ふれあい天文学で「遠くの地元」学校と交流 (1)ポート・オブ・サクラメント補習授業校

TMTプロジェクトカリフォルニア事務所の林が2021年10月から12月にかけて行った「ふれあい天文学」授業について、3回に分けてご報告します。

今年のテーマは「月」。多少雲があっても、街明かりがまぶしくとも、見上げるといつも仲良しの友だちのようにそこにいます。南カリフォルニアは(大気汚染はともかく)湿度が低く、からりとした青空が広がることが多く、昼でも月がよく見えます。多くの児童、生徒にとって身近な月。これから一層身近になってきます。今の小学生、中学生の世代は月滞在や、さらに遠くの太陽系探検に出かける世代ですねというのが今年の呼びかけです。何しろ来年には、アメリカが主導し、日本も参加しているアルテミス計画の第1号月周回機が打ち上がる予定ですから、月が職場になることはそんなに遠い先の話ではないのです。

今年度最初の交流先は、林が現在住んでいる地元のカリフォルニア州。北部のサクラメント市にあるポート・オブ・サクラメント補習授業校でした。カリフォルニア州の州都サクラメントは、林のいるパサデナからの距離だけで言えば、頭の真上を通過するときの国際宇宙ステーションより遠くになります。カリフォルニア州は日本の本州よりも広いのです。

日本とカリフォルニアのサイズ比べ (Apple Mapsによる)

この日は新月から3日後、夕方に細い月が見える土曜日でした。小学校4年生から中学校2年生までを含む児童生徒のみなさんが、オンラインで集合。ズームの1画面で全体がわかる人数のおかげで、おー、へーのリアクションがある程度わかりました。特にカリフォルニアに縁の深いロケット打ち上げ風景の紹介や、TMTの部品作り作業の様子を示す画像に注目が集まっていました。

交流前に宇宙についての疑問を寄せてもらったところ、月がなくなると地球にどんな影響があるか、逆に月がいくつもあったらどうなるかというものがありました。皆さんはどうなると思いますか?また宇宙の大きさが地球何個分かという質問が寄せられたので、さまざまな天体までの距離を地球の直径を物差しにして測ってみました。表をご覧ください。京という単位はスパコンの名前で耳にしたことがあると思いますが、垓という単位の桁数がわかるでしょうか。

サクラメントからの距離

マウナケアで外来植物の除去活動

12月11日土曜日に、マウナケア中腹の標高 2800mの施設(ハレポハク)周辺で外来の植物を取り除くボランティア活動がハワイ大学ヒロ校の Center for Maunakea Stewardship(CMS、マウナケアに関する管理計画を実施する機関)の呼びかけで行われました。ハレポハクは、マウナケア天文台群のスタッフが高地順応や宿泊・食事のために毎日利用する場所です。この周辺に生息する外来種を取り除くことで、マウナケア古来の自然環境を守ることにも繋がります。

国立天文台からはTMTプロジェクト長の臼田、ハワイ観測所の Julian Lozi と臼田-佐藤功美子が参加し、CMSの Greg Chun 所長、Nahua Guilloz 氏、ハワイ大学天文学研究所の Doug Simons 所長らと共に活動しました。

作業終了後にはハレポハクの図書室で、CMSの Wallace Ishibashi 氏によるマウナケアに関する最近の話題について説明と質疑応答がありました。

除草を行う臼田(左)と臼田-佐藤(右)。外来種かどうかは、CMSの自然資源担当者に教えてもらいます。

作業前(左)と作業後(右)の様子。黄色の花や真っ直ぐ伸びている植物(左側写真)は外来種。右側写真で残っている植物は在来種。CMSの担当者によると、約640キログラムの外来植物がこの日の作業で除去されたとのことです。

今冬は「Kona Low」と呼ばれる低気圧がハワイ諸島を通過して、数日間にわたって大雨と強風が続き、マウナケア山頂域では雪が積もりました。11日の日中は打って変わって穏やかな天候となり、草刈り日和でした。

府中市立中央図書館で最新天文学と望遠鏡を語る

11月14日、府中市立中央図書館にてTMTプロジェクトの青木が講演させていただきました。図書館が開催している講座で、TMTの講師派遣プログラムを通じて講演の機会をいただきました。

講演では、宇宙を調べるには天体からやってくる情報を調べるのが基本で、最近では光(電磁波)に加えてニュートリノや重力波が新たな発見をもたらしていることを説明し、重力波と光の観測をあわせることで元になった爆発について理解し、そこで作り出される物質を解き明かすことができることを紹介しました。また、急速に進展している太陽系外惑星の研究について、特に惑星の表面や大気を調べる研究に注目が集まっており、今後の新しい望遠鏡や装置の目標となっていることを解説しました。

そして最後に、これらの研究を前に進めるために地上の大型望遠鏡は必須であり、そのためにTMTの建設に取り組んでいることを紹介しました。

定員25人の事前申し込み企画であったためか、参加者はとても意欲的で、2時間の講座の間に多数の質問をいただきました。久しぶりに対面での講演で、やはりオンラインよりも参加者とのやりとりが深まるかな、と感じました。企画をされた府中市立中央図書館の方々が、感染対策も含めてとても丁寧に講座を準備されていたのも印象的でした。今後、こういう企画が少しずつ戻ってくることを期待します。

(写真提供:府中市立中央図書館)

こころね地球学校で「ふれあい天文学」

国立天文台の職員が学校を訪問して授業を行う「ふれあい天文学」。2020年度からはオンラインでの授業も増えていますが、11月4日に、TMTプロジェクトの岩田が千葉市にあるフリースクール「こころね地球学校」を訪問して授業を行いました。小学3年生から中学1年生の6人の子どもたちと、フリースクールを運営する大人の皆さんが参加してくださいました。

授業では、自己紹介のあと、夕方に見える明るい惑星の話から、国立天文台が開発しているソフトウェア Mitaka を使った、太陽系、銀河系、銀河の地図といった宇宙のスケールの話、太陽以外の星の周りをまわる惑星の話、ブラックホールの話など色々なトピックをお話しながら、岩田がなぜ天文学がおもしろいと思うかを語りかけました。宇宙はとても広く、直接星々をたずねることはむずかしいけれど、大きな鏡をもった望遠鏡を使うことで、わたしたちは星や銀河の様子をくわしく調べることができる。しかも、遠くの天体を調べることは昔の宇宙を調べることでもあるので、化石を使って昔の生物のすがたを知ることができるように、宇宙がどのような歴史をたどってきたのかを知ることができる。すばる望遠鏡やそれを上回る超大型望遠鏡 TMTによって、わたしたちの生きる宇宙のすがたとその歴史を調べることの面白さを伝えたいと思いました。

子どもたち手づくりの地球儀を使って惑星の見えかたを説明している様子 (写真提供:こころね地球学校)

子どもたちはリラックスして話を聞いてくれて、「宇宙人はいるの?」、「映画の『インターステラー』でブラックホールの近くで何がおこったのか?」など、色々な質問もしてくれて、楽しく授業をすることができました。これをきっかけに宇宙への興味がさらに深まったならうれしく思います。