東京都立日比谷高校とオンライン交流

世界中で学校に行くことが難しい状態が続く中、オンラインでの交流が広がってきています。このほど、カリフォルニアで勤務中の林が、東京の日比谷高校の生徒さんたちと「火星(地球以外の天体)に生き物がいるだろうか」をテーマにお話しをすることができました。日比谷高校は、海外研修の⼀環としてハワイ観測所やすばる望遠鏡を訪問したことがあり、ハワイ観測所との交流が続いてきていたのです。

2020年7月、日本、中国、米国から火星に向けて探査機が打ち上げられました。地球と火星の公転周期により、26ヶ月ごとにめぐってくる打ち上げの好機をとらえてのものですが、特に今回は火星での生命の痕跡や生命に必要な環境の詳細な調査が目的になっています。生徒さんたちとは、生物が存在できる環境がどんなものか、調べる方法として何が良いかを考えてみました。またそうした疑問を追求できる職場にはどんなところがあるか、高校生にとっては進路選択を考える上でぜひいろいろな可能性を探ってほしいと伝えました。

図はプレゼン資料の一つ。地球の景色2枚と火星の景色2枚。うち1枚は「東京都」です。どれ(どこ)だかわかりますか? 講演は、8月6日(日本側)8月5日(米国側)に行なわれました。70を超える接続があり、1、2年生の参加が多かったのですが、3年生もいました。

質問の中には、星空撮影をしたらスターリンク衛星が多数写って困ったので、すばる望遠鏡やTMTでも影響を受けるのではというものがありました。もちろん影響はありますが、TMTの場合は狭い範囲を詳しく調べることが得意なので、たいへんな困難ではありません。またスターリンク衛星側でも、黒い塗料を塗って太陽からの光を反射しにくくするなど、目立ちにくい工夫を重ねている。情報が届きにくい地域や災害時には、インターネットの安定したサービスの提供が大事です。技術的な工夫で状況を改善できる可能性に気づいてくれました。

海外での生活についても、困ったことや意外に感じたことなどについて質問がありました。日本の人はマスク装着に慣れているし、挨拶が握手やハグではなく、距離を保ったお辞儀なので、そうしたことがそのまま現在の状況で通用しますね。お互いが気をつけることで、国際交流が徐々に再開していくことを願っています。

大学の卒業生の会でオンライン講演

新型コロナウィルス感染症の影響で、これまでのようなイベント開催が難しい中、オンライン会議システムを利用した取り組みが様々な場面で行なわれるようになっています。オンラインの利点は、会場まで足を運ばずに参加できること。今回は、TMTプロジェクトの林が勤務地の米国カリフォルニア州から講演を行ないましたので、ご報告いたします。

6月19日の夜(日本では20日の午後)、オンライン会議システムを利用して「人類はやはり宇宙を目指す」というお話をさせていただきました。これは東京大学の女性卒業生の会年次総会の一環でした。日本以外からも接続があり、70人を超える方々が参加されたとのことです。

すばる望遠鏡は惑星系から遠方の銀河まで、様々な天体の様子を明らかにしてきました。夜空の宝石箱を見いだすような営みです。あたかも貴重な宝石を1つ1つ取り出すように、すばる望遠鏡からの成果をお話する中で、たくさんの質問や感想をいただきました。系外惑星の紹介に対しては、人類が住める環境が他にもあるのかという問いがありました。太陽のような星はエネルギーを出せなくなると静かに冷えていくという星の一生のお話については、それでは地球はどうなるのかとの問いが。「一生」と関連して、巨大望遠鏡の寿命についての質問もでました。

講演会に参加された方がスクリーンショットを送ってくださいました。お話しの間にもチャット機能を利用した質問が次々とでてきます。

すばる望遠鏡の近くには、日本・韓国・台湾・中国で共同運用している観測施設もあることに驚かれた方もいたようです。何しろ天文学は地球を超えた対象を扱っていますから。

このすばる望遠鏡で培われた技術や協力関係が生かされ、地球人の半分超の人口を擁する国々が協力して作る次世代超大型望遠鏡は、さらにいっそうわくわくするような知見を私たちにもたらすでしょう。

オンライン講演会のありがたいところは、特に私のように日本ではないところで仕事をしていても、日本、また世界の各地にいる方々と同時にお話ができることです。1カ所に集まる通常の会議形式では、遠方からの参加や、現地で託児サービスがあるとはいえ、子どもさんを抱えている方の参加はなかなか難しい。オンラインでの参加によってより広い範囲の方に、空を見上げるきっかけをつかんでいただけたのではないでしょうか。

日本地球惑星科学連合 2020年大会

地球惑星科学のあらゆる分野の研究者が集まる、年に一度の大規模な国際学術大会「日本地球惑星科学連合大会」で、今年もTMTの展示を行ないました。例年と異なるのは、新型コロナウィルス感染症の影響により、オンラインでの開催となったことです。通常のブースでは、TMTの模型を指し示しながら来場者と対面でお話ができるところを、今年はオンラインポスターで代替することになりました。訪問者との対話用にはチャット機能がついているとのこと。提供された枠組みの中で、できるだけ目にとまりやすいものになるようにと考えながらポスターを準備しました。

TMTのオンラインポスターのスクリーンショット。2020年大会は、5月24日~28日に幕張メッセで開催の予定でしたが、新型コロナウィルス感染症の影響により、7月12日~19日のオンラインでの開催となりました。

TMTのオンラインポスターは、大会期間後も閲覧可能になっていますので、ぜひご訪問ください。TMTが目指すサイエンスの紹介に加えて、計画の進捗や、教育・普及活動などの取り組みもご紹介しています。パンフレットのPDF版もダウンロードできるほか、訪問のお土産として「バーチャル背景」もありますので、ご利用いただければうれしいです。(チャット機能はなくなっています。)

今回のオンライン大会では、サーバーが落ちてポスターにアクセスできなくなる、ポスターデータが消えるなどのトラブルが起こり、順調とは言い難いものでした。それでも、コロナウィルス感染症拡大という異常事態から現地開催を中止したあと、貴重な学術交流の場を提供すべく、短期間でオンライン開催を企画・準備した事務局の努力には頭が下がる思いです。来年の大会が現地開催でもオンラインでも、今回の教訓を生かしてよりよい展示ができるようにしたいと思いました。

サイエンスブック「すばる望遠鏡とTMTで結ぶ新たな宇宙像」が刊行されました

すばる望遠鏡とTMTを活かすことにより期待される科学的成果に焦点をあてた検討が2019年度に全国の研究者によって行われ、その成果がサイエンスブックとしてとりまとめられました。

世界最大級の口径をもつ光赤外線望遠鏡として活躍し続けるすばる望遠鏡は、主焦点に装置を搭載できる特長を活かした広視野サーベイ観測やマウナケアの観測条件を活かした高感度観測で今後も力を発揮すると期待されます。一方、TMTはこれまでの望遠鏡を凌駕する解像度と感度での観測を可能にします。これを最大限に活かすには、すぐれた広視野観測機能などを活かしたすばる望遠鏡による天体の探査を、TMTの高感度観測につなげていくという研究の展開が重要になります。

サイエンスブックでは、両望遠鏡を活かした科学研究を、「惑星系の理解と生命探査」、「銀河進化のゆりかごから墓場まで」、「宇宙のダーク成分と物質の起源」という3つの節に分けて検討しています。また、両望遠鏡の観測装置や運用の計画についても論じています。

サイエンスブックの内容や検討経緯については、国立天文台ニュース5月号で紹介されています。

また、サイエンスブックはTMTプロジェクトの研究者向けウェブサイトで公表されています。

サイエンスブックには80人の研究者に執筆いただき、編集にも国立天文台外の方に多数ご協力いただきました。この場を借りて感謝申し上げます。