マウナケアで外来植物の除去活動

12月11日土曜日に、マウナケア中腹の標高 2800mの施設(ハレポハク)周辺で外来の植物を取り除くボランティア活動がハワイ大学ヒロ校の Center for Maunakea Stewardship(CMS、マウナケアに関する管理計画を実施する機関)の呼びかけで行われました。ハレポハクは、マウナケア天文台群のスタッフが高地順応や宿泊・食事のために毎日利用する場所です。この周辺に生息する外来種を取り除くことで、マウナケア古来の自然環境を守ることにも繋がります。

国立天文台からはTMTプロジェクト長の臼田、ハワイ観測所の Julian Lozi と臼田-佐藤功美子が参加し、CMSの Greg Chun 所長、Nahua Guilloz 氏、ハワイ大学天文学研究所の Doug Simons 所長らと共に活動しました。

作業終了後にはハレポハクの図書室で、CMSの Wallace Ishibashi 氏によるマウナケアに関する最近の話題について説明と質疑応答がありました。

除草を行う臼田(左)と臼田-佐藤(右)。外来種かどうかは、CMSの自然資源担当者に教えてもらいます。

作業前(左)と作業後(右)の様子。黄色の花や真っ直ぐ伸びている植物(左側写真)は外来種。右側写真で残っている植物は在来種。CMSの担当者によると、約640キログラムの外来植物がこの日の作業で除去されたとのことです。

今冬は「Kona Low」と呼ばれる低気圧がハワイ諸島を通過して、数日間にわたって大雨と強風が続き、マウナケア山頂域では雪が積もりました。11日の日中は打って変わって穏やかな天候となり、草刈り日和でした。

府中市立中央図書館で最新天文学と望遠鏡を語る

11月14日、府中市立中央図書館にてTMTプロジェクトの青木が講演させていただきました。図書館が開催している講座で、TMTの講師派遣プログラムを通じて講演の機会をいただきました。

講演では、宇宙を調べるには天体からやってくる情報を調べるのが基本で、最近では光(電磁波)に加えてニュートリノや重力波が新たな発見をもたらしていることを説明し、重力波と光の観測をあわせることで元になった爆発について理解し、そこで作り出される物質を解き明かすことができることを紹介しました。また、急速に進展している太陽系外惑星の研究について、特に惑星の表面や大気を調べる研究に注目が集まっており、今後の新しい望遠鏡や装置の目標となっていることを解説しました。

そして最後に、これらの研究を前に進めるために地上の大型望遠鏡は必須であり、そのためにTMTの建設に取り組んでいることを紹介しました。

定員25人の事前申し込み企画であったためか、参加者はとても意欲的で、2時間の講座の間に多数の質問をいただきました。久しぶりに対面での講演で、やはりオンラインよりも参加者とのやりとりが深まるかな、と感じました。企画をされた府中市立中央図書館の方々が、感染対策も含めてとても丁寧に講座を準備されていたのも印象的でした。今後、こういう企画が少しずつ戻ってくることを期待します。

(写真提供:府中市立中央図書館)

こころね地球学校で「ふれあい天文学」

国立天文台の職員が学校を訪問して授業を行う「ふれあい天文学」。2020年度からはオンラインでの授業も増えていますが、11月4日に、TMTプロジェクトの岩田が千葉市にあるフリースクール「こころね地球学校」を訪問して授業を行いました。小学3年生から中学1年生の6人の子どもたちと、フリースクールを運営する大人の皆さんが参加してくださいました。

授業では、自己紹介のあと、夕方に見える明るい惑星の話から、国立天文台が開発しているソフトウェア Mitaka を使った、太陽系、銀河系、銀河の地図といった宇宙のスケールの話、太陽以外の星の周りをまわる惑星の話、ブラックホールの話など色々なトピックをお話しながら、岩田がなぜ天文学がおもしろいと思うかを語りかけました。宇宙はとても広く、直接星々をたずねることはむずかしいけれど、大きな鏡をもった望遠鏡を使うことで、わたしたちは星や銀河の様子をくわしく調べることができる。しかも、遠くの天体を調べることは昔の宇宙を調べることでもあるので、化石を使って昔の生物のすがたを知ることができるように、宇宙がどのような歴史をたどってきたのかを知ることができる。すばる望遠鏡やそれを上回る超大型望遠鏡 TMTによって、わたしたちの生きる宇宙のすがたとその歴史を調べることの面白さを伝えたいと思いました。

子どもたち手づくりの地球儀を使って惑星の見えかたを説明している様子 (写真提供:こころね地球学校)

子どもたちはリラックスして話を聞いてくれて、「宇宙人はいるの?」、「映画の『インターステラー』でブラックホールの近くで何がおこったのか?」など、色々な質問もしてくれて、楽しく授業をすることができました。これをきっかけに宇宙への興味がさらに深まったならうれしく思います。

TMTの副鏡と第三鏡のコーティング設備が概念設計審査を合格

TMTの副鏡(M2)と第三鏡(M3)の鏡面にコーティングを行うための設備(以下 M2 M3 COAT)が、概念設計審査を合格しました。M2M3 COATの製作はインドが担当しています。2021年8月3日~4日にかけて行われた概念設計審査会には、国立天文台TMTプロジェクトの中本と林が、それぞれ審査員とTIO側の設計担当者として参加しました。

オンラインで行われた概念設計審査会には、インド、米国本土、ハワイ、オーストラリアから30人近くのエンジニアと科学者が参加しました。(クレジット:TMT国際天文台)

TMTの副鏡と第三鏡は、30メートルの主鏡で集めた天体からの微弱な光を、観測装置まで届ける役割をします。その鏡面を作るため、M2M3 COATでは、反射率の高い銀の薄膜をM2とM3の表面にコーティングします。コーティングを行う真空釜(チャンバー)は内径が4.2mの大きさで、直径3.1mの凸面鏡であるM2と長径3.5m×短径2.5m(楕円)平面鏡のM3の両方に対応します。

チャンバーのイラスト。チャンバーの中には、多数のマグネトロンとターゲット(コーティングの材料)が配置されていて、M2とM3に薄く均一なコーティングを施します。ターゲットには、銀の他、銀と鏡材の付着力を強化する素材および銀の劣化を防ぐ保護のための素材があります。(クレジット:TMT国際天文台/ HHV)

M2M3 COAT概念設計を請け負ったHind High Vacuum(HHV)社が、インド宇宙物理学研究所のヒマラヤ・チャンドラ望遠鏡(口径2m)のために製造したチャンバーの試験の様子。鏡の出し入れのために、チャンバーの下部はレール上を水平移動できるようになっています。チャンバーの下部に鏡を配置した後、チャンバーを密閉して真空引きをし、鏡を回転させながらコーティングが行われます。(クレジット:Hind High Vacuum Company)

鏡面の高い反射率を維持するため、定期的にM2とM3の再コーティングを行うことになっています。M2M3 COATは、望遠鏡のメンテナンスエリアに設置され、古いコーティングの剥離を行う区域と、チャンバーでコーティングを施す区域から構成されます。

概念設計審査会では、M2とM3のコーティングに必要な性能と、望遠鏡の他の設備とのインターフェースが審査された上で、M2M3 COATの設計の大枠が承認されました。審査委員長を務めたジョシュ・チャーチ氏は「概念設計は十分に確立されており、M2M3 COATの設計チームはチャンバーを次の開発段階に進める準備ができています」と語っています。

M2M3 COATの概念設計はコロナ禍の最中である2020年に開始しました。TMTプロジェクトマネージャーのフェンチャン・リウ氏は「M2M3 COATの設計チームが、概念設計の段階で、非常に成熟したデザインを提示したことを喜ばしく思います。これは、TIOの光学部門、TMTインド、HHVからなる設計チームが、すべてオンラインで行われたミーティングでも、緊密な連携をとったおかげです」と語っています。

今後は、チャンバーの重要部分の性能検証モデルを試作し、概念設計の検証や、コーティングの厚さと反射率に関する試験などが行われる予定です。


参考:TMT’s Secondary and Tertiary Mirrors Coating Facility Passes Conceptual Design Review (TMT国際天文台ウェブサイト)