スターアイランド2017(小笠原報告その3)

小笠原村の父島には、国立天文台のVERA小笠原局があります。これは日本国内4箇所に設置した同型の電波望遠鏡で同時に観測を行い、超巨大な電波望遠鏡として機能できるようにしているものです。ここで年1回、地元の方々へのお礼の気持ちを込めて、観測所公開など一連のイベントが行われます。

まず1月19日の夜、海辺の小笠原ビジターセンターで宇宙講演会。 「太陽系外に小笠原父島を探す」 を題材に、学校の先生や自然ガイドの方も含む30人ほどのお客様に林がお話をしました。TMTでは生命の存在が可能であるような惑星、宇宙の一番星や最遠方の天体など、天文学の根本に関わるような大きなテーマでの研究を、格段に進めることができます。そしてこのハイテクの望遠鏡づくりには、日本の技術が大きな貢献をします。地球に似た環境を探そうとしているということで、親しみを感じていただくことができたようです。また大人の方が多かったので、職場や職業についても紹介させていただき、望遠鏡の建設や運用にはいろいろな専門家を必要とする面でもご理解をいただくことができたと思います。

1月20日土曜日、いよいよVERA小笠原観測局の特別公開です。ふだんの運用を担って下さっているレオニド社のお2人と、水沢VLBI観測所や野辺山からの応援スタッフがテント張り、模型などの設置、など万全の備えを済ませて、お客様をお待ちしました。シャトルバスも出ます。朝方、まるで露払いのようにシャワーがありましたが、あとは終日良いお天気に恵まれました。

林はこの日に2回のミニレクチャーを行い、可視光や赤外線による観測でどのようなことが明らかにできるのかを「夜空に光るもの、光らないもの」というタイトルでお客様といっしょに考えていきました。これは、他の2人の講演者が電波観測に関わるお話をすることと相補的なものです。

さっそく質問が。「TMTはどのような条件のところに作るのか?」、「もう建物ができたのか?」。これは完成予想図があまりにもリアルであったようです。「TMTの鏡の研磨精度」や「六角形への加工時に壊さないか?」という質問には、まさにそのことへの配慮から、特別な方法で整形することをお伝えしました。「どうやって輸送するのか?」「なぜレンズじゃなく鏡なのか、他に光を集める画期的な方法が無いのか?」「なぜ天文学を志したのか?」。朝いちばんのミニレクには、前夜の宇宙講演をかぶりつきで聞いていた小学2年生が、また最前列に座って聞いてくれました。

ミニレクの合間に、TMTのポスター前に立ち、隣にあるVERAの成果も合わせてご説明をしました。 何しろオリオン大星雲の奥深くで起きている現象の詳細を明らかにしたのはVERAですから。お客様の中には観光で小笠原を訪れている高校地学の先生もいらっしゃり、ずいぶん突っ込んだ議論をすることができました。

この日は、インフルエンザ流行により学校のイベントがキャンセルになるほどで、外出も控えなければならないという事情があるにもかかわらず、地元人口の10パーセントほどに相当する人数のお客様が来訪されたとのことです。特に親子連れが多い、滞在時間が長いということで、しっかりお話ができました。地元に根付いた活動として親しまれていることを強く実感しました。

1月20日夜、天文倶楽部による星空観望会に押しかけ。美しい砂浜から南の星空を堪能できます。VERA特別公開で八面六臂の活躍をしていたレオニドの方が続けて星空案内。関東平野ではなかなかお目にかかれないカノープスを、思いっきり見ることができました。

1月21日早朝の番外編です。スターアイランドに参加したスタッフや学校の先生たちと、南の空が良く見えるところで夏の星座を楽しみました。高く上がるサソリ座、さらにケンタウルス座も見えました。ケンタウルス座の一番明るい星の近くにあり、太陽系から最も近い恒星(プロキシマ・ケンタウリ)には惑星があることが知られています。将来、人類がそこに行ってみることができるようになるでしょうか。

父島でふれあい天文学(小笠原報告その2)

湿度が高く、温かい母島では樹木がよく生い茂り、ついこの間まで住んでいたハワイ島とよく似ている感じがしました。再び「ゆり丸」に乗って父島に戻ると、わずかの距離なのにこちらは降水量が少なく、高い樹木が少ない、険しい山肌が露出しているところが多くある、など風景が異なりました。

父島での学校巡りは、まず1月17日午後に小笠原高校の1年生を訪問。 事前に調べたり考えたりしてきてもらいたいこととして、「生命の誕生と存続にとって肝心なものは何か?」 。これに対して、地球型生命をとりあえず考えるなら、岩石惑星、水が液体でいられる温度、空気、など出てきました。元素として大事なのは水素、酸素、炭素、窒素。食べ物に含まれるタンパク質やデンプンなども、元素という点では同じようなものですね。質問では「TMTがいつできるか」「天体にある水に関して」などが出てきました。進路について考える年齢ということもあり、天文に関わる職業の紹介や、大きな望遠鏡の職場に実はいろいろな専門家が関わっていることをお伝えしました。

1月18日は小笠原中学校の3年生に理科室でお話しました。とても元気の良いクラスです。質問では、「ブラックホールって本当にある?」「太陽はどうやって燃えている?」。星のエネルギー源は、今はまだ生活と結びついていませんが、そのうち。また太陽からの熱や光は、太陽光発電に使われていますね。

1月19日、中学校の隣の小笠原小学校に4年生の教室をお訪ねしました。ずっと4年生を担任している先生はご自身で天文に強い関心をお持ちということもあり、4年生のカリキュラムにある星空のことを熱心に教えて下さっています。他の学年に比べ格段に人数の多いこのクラスは、毎月の天体観測にも通っている星好きさんが多く、質問がどんどん出てくるとてもにぎやかな授業になりました。星や惑星の材料がガス(気体)とチリ(固体)であることはもちろん、星の色の違いも知っているし、サソリ座など代表的な星座は得意とするところ。流れ星もよく見ていて、それが隕石であることも知っている。最近話題になった恒星間物体はおがさわら丸ぐらいか、それより大きいのだから、そんなものが地球に落ちてきたら困るなあ。では宇宙は何型?星や銀河は温度や形で分類できる。この宇宙全体はどう分類するのか。1つしか知らないと分類のしようも無いのでは?どこのクラスでも授業の最後に、ビーズキットを使って目に見えない光について考える実験をしました。不思議なことにその時間まで曇っていた日でも、実験をしようとしたら日差しが戻ってきて、まるで皆さんの実験を助けてくれているかのようでした。蓄光ビーズについては、夜に実験を続けてみようということで、それぞれにキットを持ち帰ってもらいました。

さて小笠原村でこんなに宇宙好きの児童生徒が多いのはなぜでしょう。父島には国立天文台の観測施設があります。母島でも「父島との学校交流の際に、星の勉強もしました」という声が寄せられています。そもそも夜空の星がきれいという小笠原の恵まれた事情もありますが、レオニドという会社が天文に関する活動を長らく続けています。小学生向けのプログラムから始まり、現在ではそこを卒業した生徒さん達向けのプログラムもあるそう。そうした「先輩」たちは、地元のイベントで力になってくれるほどに。また天文倶楽部もあります。ビジターセンター隣の広場が、街中で便利が良く、木立が街灯を遮ってくれる格好の観望会会場でした(第3回へ続く)。

母島でふれあい天文学(小笠原報告その1)

国立天文台のふれあい天文学と、VERA小笠原局の特別公開スターアイランド2017のお手伝いのため、TMT推進室の林が1月に東京都小笠原村に伺いました。3回に分けてその様子をご紹介します。第1回は最初に訪問した母島でのお話、第2回が次に訪問した父島での学校の様子、そして第3回がスターアイランドのご報告になります。

星はすばる…として、昔から日本の人々が親しんできた星団。これを地元ではどう呼んでいるでしょう。またこうした星の集まりにも、太陽系のように惑星を持つものがあるでしょうか。自分たちの住んでいる環境と似た所が、この宇宙のどこかにあるでしょうか。今回の出前授業でも、さまざまなお話の材料とともに、光についての実験用紫外線ビーズや蓄光ビーズを詰めたキットを持参しました。

2年前にTMT推進室の原川が訪問したときに比べ、新造された「おがさわら丸」のおかげで、竹芝桟橋から父島まで安定した24時間の航海に短縮されていました。父島の二見港に着いて、「ゆり丸」(※)に乗り換え、美しい青海原を見ながら母島へ。

母島では、中学校と小学校をお訪ねすることになっていて、港に担当の先生方と校長先生のお出迎えをいただきました。まずは学校の下見と、授業の内容について最終的な打ち合わせ。

1月15日の午後、母島中学校の全校生徒の皆さんに系外惑星や最近話題になった恒星間物体のお話をしました。 「今までで一番すごいと思ったものは何か?」「星空がきれいなところはどこか?」「今までに変な生き物を見たことがあるか?」といった質問が出ました。「星空がきれいに見えるためにはどういう条件を満たす必要があるだろうか?」、皆さんの意見をまとめていくと、つまり母島がいいところなんだね、と納得。校長先生の2学期終業時の講話で宇宙に見えないものについてのお話しがあったことを思い出してもらい、「見えるもの」「見えないもの」についても考えてみました。

翌日1月16日は母島小学校3-6年生と、星座について考えてみました。「夏の大三角は何度も見たよ。星座の名前も覚えているし。」、「じゃ冬の大三角は?」「冬の有名な星座の中には星が生まれるところがあるぞ」「色が違うことにも気づいているかな?」、「よーし、今夜の星空見てみよう」。質問では、「どうして天体には星のように丸いものが多いのか?」「この宇宙にはいくつ銀河があるか?」。さらに「どうして天文学ではまだ謎が多いのか?」、これにはなかなか困りました。いろいろなことがわかるようになってきても、まだ「その先はどうなっているの?」と知りたがりなのが人間なのです。


※ 普段は「ははじま丸」で母島へ向かいますが、このときは「ははじま丸」がドック入りしていたため、「ゆり丸」が代船でした。

発明・発見教室とふれあい天文学のコラボ

2017年11月18日(土曜日)、TMT推進室の林左絵子が東京都江東区の東川(とうせん)小学校をお訪ねしました。土曜日なのに? そうなんです、これはウィークエンドスクール、1年生から6年生まで、さらに他の学校からも含めおよそ20人の児童の皆さんが参加してくれました。知識流動システム研究所(KMS)が年2回行なっている発明・発見教室とのコラボレーションで、KMSの天元志保さんと長壁健さんと一緒に、2時間にわたって光の性質についていろいろ試してみました。

最初のアイスブレイクでは、外遊びとそこから気づく太陽の働きについて。林から「すばる望遠鏡」があるアメリカ・ハワイでの子ども達の遊び方や自然とのふれあいについて話した後、天元さんが読んでくださった宇宙探検のオリジナル絵本により、気分は宇宙へ。

そしてメインの活動は、蓄光や紫外線により発光するビーズを使って、可視光と目には見えない光とがあることを調べてみるというもの。 部屋を暗くしても光っているものや、ブラックライト(紫外線を多く出す懐中電灯)で照らすと光るもの。ビーズだけでなく、他にも光る物がありました。写真からわかるでしょうか(※)? 長壁さんの巧妙な進行により、皆さん実験にのめりこんでいます。

続いて、すばる望遠鏡で撮影された天体の画像を紹介。大望遠鏡のあるところは、夜空が暗くて星が良く見えることをお話しました。東川小学校のあるところは街明かりが多く、星がよく見えません。このため、天の川が星の集まりであるということは知っていても、実感として納得していないようでした。

そしてTMTの紹介。すばる望遠鏡に続いて、この建設に日本の物作りの技術が生きていること、TMTが児童の皆さんの世代で活用される望遠鏡であることを知ってもらう良い機会となりました。もしかして東川小学校の近くのどこかの町工場で、部品が作られているかもしれません。

最後に、児童の皆さんがこの日に知ったことを家族宛の絵手紙に書いてくれました。

 


(※) ビーズをつなぐのに使ったタコ糸、白いシャツの袖など。製造工程で蛍光物質が入っていたり、蛍光剤の入った洗剤で洗うと白さが際立つ。