2つともきれいに出来上がっていました(写真)。伺ったところ、2人の生徒さんが器用さと集中力を発揮してくれたとのこと。自分たちの手で触れてもらうことで、望遠鏡の構造や動きを直観的にわかってもらうのにも役立てばよかったかな、と思います。

吹上中学校は、春から初夏には特に多くの観光客が訪れる塩船観音寺や吹上しょうぶ公園の近くです。青木の自宅から近いこともあって馴染の場所でした。今回、「ふれあい天文学」に応募いただき、講師にとっても楽しい訪問となりました。

 

(写真提供:青梅市立吹上中学校)

ふれあい天文学で「遠くの地元」学校と交流 (3)サンフランシスコ⽇本語補習校

ふれあい天文学「遠くの地元」学校シリーズ2021年の最後の交流は、またカリフォルニア州に戻ってサンフランシスコ日本語補習校。上弦のほぼ半月が見える日でした。12月20日の記事にも書きましたが、カリフォルニア州は南北に細長く広がり、サンフランシスコと林のいるパサデナの距離は、国際宇宙ステーションが真上を通るときの地面からの距離よりも遠くにあります。この補習校はサンフランシスコ校とサンノゼ校の2つを含み、かなり人数の多いところです。1校を除いてまだオンライン授業が続いているため、教室からの接続と家庭からの接続の混合になりました。小学生向け授業と中高生向け授業に分けたのですが、それでも多数の接続があり、TMT主鏡分割鏡の数に匹敵する接続数でした。そのためプレゼンテーションファイルのページ送りをするさいに、動きがにぶくなることを初めて経験しました。事前打ち合わせで先生方からアドバイスをいただき、資料のページ数や画像サイズを調整していたのではありますが。

お話しで使用したスライドの一部。左は2022年に予定されている月周回軌道宇宙船の「乗組員」、右側の女性たちはアメリカの月滞在予定者。国際宇宙ステーション滞在(予定を含む)などにより着々と経験を積んでいます。男性の月滞在予定者も選ばれています。

サンフランシスコ近辺には、TMTの主鏡分割鏡の研磨工場や倉庫などがあり、林も何度かそのあたりに出張したことがあります。ここの生徒さんたちにとって、世界地図の中で自分たちの住む地域がTMTを作る上で大きな働きをしていることを知ったことが、より関心を持ってもらうきっかけになったでしょうか。

Apple Mapsより

事前に出してもらった質問には、星の進化に関するものや、太陽系内の天体への人間の移住の可能性に関するものがありました。次の望遠鏡計画は?という小学4年生からの質問には、質問した児童の世代がそれを作ることになるでしょうとお答えしました。このような交流は、小学生や中学生が、自分も天文や宇宙に関係のある仕事につくようになるかもしれないと考えてもらうきっかけとして大事であることを改めて認識しました。

ふれあい天文学で「遠くの地元」学校と交流 (2)秋⽥⼤学教育⽂化学部附属中学校

ふれあい天文学「遠くの地元」2つ目の学校は林が昔むかし住んでいた地域にある秋田大学教育文化学部附属中学校。3年生の4クラス全員がそれぞれの教室から参加してくれました。担当の先生が、夕方に部分月食のある日を選んでくれました。部分月食とはいえ、かなりの部分が地球の影に隠れるので、皆既月食に近く、影になるところの色がよくわかると予想されていました。

秋田県は自然も天然資源も豊かなところ。「黒鉱」と呼ばれる亜鉛、鉛、銅などを含む鉱物も生産していました。ではそうした金属はどこから来たのだろう?そもそもどうやって作られたのだろう?たくさんある温泉にはイオウがあることが多い。このイオウもどうやって作られたのだろう?

それぞれのクラスで6人ごとの班を作り、その班ごとに端末があるため、チャットボックスへの書き込みがたくさん入ってきました。

お話の最初のスライド(左)と、授業風景(右、秋田大学教育文化学部附属中学校提供)。班ごとに端末があります。

中学生になると元素の周期律表を見ているので、身近にある元素の起源が宇宙にある、しかも前の世代に作られた物質が次の世代を作るときに使われる立派なリサイクルがあることを考えてもらうことができました。

ちなみにこの学年の生徒さんの一部とは、2016年11月のふれあい天文学企画で秋田大学附属小学校4年生のクラスを訪問したときに出会っていました。お話の最初のスライドの左下にあるのはその時のスライドの1ページ目です。そのときはすばる望遠鏡の成果を中心にお話をしたのですが、その後、すばる望遠鏡について関心を持ち続けてくれている生徒さんもいました。今回の交流を通じて、自分がTMTや月滞在、火星探査に関わるかもしれないと実感するきっかけになったでしょうか。