主鏡分割鏡の形状仕上げ加工の試験が行われました

TMTの主鏡を構成する分割鏡は、各国で研磨などを行なった後、米国本土に集められ、表面(鏡面)形状の最終的な仕上げが行なわれます。この仕上げを行なうイオンビーム加工(IBF;Ion Beam Figuring)を用いた最初の試験が2020年2月に行なわれました。

IBFは、高電圧で加速したイオンをターゲットに照射して原子レベルで材料物質を除去する技術です。TMT主鏡を構成する分割鏡は、表面研磨が施された後、六角形の外形になるように端を切断(研削)され、支持機構に搭載されます。この外形加工と支持機構搭載によって、表面の形状がわずかに変化してしまうことも含め、表面のごくわずかな形状誤差を、IBFによって修正するのです。

試験に用いられた分割鏡試作品は、日本で製作された鏡材に対して、米国で研磨と外形加工を施したものです(※1)。この分割鏡試作品を、ドイツのケムニッツにあるスキアシテムズ社へ輸送して、IBFを用いた試験が行なわれました。約50時間にわたる試験では、イオンビームによる昇温の熱応答などのデータが記録されました。今後、試作品は米国へ送り戻され、表面形状の詳細な測定が行なわれる予定です。


分割鏡試作品を用いたIBF試験のタイムラプス動画 ©TMT国際天文台

 

今回のIBF試験に立ち会った、TMT国際天文台 主鏡部門のベン・ギャラガー技術長は、「実物大の試作品に対してIBFの試験を行なうことができてよかったです。スキアシステムズ社のチームとは効率的に作業を進めることができ、試験項目も熟慮されたものでした」と話しています。

TMTの口径30メートルの主鏡を形作るため、交換用も含めて最終的には574枚の分割鏡が、米国においてIBF加工される予定です。

 

参考1:Testing of TMT’s Primary Mirror Segment in Progress (TIOウェブサイト)
参考2:主鏡分割鏡の製作工程(下図;  ©キヤノン株式会社/NAOJ)


※1:主鏡分割鏡は、2015年に日本が先駆けて研磨加工の量産を開始しましたが、2020年には、米国による研磨加工が、カリフォルニア州(コヒレント社)で開始されています。外形加工の量産はまだ始まっていませんが、今回の試作品の外形加工は、 ニューヨーク州(ハリス社)で行なわれました。

2019年度の講演会まとめ

TMTプロジェクトでは、次世代超大型望遠鏡が挑む宇宙の謎について、より多くの方に知っていただくため、講演会や出前授業に講師を派遣しています。

2019年度は、11都府県とハワイ島で約50件の講演を行ないました。小学校、中学校、科学館、プラネタリウム、星空観望会など、様々な場所と機会をいただいて、幅広い年代の方々にお話をしました。宇宙について新しい知識を得られたという子ども達の喜びや、聴衆の熱心な質問にふれることにより、プロジェクトのメンバーも、さらなる謎を解き明かすためTMTを完成したいという気持ちを新たにすることができました。講演に参加されたすべての方々に感謝するとともに、今年度も、より多くの方々へ宇宙へ興味をいだく機会をお届けしたいと思います。

講演を依頼される方は、TMTプロジェクトへお気軽にお問い合わせください。ふれあい天文学を通じた出前授業も行っております。

実施した講演の一部はTMTブログでご報告しておりますので、ぜひご覧ください。

ハワイ島ヒロでの集中出前授業 「アロハ! いつもお世話になっております」

ハワイ島のヒロには、マウナケアで望遠鏡を運用している天文台の山麓施設が多数あります。毎年3月、そこの職員たちが、地元の学校で集中出前授業を繰り広げます。16回目となった今年は、新型コロナウイルスにより、直前になって参加を取りやめざるを得ないケースがありましたが、それでも小中高校のたくさんのクラスに、天文や望遠鏡の話が届きました。職員たちは、地元出身であるかどうかにかかわらず、もうすっかり地域に溶け込み、近所のおばさん、おじさん的な感じで学校訪問ができるようになってきています。TMTプロジェクトの林も、3月2日から5日にかけて、3つの中学校の8つのクラスを訪問しました。

ワイアケア中学校、カラニアナオレ校、ヒロ中学校の3校を訪問しました

ハワイ島は、島全体が火山活動から出たもので構成されています。すばる望遠鏡のあるマウナケアでは、赤みがかった火山灰や火山礫が独特の風景を作ります。教室の窓から見えるグランドも、芝や赤土の下は火山礫、あるいは溶岩。この溶岩に含まれる主な成分は何だろう、そしてそれはどこから来たのか、もともとどこで作られたものだろうか?

一方、現在さかんに動き回っているローバーたちのおかげで、お隣の惑星、火星の詳細な画像が得られるようになり、中にはマウナケアやマウナロア、キラウエアといったハワイ島の山々とよく似た景色が見られます。2つの写真を比べてみよう。どこが似ている、どうして似ているのだろう?

(左)まるで火星のよう、でもハワイ島です(すばる望遠鏡の近く);(右)ローバー 「キュリオシティ」が撮影した火星のシャープ山

好奇心いっぱいの中学生、どんどん質問が出る。 火星の写真を見て「あれはフィッシャー(裂け目噴火が起きたところ)かも。2年前、(ハワイ島の)知り合いの家の近くにできたものとよく似ているから」

この宇宙には太陽系以外にも惑星系があることがわかってきました。しかもその数はどんどん増えています。「地球に似たところがあるだろうか?」、「きっとあるよ。地球は、この宇宙に仲間がいる、もしかして地球型生命に似た生物もいるかもしれない」。こういうやり取りが、サイエンスフィクションではなく、サイエンスとして中学校の教室で話される時代になっています。

ヒロでは、小学校の最初から、毎年出前授業を聞いてきた子どもたちが増えています。自分も将来は理工系の仕事をしようかなと普通に考えるようになってきたのでは? 「みなさんは、人類が火星に行く世代、そして地球によく似た惑星をどんどん見つける世代、期待してますよ!」と授業を締めくくりました。

ディスカバリーパーク焼津天文科学館で講演

2020年2月1日(土)、静岡県焼津市のディスカバリーパーク焼津天文科学館で、「すばる望遠鏡20周年からTMTへ 超大型望遠鏡で探れ! 宇宙の謎」と題して、TMTプロジェクトの家が天文科学講演を行いました。165名定員予約が満席になりました。すばる望遠鏡に関わるエピソードやTMTの重要性、両望遠鏡のこれからの活躍に対する期待について話しました。また、参加者からTMTの分割鏡などに関する多くの質問を受けて、市民の天文学への関心の高さを感じました。

静岡福祉大学の森先生に講演をリアルタイムで字幕投影する試みもして頂きました。補償光学や銀河など、事前に音声認識ソフトに入れておいたものは正しく変換されましたが、難易度の高い用語については、これからの技術の発展が期待されるそうです。

字幕つきの公開講演風景。クイズに3択で回答していただいているところ。

講演会の後、別室で開いたサイエンスカフェにも30名の方が引き続き参加され、こちらではさまざまな質問を軸に一時間ほど懇談しました。

講演会後のサイエンスカフェでは、頂いたいろんな質問を軸に話が膨らみました。

焼津天文科学館は1997年に開館し、これまでに400万人以上の入館者があったそうで、この日も午後、入り口のロビーは人であふれていました。当日は少し雲がありましたが、屋上からは駿河湾越しに富士山を望むことができました。東京天文台時代の6mミリ波望遠鏡の架台や、野辺山の偏波強度計などを製作した法月惣次郎氏は焼津市出身だそうで、前庭にはパラボラアンテナも展示されていました。

法月惣次郎氏が製作したパラボラアンテナ。名古屋大学や国立天文台で実際に太陽電波観測をしていました。

(写真提供:ディスカバリーパーク焼津天文科学館)