宇宙・天文光学EXPO 2021

昨年度はコロナ禍で開催が中止となった宇宙・天文光学EXPOですが、今年は会期をずらして、6月30日から7月2日にパシフィコ横浜で開催されました。国立天文台のブースでは、TMT、JASMINE(ジャスミン、赤外線位置天文観測衛星)、産業連携室の展示を行いました。
展示ブースでは、大型の展示物は置かず、説明員も例年より減らして、密集を避けるようにしました。あわせて、ビニールカーテンや、消毒液の設置などの感染防止対策を行っています。主催者の開催報告によると、来場者は例年の半分くらいとのことでした。人数は少ないものの、訪れる人が途切れることはそれほどなく、皆さん、ゆったりと展示をご覧になっていました。

3日目の7月2日には、恒例の特別講演会(国立天文台の研究者が語る天文コース)が行われました。TMTプロジェクトからは、岩田生 副プロジェクト長が「すばる望遠鏡と30m光学赤外線望遠鏡TMTが結ぶ新たな宇宙像」というタイトルでお話ししました。この講演では、すばる望遠鏡による遠方宇宙の探査や、太陽系外惑星研究の成果を紹介し、それらの成果が、3倍以上の口径を持つTMTでさらに飛躍する展望について説明しました。講演後には、展示ブースでも説明を行いましたが、講演を聞いて下さった方も含め、訪れた方からは熱心な質問があり、先端技術を駆使した超大型望遠鏡の開発に対する強い関心を感じることができました。

来年の宇宙・天文光学EXPOは、2022年4月20日~22日にパシフィコ横浜で開催されます。その頃には新型コロナウイルス感染症も収束して、例年の規模で展示を行えることを願っています。

分割鏡の保守と運用のための装置が基本設計審査を合格

TMTの主鏡は、高い反射率を維持するために、492枚の分割鏡を、再メッキした分割鏡と順次交換していきます。分割鏡は主鏡の形状に合わせて82種類の形状に研磨されているため、82種類×6セット(492枚)の分割鏡に加えて、82種類の分割鏡を1セット待機させます。この待機している分割鏡を、昼間のうちに少しずつ、反射率の落ちてきた分割鏡と交換することによって、貴重な夜の観測時間を最大限に利用することが可能になります。日常的におこなわれる分割鏡の交換と再メッキの作業を安全に効率的に行うための装置・設備が、2021年4月に行われた基本設計審査を合格しました(※1)。

今回の主な審査対象は、分割鏡をドームからメンテナンスエリアへ運搬するための台車、吊り上げ装置と治具、交換用の分割鏡をドーム内に保管するための収納棚でした。

以下の三つのアニメーションは、(1)分割鏡の交換、(2)ドーム―メンテナンスエリア間の移動、(3)収納棚での保管という、分割鏡交換と再メッキ作業の流れを示しています。


動画1:分割鏡交換機構のブリッジが主鏡の近くに移動し、分割鏡交換ロボットがブリッジをつたって、主鏡セルから持ち上げられた分割鏡を運びます。フレーム(今回の審査対象、動画では青色で表されている)に固定され、ドームの1階に移動した分割鏡は、運搬用の台車(今回の審査対象)に乗せられます。(動画には描かれていませんが、分割鏡とフレームを1階まで運ぶ吊治具も今回の審査対象です。)その後、待機していた交換用の分割鏡が主鏡のところへ運ばれます。(クレジット:TMT国際天文台)

動画2:台車に乗せられた分割鏡が、洗浄(メッキの剥離)と再メッキのためのメンテナンスエリアへと運ばれていきます。再メッキが完了すると、ドームの収納棚の場所まで台車で運ばれます。(クレジット:TMT国際天文台)

動画3:再メッキされた交換用の分割鏡が、吊り上げ装置(今回の審査対象)で持ち上げられ、収納棚(今回の審査対象)に保管されます。主鏡を構成する492枚の分割鏡は、82種類の形状に研磨されているため、交換用の分割鏡は82枚必要になります。収納棚は、82枚の交換用分割鏡を安全に保管します。(クレジット:TMT国際天文台)

分割鏡の保守に使用する台車の設計。分割鏡を安全に固定して運搬するほか、分割鏡を上下反転させる機構があり、鏡面の古いメッキを剥がし、よく洗う作業をするさいにも使用されます。(クレジット:TMT国際天文台)

分割鏡運搬用の台車(右)と吊り上げ装置(左)の試作品がTMT国際天文台のラボで試験されている様子が審査会で紹介されました。これらの装置は、分割鏡制御システム試作品の組み立て作業でも実際に使用されています(動画)。(クレジット:TMT国際天文台)

審査会は、2021年4月21日にオンラインで行われました。国立天文台からは、望遠鏡部門の寺田と主鏡部門の林が参加しました。(クレジット:TMT国際天文台)

 

今後、これらの装置は、詳細設計段階へ移ります。

 


※1:TMTでは、2年ですべての分割鏡(492枚)が再メッキされるよう、2週間ごとに10枚の分割鏡の交換を行うことになっています。

参考:TMT Mirror Segment Handling Equipment Passes Preliminary Design Review (TMT国際天文台ウェブサイト)

2020年度の講演会まとめ

TMTプロジェクトでは、次世代超大型望遠鏡が挑む宇宙の謎について、より多くの方に知っていただくため、講演会や出前授業に講師を派遣しています。

2020年度は、新型コロナウィルス感染症の影響で多くの対面イベントが中止になりましたが、約43件の講演を行う事ができました。このうちの約9割は、オンラインで実施されました。対面でできない講演・授業を、オンラインでどのように充実させるか、様々な試行があった中で、これまでにはなかった新たな広がりも生まれました。日本語補習学校に通う海外の子ども達への出前授業はその一つです(※1)。入院中の子ども達や、通信制を主体とする学校との交流、手話通訳士さんを介した授業も、オンラインのメリットが活かされた例といえるでしょう(※2ー4)。(実施報告例:※1※2※3※4

講演に参加されたすべての皆様に感謝するとともに、今年度も、より多くの方々へ宇宙へ興味をいだく機会をお届けしたいと思います。

講演を依頼される方は、TMTプロジェクトへお気軽にお問い合わせください(※5)。ふれあい天文学を通じた出前授業も行っております。

実施した講演の一部はTMTブログでご報告しておりますので、ぜひご覧ください。

 


※5:2020年4月より、新型コロナウィルス感染防止策として、TMTプロジェクトでは在宅勤務を増やしております。代表電話がつながらないことがありますので、電子メールでのお問い合わせをお勧めします。

非球面研磨加工を終えた分割鏡の品質審査(4-11枚目)

2月11日の記事で非球面研磨加工を終えた分割鏡(ラウンデル)の最初の一枚の品質審査が無事に完了したことをご報告しました。その後、他のラウンデルについても品質審査が進められています。3月26日(現地時、PDT)には、米国が担当するラウンデルのうち、最初の2枚が品質審査を合格しました。さらに、4月28日(日本時)に、日本が担当するラウンデルのうち、8枚が品質審査を合格しました。

4月28日の品質審査に参加したメンバー。国立天文台からは、主鏡部門の山下、大屋、林、ビジネスマネージャーの藤縄、プロジェクト長の臼田の計5名が参加しました。(画像提供:TMT国際天文台)

4月28日の審査会では、事前に行われた測定・検査に基づいて、ラウンデルがTMTの要求する仕様を満たしているか、チームメンバーが議論しました。その結果、審査対象となった8枚の分割鏡(識別番号:SN024-SN025、SN027-SN031、SN061)のすべてが、TMTの厳しい基準を満たしていることが認められました。

4月の品質審査を合格したラウンデルのうちの一枚(SN027)(写真提供:キヤノン株式会社)

国立天文台の大屋真 特任准教授は「製造を請け負ったキヤノン社にもご協力いただき速やかに合格を得ることができました。これまでに生産されている他のラウンデルについても引き続き審査準備を進めていきたいと思います」と語っています。

2021年4月末時点で、TMTの分割鏡574枚のうち、11枚がラウンデルの品質審査を合格したことになります。

キヤノン宇都宮光学機器工場で、加工機上でのラウンデルの外観をチェックする社員(写真提供:キヤノン株式会社)

 


参考:
Progress made on TMT mirror production (TIOウェブサイト)
First M1 Roundels Produced by Coherent for TMT Successfully Shipped to Storage Facility in California (TIOウェブサイト)