日本地球惑星科学連合 2022年大会

年に一度、地球惑星科学のあらゆる分野の研究者が集まる「日本地球惑星科学連合大会」。2020年、2021年の大会は、コロナ禍でオンラインでの開催になったのですが、今年はオンラインと現地会場でのハイブリッド方式で開催されました。3年ぶりの幕張メッセでの展示ということで、TMTプロジェクトも張り切って出展しました。

コロナ禍の流動的な状況で、ブース数も限られていたということもあり、今年はTMTとアルマ望遠鏡の合同ブースを出しました。

一つのブースをアルマ望遠鏡とTMTで分け合っての展示では、それぞれのプロジェクトの紹介に加え、アルマ望遠鏡(電波)とTMT(光学赤外線)での観測の違いや共通点、同じ天体を異なる波長で見ると何が違うのかということなども話題になりました。

現地会場での一般展示は2022年5月22日~5月26日に行われました。

コロナ前に比べると、ブース数など少なく、こじんまりした雰囲気でしたが、訪問者の熱意は以前と変わらず、こちらも解説に力が入りました。対面での交流のよさをあらためて実感しました。来年はさらに規模を拡大した現地展示が行われることを願っています。

宇宙・天文光学EXPO 2022

4月20(水)-4/22(金) にパシフィコ横浜でOPIE 宇宙・天文光学EXPOが開催されました。国立天文台のブースでは、TMTに加えて、岡山の188cm望遠鏡とせいめい望遠鏡の展示をしました。
来場者はコロナ前に比べると少ないですが、昨年に比べると賑やかな印象でした。ブースは込むことはないものの、ほぼ絶えず人が訪れ、「次世代のTMTと国内最大のせいめいを紹介しています」と声をかけると、質問をしてくださる方も多くいらっしゃいました。

3日目の4月22日には、恒例の特別講演会が行われました。今年からはタイトルを「国立天文台を活用する研究者が語る天文コース」と少し変えて、天文台外の研究者にもお話していただくようにしました。TMTに関連した話題としては、東京大学の成田憲保教授が「TMTが解明する太陽系外惑星の謎」というテーマでお話ししました。成田教授は、TMTを用いた太陽系外惑星観測に関するサブ委員会の委員長を務めるなど、TMTの科学目標の検討に貢献しています。
今回の講演は聴講者の皆さんの視線や表情を見られる久々の対面形式でした。 聴講者の皆さんから最新の系外惑星研究やTMTへの高い関心を窺うことができました」と、講演後の感想を成田教授からいただきました。

昨年の期待が外れて、新型コロナ感染症は収束の気配がいまだに見えません。でも、こうして無事にイベントが行えて、多くの方々と交流できたことを幸せに思います。5月22日からは日本地球惑星科学連合大会(幕張メッセ)に出展しますので、こちらのブースにも立ち寄っていただければありがたいです。

ハワイ島で出前授業

ハワイ島で毎年行なわれる出前授業「Journey through the Universe」。前回ご報告した林に加え、臼田、能丸、嘉数がハワイから参加しました。今回は、臼田と能丸からの報告を掲載します。

臼田は「Robotics Devices for Subaru Telescope & TMT and on Mars」という題目で、2つの学校の9-10年生にオンラインでの授業をおこないました。

ハワイは小中高校でのロボットのクラブ活動が盛んです。ハワイ観測所のエンジニアや研究者も活動の支援や大会での審査を担当していますし、TMT国際天文台がスポンサーの大会もあります。臼田の授業では、すばる望遠鏡で使われている副鏡やトップユニット、カセグレン観測装置を交換するロボットの紹介と、なぜ交換する必要があるのかについて、観測装置の視野の広さや解像度の話を交えながら説明しました。また、TMTの主鏡セグメントの交換に用いられるロボットについても、動画と共に解説しました。さらに、火星の風景を見せながら、これを撮影しているロボットについても簡単に解説しました。

質問では、ロボットに関することではなく、TMTの主鏡の値段を聞かれました。授業の最後には、生徒へのメッセージとして、ロボット活動も含めて、今頑張っていることを継続し、将来ハワイにおける天文学のために活躍して欲しいことを伝えました。

自宅からオンライン授業を行う臼田

能丸は9年生と10年生を対象に太陽系の大きさについて、自宅からオンライン授業を行いました。

授業の中身は主に太陽系の大きさを実感してもらうことでした。地球の直径のおよそ100倍が太陽の直径で、太陽の直径のおよそ100倍が地球と太陽の距離になります。これを実感してもらうために直径6ミリの玉と直径60センチのボールを用意して、それを60メートル離して置くことを考えました。これは自宅の机の上では到底できないので、ヒロの海辺にある芝生公園でこのセッティングをしたものを事前に録画し、それを授業で流すようにしました。

能丸が用意した動画の一場面。直径6ミリの玉と直径60センチのボールを利用して、太陽系の大きさを説明しました。

幼稚園児から高校生までを対象としたこの「Journey through the Universe」は今年で18回目を迎えました。2-3学年をまとめたブロックごとに用意された合計27コマの授業と、7コマの職業紹介がおこなわれましたが、この中で国立天文台(ハワイ観測所とTMTプロジェクト)からは、吉田道利、田中壱、ラッセル・カックリー、プリーシ・クリシュナムーシー、臼田知史、ジュリアン・ロッジ、セバスチャン・ヴィバード、林左絵子、臼田-佐藤功美子、能丸淳一の 10 名が授業を、ジュリアン・ルセールと嘉数悠子の2名がパネリストを、そしてアンドリュー・ニューガーテンが授業の司会を務め、大きな貢献をしています。地元の教育委員会や先生方の期待も高いプログラムで、これからも参加する生徒さんがわくわくするような授業を提供したいと思います。

WFOSが概念設計審査会に合格

WFOS(Wide Field Optical Spectrometer;広視野可視撮像分光器)は、TMTの運用開始時期から使用される第一期観測装置の一つで、可視光での撮像と分光の機能を持っています。WFOSはアメリカ、日本、中国、インドの国際共同開発で進められています。国立天文台は2010年にWFOS開発に加わって以来、直径40cm程度の非常に大きなカメラレンズシステムの検討やイメージスライサー(注1)と呼ばれる特殊な光学素子を用いた観測モードの検討などを行ってきました。2019年からは多天体分光に用いるスリットマスクを交換する機構やスリットマスク製造設備(注2)、将来計画として考えられている面分光ユニットの検討を行いました。

WFOSの構造。現在の各国の役割分担が示されています。左下の人の大きさと比べると、WFOSが非常に巨大な装置であることが分かります。(画像提供:カリフォルニア工科大学)

国立天文台先端技術センターで設計されたスリットマスク交換機構。紫色で示したマスク収納庫(左パネル)に12枚のスリットマスクが収納されています。交換の際には収納庫から1枚取り出され、青色で示した搬送装置(中央上パネル)によって緑色で示したマスク設置部(右上パネル)に設置されます。(クレジット:国立天文台)

2022年2月9、10日(日本時間)にWFOSの概念設計審査会が行われ、国立天文台からは、上記の開発や検討事項について報告しました。審査会は新型コロナウイルス感染症のためにオンライン開催となり、参加者が世界各地に散らばっているので、日本では深夜(午前3時)からの開催となってしまいました。審査の結果、大きな問題は見つからずに合格することができました。

思い起こせば、国立天文台がWFOSに参加した2010年には既に概念設計段階に入っていました。装置コンセプトの見直しや中心開発メンバーの交代など色々ありましたが、12年目にしてようやく概念設計段階を終えることができました。WFOSは4月から次の基礎設計段階へ進みます。

 


(注1) イメージスライサーは、分光の時に天体の光を失うことなく、かつ、高い波長分解能を得るための特殊な光学素子です。イメージスライサーの概念については、2018年のTMTブログをご覧ください。

(注2) スリットマスクは、多天体分光で使用する薄い金属板です。目的の天体の光だけが装置に入るように、スリットマスクには複数の天体の位置に合わせた細長い穴(スリット)が開けられています。